貴方は忘れられない幼なじみ 〜肉食系御曹司の淫靡な溺愛〜

書籍情報

嫌になっても離れないから、覚悟したほうがいいよ。

貴方は忘れられない幼なじみ
〜肉食系御曹司の淫靡な溺愛〜

著者:木下杏
イラスト:天路ゆうつづ
発売日:3月27日
定価:620円+税

普通のOLの藤本莉子には、忘れられない人がいた。
大手生活雑貨メーカーに勤める莉子は部署が異動になった当日、離れ離れになった幼なじみ・湊に十年ぶりに再会する。
突然の再会に複雑な想いを抱える莉子だったが、彼は情熱的な視線を隠さない。
会えなかった時間を埋めるように、二人は再び惹かれ合って――!?
「好きだ。昔からずっと。好きなのは莉子だけだよ」
気持ちが通じ合い恋人同士になった二人だったが、そんなとき、彼に婚約者がいるという話が浮上して……?

【人物紹介】

藤本莉子(ふじもとりこ)
湊の父親がもともと社長を務めていた大手生活雑貨メーカーで働いており、
そこの新しいブランドの企画・開発のプロジェクトメンバーに選ばれる。
以前から湊のことが忘れられない。

逢坂 湊(おうさか みなと)
十年前にアメリカに行った、莉子の幼なじみ。
莉子が選ばれた仕事のプロジェクトリーダーとして日本に戻ってくる。
突然の再会に複雑な気持ちを抱く莉子に情熱的な瞳を向けているが……?

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*取り扱いサイトは、各書店に掲載され次第、更新されます。

【試し読み】

「莉子」 

 切なげに見つめながら湊の顔が近づいてくる。その瞳に吸い込まれるように目を奪われていた莉子は、息がかかる距離まで近づいて、まじまじとその顔を見た後、驚いたようにはっと我に返った。
 それは何かにぶつかりそうになった時の反射のようなものだった。咄嗟に身体が動いた。気付けば身体を後ろに引いて少し距離を取っていた。背中にソファの背もたれが当たる。
 顔に熱が集まる。嬉しいのは確かで胸がいっぱいなのも本当だ。今なら湊のどんな言葉も信じてしまいそう。けれど、十年は長かった。湊が帰ってきたことだって、まだたまに夢なのではないかと思ってしまう莉子にとって、この展開はあまりにも突然すぎて、すんなりと受け入れられなかった。

「莉子、こっち向いて」

 湊がもう一度名前を呼ぶ。そんな風に呼ばないでほしい。そんな、大切そうに。 
 十年思っていた相手にこんな風に迫られて、だめだと言える女の子なんているだろうか。 
 顔と顔の距離がゆっくりと近付いていく。どうしよう。心臓の鼓動がバクバクと煩いぐらい大きな音を立てている。莉子は忙しなく目を瞬かせた。内心はどうしようもないぐらい動揺しているのに、なぜか身体は縫い留められたかのように動けなかった。
 引いた分の距離を詰められてその顔が間近に迫った時、莉子の緊張はピークに達した。けれど逃げることも何かを言うことももうできなくて、観念したかのようにぎゅっと瞳を閉じた。直後、柔らかいものが唇に触れた。 
 その柔らかさに驚いた身体がぴくっと震えたがやっぱりそれ以上は動けなかった。頭の 奥がじんと痺れる。無意識に息を詰めた。

(キス、してる) 

 これは本当に現実なのか。なんだか信じられなかった。 
 しばらく触れたままだった唇は少しだけ離れてまた押し当てられた。現実だと莉子に教えるかのように優しい動きで何回もそれが繰り返される。
 始めは身体が硬直して、縮こまっていただけだったが、宥めるように唇を啄まれると、少しずつ身体から力が抜けていく。ゆっくりと夢の世界に誘われていくような感覚だった。
 気付けば無意識にその柔らかい感触を追っていた。いつの間にか縋り付くように湊のワイシャツを掴んでいる。段々と押し付けられる強さが強くなっていく。角度が変わったところで、優しく下唇が吸われた。
 ずくりと下腹が熱を持つ感覚に莉子ははっとなった。すると唇の合わせ目をなぞるように舌が這わせられた。 
 何回もそこをなぞられて、思わず薄く開いてしまった唇の間から今度は舌が入り込む。 
 初めて受け入れたその感触に身体が小さく震えた。温かいものが自分の口内をゆっくりと辿っていく。歯列を擽り、口蓋を嬲り、舌が絡めとられる。必死で鼻から息をすることしかできなかった。くちゅくちゅと唾液が混ざり合う音が静かな部屋に響く。 
 何度も舌を絡められて段々頭がぼうっとなってきていた莉子は、キスにほとんどの意識をもっていかれていた。そのため、手の動きに気付くことができなかった。気付いた時には、既にその筋張った手が胸の上を這っていた。

(え?)

 大きな手が動いてゆっくりと膨らみを揉んでいる。胸を触られているのだ。そう自覚すれば、かっと体温が上がるような感覚が襲った。

「ま……まって」

 無意識に身体が動いていた。莉子はあがった息の合間に、制止の言葉を口にしながら湊の手を押さえた。

「ごめん、待てない」

 思った以上に切羽詰まったような表情で言われて、大きな手の上に重ねた莉子の手がぴくりと動いた。困ったように見つめていると、湊の顔が近付いてきて、また優しく唇を塞がれる。だめだ、拒否なんてできる訳がない。身体から力が抜けていく。
 ちゅ、ちゅと啄むようなキスが繰り返される。キスがこんなに気持ちいいなんて知らなかった。こんなに甘いことも。身体がぐっと引き寄せられる。キスは更に深くなり、舌は口内の奥まで入り込んで莉子のものに絡みつく。舌の上も下もねっとりとなぞられて背筋が震えるような感覚が走った。
 飽きずに舌を絡めていると、段々と腰が重だるくなっていくような感覚があった。それが気になって身じろぎしたくなったが、展開が進んでしまいそうな気がして、何となく身体を動かすことは気が引けた。
 ぴくぴく動いてしまいそうな身体を一生懸命抑えていると、一旦下がっていた湊の手がさわさわと身体をまさぐりながら上がってきた。それを感じ取った身体が一瞬にして強張るのが分かる。その行方に気を取られていると、手は当然のように胸の上で止まった。
 膨らみを確かめるように、その手はゆっくりと胸を揉んだ。季節は九月。まだまだ暑い日が続いていて、莉子は薄手のシャツと中にキャミソールを着ていた。もちろんその下にはブラも着けているが意外なほどはっきりと手の感触が伝わってくる。ということは湊もそうなのだろう。それを意識すると、触れられているところがじんじんと熱を帯びたように痺れた。

「莉子……」

 至近距離で名前が囁かれる。その声は甘さと切なさを含んでいた。湊は莉子の首筋に顔を埋め、肌の薄いところを唇で啄みながら胸をやわやわと揉みしだいた。

「んっ」

 指の先が膨らみの上である一点を探った。何度もまさぐるように周囲をしつこくグニグニと押される。どうやら胸の先を探られていることに気付いた莉子は口を手で押さえた。
 指先は柔らかな肉の中にある芯の感触に気付いたらしく、確実に乳首に刺激が与えられていたからだ。声が漏れそうになっていた。

「これ気持ちいい? 硬くなってきた」

 その言葉にかっと顔を赤くさせた莉子は咄嗟に湊の口を手で塞いだ。

「やだ、そんなこと言ったらだめ……」

 その手がすかさずぺろりと舐められる。

「あっ」

 ぱっと手を離してますます顔を赤くさせた莉子を、湊は何かを堪えているかのような顔をして、欲が揺らめく目で見つめた。

「直接、触っていい?」
「え」

 何を直接触りたいと言っているかは、さすがに流れで分かった。けれど、何と言っていいか分からなくて下を向いた。そんなことを聞かれても困る。

「答えないなら、このまま進めるよ?」
「……だめって言ったらやめてくれるの?」
「ごめん、それは無理。莉子は俺の忍耐を試してるの? 俺にとっては割と待ちに待った 瞬間なんだけど」
「だって、こんなすぐ……心の準備が……」
「莉子はさ、変なところで思い切りいいけど、結構臆病だよな。俺が高校卒業までに彼氏 ができなかったら処女もらうって言ってたの覚えてる? 今となっては後悔しかないけど、あの時そう言ったのは、ああ言えばそれまでに莉子が覚悟を決めてくれるって思ったからだよ」
「……そうなの?」
「ああ」

 言いながら、湊はプツンプツンとシャツのボタンを外していった。思いがけず過去のことを持ち出されて、驚いている隙にあっという間に前がはだけられる。キャミソールの胸元からするりと入り込んだ手がカップの隙間から直接膨らみを触った。そのままぐいっと奥まで入り込んでくる。そして、クニ、と尖った先端を押した。

「……やっぱり硬くなってる」

 指先で捏ねるように乳首をクニクニと弄られる。ぴくっぴくっと身体が揺れた。

「ん……んっ」

 鼻から甘い息が漏れる。莉子は顔を真っ赤にして俯いた。至近距離で顔をじっと見つめられて、ものすごく恥ずかしかった。湊は顔から視線は外さずに、ずっと指先を動かしてクニクニと乳首を捏ねている。ぎゅっと摘ままれると思わず、あっ、と声が出た。

「……見ないで」
「かわいいから」
「……バカ」

 小さく言うと、バカでいいよと言いながらブラから手を引き抜いた。邪魔そうに自分のネクタイを緩めて取り外すと、そのままの動きで莉子のシャツに手を掛ける。脱がされると分かると身体がかすかに強張った。それが分かったのか、湊がちゅ、とキスをする。そのままちゅ、ちゅ、と柔らかく啄みながら、シャツを脱がした。

「莉子、手を上げて」

 考える時間を与えずに、キャミソールが引き上げられる。条件反射的に腕が上げれば頭からキャミソールが抜かれて、あっという間にブラだけになった。恥ずかしくて、咄嗟に胸の前で腕をクロスさせる。

「……電気消さない?」
「だめ」

 莉子の全部が見たい、と言った湊が背中に手を回して、ブラのホックを外す。胸の締め付けがふっとなくなり、莉子は硬直したまま、腕を動かせなくなった。

「莉子」

 宥めるように言いながら、湊がつつっと背中を撫でた。上から下、下から上に何度も撫で上げたり、撫で下ろしたりしている。最初はくすぐったかっただけだったが、何度もそれをされている内に、ぞくぞくとした感覚が肌に起こるようになっていった。

「やだ……くすぐったい」

 そのまま脇腹もさわさわとされてたまらず身を捩る。すると、腕の力が緩んだ。そこを見計らったように、ブラが肩から落とされた。

「あ」 

 ぐいっと引っ張られてブラが取り払われる。ふるんと白くてそれなりに大きさがある二つの膨らみが晒された。
 むにゅ、と湊が二つの膨らみを、両手を使って鷲掴みにする。上から掬い上げるように持ち上げられて、たゆんと揺らされた。
 莉子は揺らされる自分の胸を見下ろした。それはかなり刺激的な光景でものすごく恥ずかしかった。けれど湊は感触を確かめるように何度も揉みしだく。その内、親指でクリクリと乳首も弄び始めた。それをされると息が上がっていってしまう。

「ん、ん」

 不意に身体を倒した湊が莉子の胸に顔を埋めた。れろ、と膨らみに舌が這わせられる。突然の湿った感触に、身体が跳ねた。丸みに沿うように舌が動く。やがて中心に近づき、先端の周りをくるくると辿りだした。それをされると何かむずむずとした感覚が先端に走り、思わず小さく息を漏らしてしまう。そこでちゅっと乳首に吸い付かれた。

「あっ」

 口から声が漏れる。湊はそのまま乳首をころころと口内で転がし始めた。
 指とは違う、濡れた生き物のような感覚は、指よりも繊細に動き、また違った快楽を莉子にもたらした。それはじっとしていられない感じで、思わず湊の頭を掻き抱いてしまう。
 サラサラの髪の毛が剥き出しの肌を擽った。湊はぐりぐりと舌先を押し付けて先端を奥に押し込んだり、軽く歯を立てたり、ちゅうちゅうと吸い付いたりして、責め立ててくる。胸を刺激されているのに、なぜか脚の間までもが熱を持ち始めていた。舌が乳首を嬲る度、そこにはどんどん熱が溜まり、ついにはじんじんと痺れて莉子を困惑させる。
 胸元にある頭を抱えたまま、喘ぐような声を漏らし、ようやくその舌から解放された時には、少しばかりぐったりとしてしまっていた。

「気持ちよかった?」

 顔を上げて表情を見た湊が軽く口の端を上げた。莉子の顔を覗き込みながら、湊はするりとスカートの下に手を滑り込ませた。

「莉子、脚開いて」

 熱を帯びた声が耳元で囁かれる。太ももを撫でた手が、ぐい、と内側から外側へ脚を押した。胸への刺激で思考を蕩けさせられていた莉子は素直にそれに従って、何となく下に視線を向けて、はっとしたように目を見開いた。
 いつの間にかソファの背もたれに押し付けられるような体勢になっていて、湊が上からのしかかっている。スカートはギリギリまで捲り上っていた。
 なぜか盛大に伝線していたため退社時に脱いでしまっていて、ストッキングを穿いてなかった。湊と合流する前にどこかで買おうと思っていたのに、時間がなかったのだ。
 だらしなく開いた脚は付け根まで剥き出しになっていて、覆うものがなくなればショーツまでもがはっきりと晒されていた。

「ひゃっ」

 あまりのことに取り繕うことも忘れて、色気のない声が口から飛び出した。慌てて脚を閉じようとしたが、その前に湊の指は既にショーツのクロッチ部分まで到達していた。
 中指がするんとクロッチの真ん中を下から上に撫で上げた。

「あっ」
「脚閉じないで」

 もう片方の手が伸びてきて、脚を押え付ける。そのままの体勢で、湊は莉子に見せつけるようにゆっくりと指を上から下、下から上へと移動させた。それはちょうど、スリットの上にあたる部分で、長い指が移動する度に、くちゅりと濡れた音が小さく響いた。

「濡れてるの、わかる?」
「……わか、る」

 ここまでくると、あまりに淫らな光景に、頭はもう思考停止状態だった。顔を真っ赤にして短く息を吐きながら、湊のすることをただ見つめることしかできない。
 視線を逸らしたいのは山々だったが、逸らすことができなかった。だから、水色のショーツのクロッチ部分の真ん中が、水分を含んで濃い色に変化していることも、莉子の方からばっちり見えてしまっていた。
 形を確かめるように窪みや陰唇を布越しに撫でていた指が、不意につっと上に移動した。そこをかりっと爪先で引っかかれて、腰がびくっと動いた。

「んっ」

 それは明らかに、今までとは違う感覚だった。今までの快楽が柔らかい刺激だとすると、それはどこか鋭かった。続けてかりかりと爪先で引っかかれて、今までよりも甘ったるい声が喉から漏れる。

「ここが好き?」
「はっ……ぁ、あ、んん」
「莉子、見て」

 言われて反射的に視線を下げると湊が人差し指と親指を使ってショーツ越しに何かを摘まんでいるのが見えた。

「こうしたらどう?」

 その二つの指に力が込められる。そこを痛くはない程度に押しつぶしたまま、湊は擦り合うように指を動かした。

「あんっ……それっだめっ。んんっ」

 びくんっと身体が大きく震える。今まで下腹部に溜まっていた熱が軽く弾けたような感覚だった。莉子は大きく息を吐くと、呆然とした目を湊に向けた。

「今の……」
「軽くイッた?   かわいかった」  

 顔が近づいてきて、唇が重なる。興奮した様子の湊は、今度は荒っぽく莉子の唇を貪っ た。入ってきた舌に気を取られていると、脚の間にあるクロッチがぐいとずらされる感覚が襲った。

(なに?)

 咄嗟に唇を離そうとしたが、いつの間に移動したのか、大きな手が頭を押さえていて、それは叶わなかった。
 ぬる、と何かが秘所の上を滑った。

(触ってる……!)

 ショーツの中に入ってきた指が襞を割って差し込まれる。既に十分潤っていたのか、そこはぬるりと滑った。円を描くように入り口を撫で回されて、莉子は声にならない呻きを上げた。恥ずかしさと気持ちよさで居ても立っても居られなくなって咄嗟に湊の首に縋り付いてしまう。
 実は莉子には男性経験がない。大学時代に一度だけ、湊を忘れたくて付き合った人がいたが、結局キスもできずにすぐに別れた。その時の、自分が中途半端な気持ちで付き合ったせいで少なからず人を傷つけてしまったという苦い思いが胸にこびりついて、それ以来、どこか恋愛を避けてしまっていたところもあった。
 という訳で、自分で触ったことはあるが、男性に触れられるのは初めての莉子にとっては、その感覚は刺激が強すぎた。男の、それも湊の長くて太い指が自分の秘所をまさぐっている。それだけで卒倒しそうなほどの恥ずかしさだ。
 けれどそれは同時に興奮を煽るのか、自分でする時とは比にならない程、濡れていた。入り口に引っ掛けるように指を差し込まれて、そのまま手全体を細かく震わせられると、ぐちゅぐちゅと卑猥な音が鳴った。

「あ……あっ、んん」 

 下腹部が熱く痺れている。やたらと気持ちがよくて、まるでもっとと言うように、ひくひくと膣口が戦慄いた。自然と腰が揺れる。 
 つぷ、と少しだけ指が膣口に入り込んだ。その違和感に、身体が少しだけ強張る。けれど湊はそれ以上奥には進めず、すぐに引き抜いてまた、周囲を撫で回した。それを何度か繰り返す。
 すると、次第に脚の間から、ぬちゃぬちゃとした粘着質な音が聞こえるようになった。それと共に、違和感は急速に薄れ始め、秘所はまた、じんじんと熱を持ち始めた。 
 段々と指の進入の度合を深め、湊は信じられないぐらい慎重な動きで莉子の中を探った。それが功を奏したのか、意外なほどすんなりと、膣内は湊の中指を全部呑み込んだ。 
 けれど指を全部埋め込んだ後も、湊は無理に動かそうとはしなかった。探るように何度か膣壁を擦った後、急にずるりとそこから指を抜いた。

「湊……?」 

 莉子は依然として湊の首に縋り付いたままだった。ワイシャツの肩口に顔を押し付けていたが、中を埋めていたものがなくなった感覚に違和感を覚えて顔を上げた。

「中がものすごくきついけど、もしかして久しぶり?」 

 湊は少し眉を寄せて難しそうな顔をしていた。きついとまずかっただろうか。胸に小さく不安がよぎる。
 本当は久しぶりなんてもんじゃない。初めてなのだ。けれど、それを言ったら絶対に引かれるであろうことは予想がついた。十年も湊を思って録に彼氏も作れなかったなんて、さすがに重いのではないか。
 上半身を晒しているのが心もとなくて、手に当たったシャツを無意識に引き寄せ、さり気なく胸を隠しながら困った顔で瞳を泳がせていると、それに気付いた湊がはっとしたよ うな表情を浮かべた。

「ごめん。莉子は今までどんな男と付き合ってきたんだろうってつい考えちゃって。自分から聞いたのに心狭かったよな。正直に言ってくれていいよ」 

 気まずげに笑ったその顔を見て、もっと気まずくなる。過去のことを気にしてくれたのだと分かれば安堵と嬉しさが込み上げたがますます言いづらくなった。でもそんなことを言われて謝られたら、嘘をつける訳がなかった。 
 莉子は言い淀むように視線を彷徨わせた後、意を決したように口を開いた。

「初めて……なの」
「え?」 

 意味が分からないというように首を傾けた湊を見て、ああもう、とやけくそ的に声を出す。

「だから、まだしたことないの。誰とも」

 今度は大きめの声ではっきり言うと、湊が驚いたように目を見開くのが見えた。

「嘘だろ」
「こんなことで嘘つかないよ。もう……」

 だから言いたくなかったのに、と拗ねたように横を向こうとすると、本当に? と複雑な表情を浮かべて小さく呟いた湊が手で顔を覆うのが目に入った。

「そうか、初めて……じゃあ……」

 独り言のよう零した言葉に今度は莉子が首を傾ける。

「どうしたの?」

 思わず声を掛けると覆っていた手をぱっと離した湊が何とも言えない表情で笑った。そこにどこか自嘲的なものが含まれているような気がして、莉子はさっきまでの葛藤も忘れて窺うように湊を見る。何か言おうかと口を開きかけたが、その前に湊が手を伸ばして莉子をぎゅっと抱き締めた。
 その腕の思った以上の強さに莉子は少し驚いた。腕の中から見上げると、その口元が嬉しそうにきゅっと上がったのが見えた。

「湊……?」
「莉子の初めてがもらえるなんてすごく、嬉しいよ」 

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