マッチングしたのは、まさかのエリート同期!? ~想定外に甘く蕩ける夜を過ごしています~

書籍情報

マッチングしたのは、まさかのエリート同期!? ~想定外に甘く蕩ける夜を過ごしています~


著者:小日向江麻
イラスト:園見亜季
発売日:2023年 3月10日
定価:630円+税

優しそうな見た目とは裏腹にはっきりとした性格の優里奈は、「思っていたのと違う」という理由で恋愛関係が続かない悩みがあった。
そんなとき、同期の友人からマッチングアプリを勧められる。
お互いに趣味や条件が合う中から探せるのなら素敵な恋人に出会えるかもしれない。
そこで出逢ったのは同じスイーツ好きのシュリという男性だった。
メッセージをやりとりするうちに意気投合した二人は、有名ホテルのスイーツバイキングに行くこととなる。
だが、約束をしていた場所に現れたのは、仕事でぶつかって以来、苦手に感じていた同期の蛇原千明だった。
酔った勢いのまま、お互いの恋人ができない理由を挙げていくうちに引くに引けなくなった二人は、情事の雰囲気を確かめるためホテルの部屋へと向かうことに……。
「蕩けた顔でそんなしおらしい反応……煽ってるんですか?」
苦手だったはずの彼の愛撫は思いの外、蕩けるように甘く優しいもので――!?

【人物紹介】

山口優里奈(やまぐち ゆりな)
大手販売企業の企画部に務める26歳。
穏やかな外見とはっきりとした性格のギャップに悩んでいる。甘いものが好き。
マッチングアプリで意気投合した相手と出かけることになったのだが、その相手が実は……?

蛯原千明(えびはら ちあき)
優里奈の同期で情報システム部の26歳。
真っ直ぐな性格で少し理屈っぽく見られることもある。甘いものが好き。
優里奈のことは以前から気になっていたようで――!?

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【試し読み】

「あの、蛯原くんっ……蛯原くんってばっ!」
 三段にわたるスペシャルなお皿を堪能したあと、私はなかば蛯原くんに連れ去られる形でホテルの客室に到着した。扉を閉め、オートロックのカチリという施錠の音を聞くかどうかというタイミングで、振り返った彼に抱きすくめられる。
「や……やっぱりこういうのってよくないと思うっ……!」
 指先から力が抜けて、お気に入りのバッグがその場に落ちる。
 私の声は情けないほど揺れていた。思いがけず力強い彼の腕を振りほどけないまま、最後の抵抗とばかりに訴えかけてみる。
「ここまで来て怖気づいたんですか?」
 そう、私は間違いなく怖気づいている。斜め上から私を見下ろす、眼鏡越しの黒々とした瞳と目を合わせないようにしながら、躊躇いがちに口を開く。
「……だって、こんなのおかしいかなって……そういうのは、好き同士ですることでしょ……?」
 ましてやいけ好かない同期が相手だなんて――こんな状況どうかしている。
「山口さんって意外に古風な恋愛観を持ってるんですね」
「意外って失礼じゃない? 私が誰彼構わず遊んでるとでも?」
 私の感覚が世間一般のそれとずれているとは思いたくない。声を荒らげると、蛯原くんは「いえ」と首を横に振った。
「決してそんな風には。ただ、割り切ってる人が一定数いるのも確かですから」
「まぁ、それは……」
 もちろん、心と身体を切り離して考えている人がいるのも知っている。理解はできても共感はしないので、真似はできないけど。
「約束ですから。さっそく、『証明』してもらいましょうか」
「んっ……!」
 彼は片方の腕の力を緩め、私の後頭部を掬うように触れる。そしてそのまま引き寄せて――唇を、奪われる。
「ふぅ、むぅっ……んんんっ……!」
 柔らかくて温かい。ちゅっ、ちゅっと音を立てながらゆっくりと味わうように唇を食んだあと、彼の舌がゆっくりと侵入してくる。
「ぅんっ――ん、ふっ……」
 ――えっ……! 蛯原くんてば――キスがすっごく上手っ……!
 柔く何度も舌先を食まれ、舌で口腔内を探られると、頭の芯がしびれて何も考えられなくなる――
「え……びは、ら、くんっ……」
 敏感な粘膜を刺激されて恍惚としながら、それでも抗わなければいけないような気がして、彼の名前を呼ぶ。
「優里奈さん、もっと身体を僕に預けて」
「蛯原くん……あの、名前っ……」
 キスの合間、至近距離で名前を呼ばれてドキドキした。プロフィールに登録したニックネームと同じ音だけれど、こうして傍で囁くように呼ばれると、本名だと意識して呼ばれている気になって、ドキドキがさらに加速する。
「雰囲気を大事にするほうなんですよね、優里奈さんは」
 小さく笑った蛯原くん。私の額に自分のそれをくっつけて、そのまま私を見下ろす。
 ――……こんなゼロ距離……心臓がもたないんですけど……!
「なら、僕のことも名前で呼んでくれませんか?」
「蛯原くんを……?」
「というか、知ってます? 僕の名前」
「知ってる……千明くん、でしょ」
 記憶力はいいほうなのだ。仕事で絡んだ社員の名前はまず間違いなく覚えている。蛯原くんは同期なのだし、忘れるはずがない。彼みたいに引っかかるところがある人は、特に。
「そう。呼んでくれてありがとうございます、優里奈さん」
「あ――」
 お礼、のつもりなのだろうか。彼はそうつぶやくと、今度は私の耳を食んだ。
 ついさっき唇にそうしたように、軽く音を立てて吸い付いたり、味わうように舌先を動かしたりして――
「ん、ぁ……これだめぇ……!」
「……嫌ですか? 耳、されるの。嫌い?」
「……ぁは、んはぁっ、んんっ……!」
 はっきりと答えることができないくらいに鮮烈な悦びが火花のように散って、くらくらした。
 次第にぴちゃぴちゃと響く水音。わざと聞かせているみたいな艶めかしい音に羞恥心を煽られつつ、舐められるほどに身体の奥のほうから快感がせりあがってくる。
 今まで、こんな風に耳を愛撫されたことがないわけじゃないけれど……何だかすごく反応してしまうのはなぜだろう。じっくりと味わうみたいに時間をかけられているから?
 自分の耳がこんなに敏感だったなんて知らなかった。思わず目をつぶってしまうような鋭い愉悦に、私は彼のシャツをぎゅっと掴んだ。
「敏感なんですね。びくびく震えて」
「あぁっ……そこ、でっ……喋らないでっ……!」
「余計に気持ちよくなっちゃうからですよね。……わざとです」
「んはぁっ……!」
 唾液を塗された耳朶をちゅっと吸い上げてから、舌先は少しずつ耳孔へ向かってくる。
 たっぷりと焦らしながら周辺を愛撫し、シャツを掴む手の力が抜けてきたところを見計らって、耳孔に侵入してくる。
「舌が穴のなかを出たり入ったりすると……ゾクゾクしてきちゃいますよね……?」
「えび、はらく……ぁ、や、ぁっ……!」
 ぬめる舌先が表面の凹凸の感触を残しながら感じやすい場所を往復する。
 ――息ができなくなりそうなくらい、気持ちいいっ……。
「っ、はぁっ……だめですよ。僕の名前……ちゃんと呼んでください」
「ちあき、くんっ……! それ、だめなのっ……立って、られな……」
 身体中の力が抜けて、今にもへたりこんでしまいそうだった。蚊の鳴くような声で訴えると、蛯原くんが余裕綽々に笑ったのが吐息でわかった。そのまま、耳元でこう囁く。
「じゃあそろそろベッドに行きましょうか」
「っ……!?」
 彼が流れるような所作で身体を屈め、私のサンダルを脱がせた次の瞬間、身体がふわりと宙に浮いた。ほんの少しだけ視界に映る景色が変わる。
 ――お姫様抱っこされてる……!
 私が絶句している間に、彼は悠然と部屋の中央にあるダブルベッドまで歩いていく。
 その上に私をそっと下ろすと、すぐに私の身体に覆いかぶさってきた。
 しようと思えばまたキスができそうな距離で、蛯原くんが口を開く。
「正直、ロビーで会ったときはびっくりしました。ゆりなさんがあなただったことももちろんそうですけど……そういう服装、初めて見たので」
「服……?」
 どうして急にそんな話を?
 理由が知りたくて、私は答えを待つみたいに彼をじっと見つめる。
「もちろん会社ではそれらしい服をチョイスして着ているってことなのでしょうけど、一瞬、似ている別の女性なのかと見違えるようでした」
「えっと……もしかしてだけど、今日の服を褒めてくれてる?」
 蛯原くんがデート仕様のかわいらしいテイストの服に気づいてくれるばかりか、それを褒めてくれるようなタイプの男性とは思ってもみなかった。
「……あ、ありがとう」
 うれしい誤算なのかもしれない。私は照れつつお礼を口にした。
「……雰囲気が違うと思ったのは、服装のせいだけじゃないかもしれませんね」
 いつもそっけないほど冷たく澄んでいる蛯原くんの瞳から、情熱的なニュアンスが溢れた――気がした。
「蕩けた顔でそんなしおらしい反応……煽ってるんですか?」
「んっ……はぁっ……」
 直後、首筋に熱い唇が押し当てられる。舌を柔らかな肌に押しつけながら、ちゅっと短い音を立てて痕を残そうとする。
「見えるところにっ……残しちゃ、やぁっ……!」
「なら、見えないところにしますね」
 ワンピースの胸元からウエスト付近にかけて直線を描くように並ぶ三つのくるみボタンを、ひとつずつ外しながら問いかけてくる蛯原くん。
「そんなこと言ってないっ……んんっ……!」
 ボタンを外したことで胸元が大きくはだけた。鎖骨の下、キャミソールを軽く捲り、膨らみの始まりのあたりにまた口づけ、きつく吸い上げる。
「きれいに痕がつきました。優里奈さんの白い肌によく映えてますよ」
「んうっ……」
 痕をなぞる乾いた指の感触に、身を震わせる。
「反応がいちいち新鮮でかわいいですね。僕をセックスに誘っていた人とは思えないくらい」
「だ、だからあれは、そんなつもりで言ったんじゃないっ……ただの例えなんだって……!」
「へえ、そうだったんですか?」
 意地悪に、繰り返し痕を撫でつける蛯原くん。でも、口調に反して指先の動きは優しい。
 刹那、彼が喉を鳴らして笑った。
「……そうだとして、いまさら訂正しても遅いですけどね。ここまで来て、お預け食らう気はないので」
「ひゃぁっ……!」
 大きく開いた襟ぐりからキャミソールをたくし上げ、そこから覗いた薄いピンクのブラのカップをずり上げる。すると、カップに収まっていたバストがふるりとこぼれ出てきた。
「優里奈さんだって、このまま何もなかったみたいには帰れないでしょう?」
「ん、ぁ、触っちゃっ……!」
 人差し指でそっと頂を弾かれると、淡い快感が迸った。
「……きれいですね。もう片方も見せてください」
 もう片方のカップもずり下げて、膨らみにある中心を露出させる蛯原くん。彼からの視線を痛いほどに感じる。
 ――そんなにじっと見ないでほしい。彼に見られていると意識すると、お腹のあたりがじんと熱くなってきて、その熱が全身に伝播していきそうだ。
「こんなにツンと尖らせて……」
「っふぅっ……!」
 ぐり、と片側の頂を親指の先で圧し潰される。勃ち上がった部分をそのまま引っ込ませようとするみたいに圧をかけながら、円を描いて。
「これじゃまるで、触って気持ちよくして、って言ってるのと同じですよ」
「ぁ、うぅっ……言ってな、いっ……」
「あぁ、触ってほしいんじゃなくて、舐めてほしいんですね?」
「あ――……!」
 快感の質ががらりと変わる。指先でもてあそんでいたその場所に顔を埋め、今度は唇で刺激してくる。
「あ、はぁっ……んんっ……!」
 芯を持ちつつある胸の先を、唇と舌と両方で扱かれる。指でされていたよりも深い喜悦に支配され、吐息も湿ったものに変わっていく。
「ほら、いい声で啼いてくれてますね」
「ん、く……あっ、そっちはっ……!」
 左右の胸の頂に交互に舌を這わせながら、彼は私の足を軽く開かせ、スカートの下に手を差し入れる。膝や内腿を経由して下腹部に到達した指先は、ショーツに覆われた恥丘をひと撫でした。
「ここ、早くいじってほしい?」
「ぁああっ……」
 軽く撫でられただけでも期待を示すかのごとく腰を浮かせてしまって、蛯原くんが笑った。
 どうして彼に触れられると、こんなにも反応してしまうのだろう。
 私も二十六歳。異性とベッドをともにする機会は年相応にあったと思う。そのなかには、いまいち高ぶりを覚えることのできない相手も何人かいた。相手だけが果てて、それきり行為自体が終わってしまうことだって。
 だから……まだ衣服をまとっている状態にもかかわらず、思考を快感に乗っ取られそうな自分に戸惑いを隠せない。
 これ以上先に進んだらどうなってしまうの?
 蛯原くんの指先が、ショーツの脇から侵入しようとしてくる。
 ――だめなのに。その場所を許したら、本当に後戻りできなくなりそう……!
「んんんっ……!」
 くちゅり、といやらしい音を響かせながら、彼の指がショーツのなかに入って、秘裂のうえを滑る。
「もう濡れてるじゃないですか」
 入り口から溢れる蜜を指先にたっぷりと塗しつけてくすぐられる。彼の指先がちょっと冷たく感じられるほど、その場所が熱を保っているのがわかった。
「やっぱり早くいじってほしかったんですね」
「やぁあっ……それ、すごいぃっ……」
「優里奈さんの入り口からとろとろなのがいっぱい溢れてて……下着のなか、びしょびしょですよ」
 人差し指から薬指までの三本が粘度のある浸出液にコーティングされると、もう少し思い切りよく指先を動かされる。
「この音聞こえます? くちゅくちゅって、えっちな音」
 秘裂の表面に溜まった液体を掻き出すみたいに刺激されるたび、頼りない水音が途切れ途切れに聞こえてくる。
 恥ずかしさでめまいがしそうだった。どうにか頷いて見せる。
「かわいい……まさかこんなに従順に返事してくれる優里奈さんが見られるなんて」
 声が上ずっていると感じた。感情の揺れがとんど見えないはずの蛯原くんだけど、掠れたニュアンスや吐息から、もしかしたらひどく興奮してくれているのでは、と思う。
「お礼にイかせてあげますね」
「え――ぁああっ……!」
 入り口の縁をくるくると撫でまわしながら、再び胸の先に吸い付いてくる蛯原くん。
「一緒に気持ちいいところも扱いてあげます。ここ、気持ちよくないですか?」
 敏感な突起の付け根の部分をそっと摘ままれて、そのまま扱かれる。突き抜ける快感に一枚ベールを被せたみたいな、ほんの少しだけ穏やかだけど新鮮な悦びは、別の性感帯からの刺激もあいまって、私を虜にした。
「イイっ……ぁ。えびはらくんっ――頭、真っ白になっちゃいそぉっ……!」
 下着が濡れて張り付いていて気持ち悪い。それほどまでに身体が高ぶっているというサインなのだろう。まだ指すら挿れていないというのに。
「……ねえ、僕のことは何て呼ぶんでしたっけ?」
 顔を上げ、意地悪な瞳が二枚のレンズを通して訊ねてくる。
「っ、ち……千明くんっ……!」
「そうですね、優里奈さん。油断しちゃだめですよ。……じゃあ、僕の名前を呼びながらイってください」
「ふぁああっ……!」
 彼は妖しく微笑むと、再び胸の膨らみに顔を埋めた。
 下肢では突起の付け根を刺激され続けている。あまりにも強い、快感。
「ち、あきくんっ……ちあきくんっ……んんんんっ……!!」
 目の前でフラッシュが焚かれたような錯覚。私は、彼の手によって高みに導かれてしまった。

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