
ずっと君だけを愛し抜くよ
素直になれたらご褒美をあげる ~極上CEOと地味OLの寵愛シンデレラ・マリッジ~
著者:臣桜
イラスト:北宮みつゆき
発売日:6月26日
定価:630円+税
事情があり夜はSMクラブでS嬢として働く美琴は、普段はごく普通の地味なOL。
ある日、そんな美琴のもとに〝ヒロヤ〟と名乗る男性が来店し、「あなたを見定めるために来た」という言葉を残して去っていく。
後日、社長兼CEOとして美琴の会社にやってきたのは、〝ヒロヤ〟と名乗ったあの男性で……!?
「君の本能を教えてあげよう」
美琴の抱える事情を解決してくれたことをきっかけに、彼からの甘く蕩かすような溺愛が始まるのだった。
次第に淫らで従順に躾けられていく美琴の胸には、いつしか彼への恋情が芽生えて――。
【人物紹介】
佐久間美琴(さくまみこと)
元お嬢様で、大手食品会社で働くOL。
事情があり、夜は変装をしてSMクラブで女王様として働いている。
本質はごく普通の女性であるが、細やかな配慮ができることから店の主戦力となっている。
宇崎隆也(うざきりゅうや)
美琴の働いている会社の社長の息子で、あるとき社長兼CEOとして就任する。
見る者を惹きつけて止まぬ相貌であり、どこか支配的な雰囲気を持つ。
とある出来事をきっかけに、美琴にとっての恩人となる。
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【試し読み】
最初に会議室で絶頂を味わわされて以降、隆也のマンションやホテルなどで関係を持つようになったのだ。
デートを重ね、高級なレストランでディナーをとり、隆也が教えてくれたワインに身を任せる事も多くなる。これまで美琴は酔って自分を見失うのを恐れて、人前で酒を飲まなかった。飲んでも自宅で缶チューハイを嗜む程度だ。
けれど隆也が豊富なワインの知識を披露してくれ、興味が赴くままに飲み比べをすると、どんどんワインや酒というものが楽しくなっていった。
飲んだ後も、家までしっかり送ってもらえる。隆也が飲んだ時はいつの間に運転手が控えていて、危険な事にもならない。
次第に安心した美琴は心地よく酔うまでになり、自然に隆也に体を預ける事も多くなった。車の中で寝入ってしまう事もあり、気が付くと隆也の家で寝ていた時もあった。
最初こそ警戒心のない自分を恥じたが、隆也のベッドで寝ていても手を出されないと気付くと、どんどん隆也への信頼が強くなってゆく。
そして徐々に隆也との距離が縮まる。ある時は気が付けば隆也が隣に寝て、美琴を抱き締めていた事があった。
繰り返すうちにキスをされ、衣服越しに胸に触れられ……という事が増えてゆく。
それでも美琴は、彼に触れられても嫌ではない気持ちに気付いていた。
「嫌じゃないのか?」
隆也が尋ねたのは、触れるだけのキスを何度も繰り返し、次第に深く激しくなったキスが終わった頃だ。美琴はトロンとした顔をして、隆也がネクタイを解いている姿を何とはなしに見る。
「……隆也さんは、私を好きにする権利がありますし」
(借金を返してくれたから、隆也さんは私を好きにしていい。……でも、それだけじゃない。認めたくないけど、私は隆也さんを信頼し始めている。……惹かれている……かもしれない。……でも、絶対にこの気持ちは口にしない)
そう固く決意する。
(借金まみれの私と、何もかも手にしている隆也さんが釣り合うはずがない。彼には決められた恋人や婚約者がいておかしくない。幾ら私が恋人役に抜擢されたからといって、それを本気にするほど子供じゃないもの)
「ふぅん? 好きにしていいのか」
笑みを深めた隆也は、最初に会議室でしたように美琴をネクタイで目隠しした。
「あ……」
ドキン、と胸が鳴る。ツゥッと顔の輪郭を指先でなぞられ、美琴は吐息を震わせながら横を向いた。
ブラウスのボタンが一つずつゆっくり外されてゆく。
(あれ……。今日、どんな下着だったっけ……)
酔った頭で思い出そうとするが、あまり覚えていない。ただ最近は隆也が身につける物を何でも買ってくれるので、下着一つにしても高級な物を常用するようになっていた。
酒気で体温が上がった肌に外気が触れる。ブラウスの裾がスカートの中から引っ張り出され、スカートのファスナーが下げられた。
(抱かれるのかな……)
ぼんやりとした頭で思うが、不思議と恐怖や嫌悪感はない。隆也に惹かれつつあり、悪く言えば手懐けられた現状、彼に求められても拒む理由がなかった。
(……女王様をしていたのに処女だってバレるのは恥ずかしいな。隆也さんはきっと、経験豊富な女性を求めているかもしれないから)
美琴を丁寧に脱がせつつ、隆也が尋ねてくる。
「男にこうやって触れられた事は? 接客で本番行為はなかったと聞いたけど」
「……時々、ご褒美として脚に触れさせた事はありました。他の……局部に触れさせる事はありませんでした」
「初めてホテルで会った時、大抵の男は〝触れるのに触れない距離で見せつけられる〟のに興奮すると言っていたな? それで自慰も禁じていたんだっけ」
「……最初に調教する頃は、自慰も許していました。けど、どんどん縛りをきつくしていく方が、彼らもより興奮するみたいです」
会話をしている間も、隆也の手はスカートを捲り上げて美琴の太腿をゆっくり撫でていた。触れられている場所が場所だけに胸がドキドキする。けれど隆也の大きな手で優しく愛撫されると、安心感も体中に広がってゆくので不思議だ。
「じゃあ、こうやって美琴を好きに触れるのは、俺だけと思っていいか?」
そんな事を言ってくるので、自分が隆也の特別なのだと勘違いしそうになる。
(あちこちで女性にこういう事をしているのかな)
優しく親切な隆也を疑いたくない。
けれど美琴はまだ隆也のすべてを信用しきった訳ではなかった。なぜ自分に三億もの金を……という謎が明かされない限り、納得できないと思う。
だがその不安が通じたのか、ギュッと太腿を掴まれた。柔肌に食い込む指先の感覚に美琴は体を少し緊張させ、息を詰める。
「俺の事だけを考えろ。俺はいま美琴を可愛がっている。体も心も素直にして、俺の手と声だけに集中するんだ」
隆也のもう片方の手が、美琴の顎を捉える。下唇を左から右へ撫でられ、彼の指によって柔らかなそこが形を変えた。
「は……ぃ」
なぜだか隆也にこうして命令されるのが心地いい。ある程度信頼した人だからか、言う事を聞いても間違えないという安堵感がある。
「いい子だ」
頭を撫でられ、「犬みたい」と思うのに心地よくて堪らない。
隆也の手が一度美琴の体を返し、ブラジャーのホックを外しても美琴は抵抗しなかった。
(恥ずかしい……)
ブラウス、キャミソール、ブラジャーを脱がされ、美琴は上半身裸になる。自分は何も見えないのに、隆也には裸の胸を見られているという羞恥が沸き起こった。とっさに両手で胸を隠そうとしたが、「隠すな」と短く言われてその手も止まる。
太腿を撫でる手も止まり、美琴はあられもなく肌を晒したまま隆也の視線を受け止める事になった。
美琴には隆也がどんな顔をしているのか分からない。それでも研ぎ澄まされた耳に彼の息づかいが聞こえ、体中に痛いほど視線を感じる。視界を封じられているからこそ、美琴は隆也の視姦に興奮していた。
(あ……乳首……勃っちゃ、……う)
自身の胸の先が、キュ……とゆっくり凝り勃っていくのが分かる。恥ずかしくて、口内に溜まった唾液を静かに嚥下した。
いつ触られるか分からない。隆也が自分の肌を見て、どんな顔をしているかも確認できない。緊張した美琴の胸は、何度も大きく上下していた。
「ひぁっ」
いきなり、胸の谷間に温かな掌が押しつけられた。
隆也の手は熱く力強い。美琴の「いつ触られてもいいように」という覚悟などあざ笑うかのように、彼女の乳房を蹂躙してゆく。片手は両手になり、美琴のたっぷりとした乳房を掬い、弾ませ、揺さぶったあとに先端を絶妙な力加減で撫で上げた。
「……っふあぁああっ……」
見えないからか、予期せぬ手の動きに翻弄され、美琴は情けない悲鳴を上げる。先ほどのディープキスで下着が濡れたのは自覚したが、今度は明らかに下肢が刺激を欲しがって疼いた。どうにも堪えきれず、美琴は腰をくねらせて何とかやり過ごそうとする。
(嘘……っ、胸だけでこんな……っ)
体がゾクゾクして堪らない。
(隆也さん、どんな顔してるの? いやらしい女だって軽蔑してる? それとも興奮してくれている?)
「美琴は隠れ巨乳だよな。普段会社ではそういう風に見えない。でも脱がしたらこんなにも大きくていやらしい胸をしてる。真っ白でたわわで、俺の指が食い込むたびに卑猥な形になってる。それなのに先端は男を知らない色をしていて……。色々教え込みたくなる」
「んっ、うぅっ」
きゅうっと両の乳首を摘ままれ、コリコリとこよられた。
その瞬間ジンッと下腹部に甘い痺れが走り、また美琴は腰を揺らす。呼吸を整えてなんとか平静を保とうとした時、温かくヌルヌルしたモノが乳首に触れた。
「んぁっ、きゃ……っ、ぅ」
隆也が――、乳首を舐めている。
レロレロと舌を左右に動かし、たっぷりと唾液をまぶされる。ぷつんと勃起した乳首が唾液に溺れそうになった頃合いで、口に含まれやんわりと吸い上げられた。
「あぁあうっ、ん、んーっ、ぅ、あ……っ」
胸への刺激だけで美琴は乱れ、両手で必死に隆也の髪を掻き回す。鼻先に彼の香りが届き、男性らしい色気のある匂いに、下着がまた湿り気を帯びた。
「ぁ……っ」
そこでスッと太腿を撫で上げられ、美琴は不安と期待の混じった声を上げる。
隆也の手は美琴の太腿をすべすべと撫でさすり、徐々に上に向かう。柔らかな内腿に触れ、鼠径部に至り恥丘を掌でぐぅっと押してきた。
「んぅ……っ」
下着越しに下腹部に触れられただけで、中から果汁の如く蜜が溢れた気がする。
何て淫らな体をしているのかと思う隙もなく、隆也の手がパンティの中に入り込み、濡れた和毛を掻き分けた。
「あ……っ、あぁ……」
特別な処理をしていないそこに触られ、異様なまでの羞恥に晒される。フワフワとした和毛を指で掻き混ぜられ、そろえた指先で円を描くように撫でられたあと、指の間に挟まれツンと引っ張られた。
「やぁ……っ、あ、そこっ、そんな場所弄らないでぇ……っ」
涙声で訴えたのが効いたのか、隆也の指先がまだいとけない突起を探り当て、トントンとつついてくる。
「あぁ……っ、ぁ、ん」
それだけで美琴は腰を突き上げ、執拗に胸を舐めしゃぶる隆也の頭を抱いた。
「すごい濡れてる」
乳首から一瞬口を離した隆也が、独り言のように呟く。美琴は恥ずかしくて堪らず、咽頭を震わせて荒い呼吸を繰り返した。
「ゆる……して」
美琴は処女だ。けれど子供ではないから、男女が何をするのかは十分すぎるほど知っている。事務所にいる時の待ち時間では、他のM嬢から赤裸々な性体験を何度も聞いた。
(胸だけでこんな蕩けそうになるなんて、知らなかった。このうえ下に愛撫を受けたら、私どんな痴態を晒すんだろう。隆也さんに好意を抱いてるからこそ、みっともない姿を見せて幻滅させたくない……)
キスと胸への刺激だけで濡らす女を、隆也はどう思っただろう。そんな不安に駆られていると、彼の声がした。
「許すも何も、これはお仕置きじゃない。ただ愛でているだけだ。体も気持ちもリラックスして、俺を受け入れなさい」
また頭を撫でられ、それだけで服従したいという気持ちになる。
ちゅ、と唇に軽いキスをされ、何度もついばまれる内にキスが深くなってゆく。隆也の指がツルリと花芯に触れ、美琴は大げさなほど腰を跳ねさせた。
「んーっ、ん、……っふ、ぅ、ん、……ん、ぅ」
ぬるついた秘唇を指が何度も往復し、今にも指を入れられそうだ。痛いのかと思って覚悟を決めていても、隆也の指はなかなか蜜口に入らない。たっぷり指に蜜を纏わせたあと、不意に上方に矛先を変え、可愛らしく膨らんだ真珠に蜜を塗り込めた。
「あふ……っ、ん、んぅっ、ン、んーっ」
さやから顔を出したそこを、優しく何度も撫でられる。潤沢な蜜に守られているので痛む事もなく、ただただ気持ちいい。口内をキスで支配されているのも、美琴に深い喜悦しか与えない。
(あぁ……、あ……。気持ちいい……気持ちいい……っ。自分で触るよりずっと気持ちいい……っ)
ドキドキと胸が煩く鳴り、顔に熱が集まる。美琴は隆也に口内を支配されたまま、下肢への刺激に意識を集中させていた。
クリュンと真珠を撫でられるたび、下半身に甘い痺れが走りジッとしていられない。腰が独りでに猥りがましく動き、まるでもっと刺激を欲しがっているかのようにガクガクと震える。
口元は情熱的なキスで塞がれ、嬌声を上げて快楽を発散させる事もできない。
足に力が入り腰が浮くと、隆也の指の動きが少し速くなった。真珠を撫でられるだけでピチャピチャと水音が立ち、ときおり男の自慰のようにさやごと真珠をしごかれる。
「んむぅううぅーっ!!」
下腹部に電撃でも走ったかのような淫激が走り、美琴の目の前で火花が散った気がした。
「ん、ン、……んーっ!!」
とうとう美琴は真珠への愛撫だけで達してしまった。蜜壷に指すら入れられていないのに、美琴の真珠は蜜でびっしょりと濡れている。
絶頂する瞬間、美琴は隆也の舌をきつく吸い上げていた。
隆也の舌を味わい、絶頂を体に刻み込む。
ゆっくりと体が弛緩してゆくと同時に、隆也がキスをやめて唇を離した。二人の間でトロリと透明な糸が引き、ふつりと切れる。
(……気持ち……良かった……)
ハァハァと呼吸を繰り返し、美琴はぐったりとベッドに身を任せる。
ときどき陰核で自慰をする事はあっても、こんなに深い絶頂を味わった事はない。自慰だけで〝性の気持ちよさ〟を知っていたつもりになっていた自分が恥ずかしい。
(……この続きをしたら、もっと気持ち良くなれるのかな……)
そう思っていたのだが――。
「え……」
不意に目隠しが取られ、視界に隆也と落ち着いた色調のベッドルームが映る。
「落ち着いたらシャワーに入るといい。酒が入っているから、風呂はやめておこう。別の部屋に美琴のために買っておいた着替えがあるから、今日はそれを着て休みなさい」
目隠しで少し乱れた髪を、隆也の手が整えてくれる。
「……あの……」
「何だ?」
(最後まで……しないの?)
そう思ったが、言えるはずもない。結局美琴は「何でもありません」とモゴモゴと言って、布団を被ってしまった。
「可愛かったよ。感度もいいし、君は最高の恋人だ」
布団の上からポンポンと軽く美琴を叩き、隆也は彼氏らしい事を言う。その言葉を素直に嬉しいと思うと同時に、妙に切なくなった。
服を着たままの隆也は、一度ベッドルームを出てすぐに戻ってくる。手にはハイブランドとおぼしき鮮やかな花柄の着物風ガウンがあり、それをベッドの上に置く。
「俺は先にシャワーを浴びるから、パジャマ代わりにこれを着ていてくれ」
「はい……」
本当に隆也はバスルームに向かってしまい、水音が聞こえてくる。
(……抱こうって思うほど、魅力がないのかな)
起き上がった美琴は、自分の体を見てみる。
ふっくらと大きい胸は、邪魔だと思う事はあれど、隆也に褒めてもらえるほどの魅力はあったのだろう。男性は大抵胸や尻、脚を見るが、隆也も一応胸を気にしてくれたのだと思う。
恥ずかしい部分にも何の躊躇いもなく触ったし、乳首に至っては好き放題にしゃぶってきた。彼が美琴の体に何の抵抗も持っていないのは分かる。
(……でも普通、ここまでしたら抱くものじゃない?)
お腹の奥がまだ疼いている。
知っている情報では、陰核のみの刺激よりも、俗に言う中イキの方が深い快感を得られるそうだ。
隆也は指を入れなかった。どうにもそこに境界線があるような気がして、美琴は不安になる。
(……ただのつまみ食いだったのかな。隆也さんは……興奮しなかったんだろうか)
S嬢としての習性か、美琴は相手が求める事を察するのが上手かった。仕事でもそれが自然に発揮され、〝仕事が速い上に気が利く〟と評価されている。
だが今ばかりは、与えられる快楽に呑まれて隆也に気を遣う事ができなかった。
(……恋人役なら、ちゃんとできないと駄目じゃない)
反省し、もし『次』があるのなら、きちんと隆也を気持ち良くさせてあげたいと心に決めた。
そのあと隆也がバスルームから出て来て、美琴もありがたく体を綺麗にする事にした。
まだ酔っているせいか細かな事に気付かなかったが、バスルームから出ると洗面台に新品の女性用基礎化粧品がそろっていた。洗面所を隔てるカーテン越しに、隆也が「美琴のために買ったから、使ってほしい」と言ってくれたので、ありがたく使わせてもらう。
加えて洗面所の脱衣籠には、肌触りのいいパジャマと新品の下着も用意されてあった。
何もかも面倒を見てもらって恥ずかしいが、お泊まりの準備もしていないので厚意に甘える事にする。
結局その日は隆也と同じベッドで寝た。翌日は隆也がホテルかと思うような朝食を作ってくれる。
車で送られて家に着き、今日が週末で良かったとつくづく思う。鏡で自分の顔を見れば、幸せで満ち足りた表情をしている。いつもの『武装』が取れていて、こんな顔では絶対に会社に行けない。
残る日曜日は自宅でいつものように過ごしたが、頭に浮かぶのは隆也の事ばかりだった。
隆也と出会った十月が終わろうとし、十一月を迎えて冬を意識してくる。
相変わらず隆也との関係は変わらず、人目を気にして社内のランチデートをし、週末には本当のデートをする。
ベッドで手を出されるのも当たり前になったが、隆也は手や口で美琴を達かせても、決して彼自身の熱杭で彼女を愛する事はなかった。行為中も服を脱がず、それが二人の心の距離を示しているようで寂しい。
当然のように、美琴の中でフラストレーションが溜まっていった。
与える側のS嬢であった事もあり、美琴にだって「自分から色々させてほしい」という願望が少なからずある。けれど隆也は美琴に与えてばかりで、何もさせてくれない。
(どうして何もさせてくれないんだろう。それに、服を脱いで恋人のように愛し合ってくれない……。恋人『役』だから? 結局私は買われた女に過ぎないから、そこまでする必要はないの?)
金曜日の夜、美琴は会社の裏口で隆也と待ち合わせをして、彼の車に乗っていた。
これからいつものように食事をしてから家まで送られる。体を重ねるのは金曜か土曜の夜が多い。
運転席に座っている隆也は悔しいぐらいにいつも通りで、美琴ばかりが一人で焦り、気持ちを募らせている。
(今日こそ……隆也さんとちゃんとしたい。……でも、……でもこれは、借金を返してくれたお礼のためだもの。恋人役としてちゃんとしたいから。本気になってなんかないもの。だって……どう考えても釣り合わない。私は、隆也さんを気持ち良くさせてあげるために、最後までして、満足させる必要があって……)
心の中でブツブツと言い、美琴は自分の指をせわしなく絡ませる。
やがて車が赤信号で止まるタイミングで、勇気を出して隆也に話しかけた。
「あの……」
「ん?」
車内に掛かっていたジャズを口ずさんでいた隆也は、美琴の声を聞いて意識をこちらに向けてくれる。
「今日……その。このまま帰るんですか?」
「……お泊まり、したいか?」
「…………っ」
――自分から「セックスしたい」と言うなんてはしたない。
(……私、女王様として散々はしたない言葉を口にしていたのに、隆也さんの前だとベッドに誘う事もできない……)
いまだ知らなかった自分の初心な部分に、美琴自身が動揺していた。
「どうする? 金曜だから疲れもあると思っていたけど、美琴が望むならホテルか俺の家に行ってもいい」
意見を尋ねられ、「抱いてほしい」と言うなら今しかない気がした。
黙った美琴に、隆也は優しく言う。
「してほしい事があったら、何でも言ってくれ。俺は美琴の望みを何でも叶えよう。俺の前で何も躊躇わなくていい。欲しいものは欲しい、好きなものは好きと言ってごらん。美琴は今までそういう欲を抑えてきたんだから」
カァッと体が熱くなり、変な汗も出てくる。それでも美琴は勇気を出して、自分の望みを口にする。
「……隆也さんが、……欲しい、です。……抱いてください。……今日は、最後まで……」
「……分かった。よく言えたな」
赤信号で前を向いたまま、隆也は左手を伸ばして美琴の頭を撫でた。その手が、とても心地いい。
前の車のテールランプを見つめたまま、美琴は胸を高鳴らせていた。
「ん! ぁ、あ……っ、ア……」
全裸になった美琴はキングサイズのベッドの上に仰向けになり、隆也に胸を愛撫され蜜壷に指を入れられていた。
すっかり慣らされたそこは隆也の指をしゃぶり、グチュグチュと淫らな音を立てている。蜜が泡立つ音に顔が燃えそうなぐらい赤くなり、本能で隆也の腕を掴む。相変わらずネクタイで目隠しをされ視界を奪われた分、他の感覚がとても鋭敏になっている気がする。
膣内を探る隆也の指はとても的確で、一度美琴が好い反応をした場所を決して忘れない。執拗なまでにそこのみを探り、高まって絶頂しても許してくれない。
いま美琴は一度指で達かされたあと、彼の指を二本咥え込まされ二度目の攻めに遭っていた。
「りゅ……っ、や、――さんっ、も……っ、ゆる、し、――てっ」
先ほどから腰がガクガクと震え、切なさが胸の中を荒れ狂い、どうにかなってしまいそうだ。美琴は自分の小さな蜜口に隆也の指が二本入り、蜜まみれになって前後しているのを想像する。あの綺麗な手を汚していると考えるだけで蜜の量が増え、油断していたところで肉芽をピンと弾かれ甲高い喘ぎ声が迸る。
「俺の手をびしょ濡れにするほど気持ちいいんだろう? 気持ちいいなら素直に言いなさい。俺に嘘をつこうとするなら、ご褒美はあげないぞ」
「ぅ、うーっ……」
涙で顔をグシャグシャにし、美琴は歯を食いしばる。
隆也を相手にしていると、あっという間に彼のペースに呑まれ喘がされてしまう。身も心もグズグズにされ、言う事を聞くのが心地よくて堪らなくなる。
「き……、きも、ち、ぃ……っのっ」
平らなお腹を波打たせ切れ切れに訴えると、「よく言えたな」とキスが与えられた。
そのまま舌を絡め合う深いキスに耽溺し、隆也の指で蜜壷も膨らんだ真珠も嬲られる。
「――――っ、ん、むーっ!!」
また隆也の舌を強く吸い、美琴はキスをしたまま絶頂した。伸ばされた隆也の舌を唇で挟み、強く吸い込んで体をブルブルと震わせた。
トプッと奥の方から濃い蜜が溢れた気がし、隆也の指を汚すのがいたたまれない。
指が引き抜かれたかと思うと、グイッと腰を支えられその下に枕を挟まれる。
「ぁ……」
これから何をされるか悟りあえかな抵抗をしかけたが、その前に隆也の熱い舌がねちょりと美琴の秘唇に触れた。
「あぁ……、あ、……ン、ぁあ、ア……」
しとどに濡れた部分を肉厚な舌でねぶられ、美琴は悩ましい声を上げる。何度も己の唇を舐め、零れそうになる涎を堪えた。隆也の髪を両手で掻き回し、強い刺激を受けた時には掴んでしまう事もあった。
ずっ、じゅずっとはしたない音をさせ、隆也が美琴の愛蜜を啜る。彼の端正な顔が自分の恥部に埋められていると思っただけで、脳みそが茹だってしまいそうだ。
「隆也……さん……っ、ン、んぁ、や、そこ……っ」
ちゅうっと膨らんだ肉真珠を吸われ、柔らかな舌で左右に弾かれる。
「っひあぁんっ!」
女の急所を攻められ、美琴は甲高い達き声を上げる。
敏感になりすぎた場所は少しの刺激でも美琴を攻め立ててくる。隆也がトロトロになった蜜壷に舌を這わせ、ピチャピチャと蜜を舐め回すと、美琴は鼻に掛かったうなり声を漏らし彼の髪を掻き混ぜる。
「んンーっ、んぁあ……っ、やぁ、りゅ……や、さん、っだめぇ……っ」
彼の舌が花びらの形を確認するように動く。その舌使いだけでも十分卑猥なのに、隆也はその端整な顔を美琴の秘部に寄せ、蜜口の中に尖らせた舌を突き入れてきた。
熱く蕩けた場所に隆也の顔が押しつけられ、この上なく恥ずかしい。柔らかな隠し所に隆也の舌が男根のように突き立てられ、ズボズボと前後する。
「んあぁああ……っ、や、――あーっ、あぁああぁ……っ」
あり得ない場所で隆也の息づかいを感じ、羞恥で体が燃え上がりそうになる。柔らかい舌の感触がこの上ない淫悦を生み、彼の鼻先で膨らんだ陰核を刺激されるのも気持ちいい。
「達く……っ、達きます……っ、からぁっ! ぁ、あーっ……、――――ぁ」
隆也の頭を押さえてビクビクッと腰を跳ねさせた美琴は、口端から涎を垂らしてゆっくり体を弛緩させてゆく。
「……は……」
秘部から隆也の顔が離れ、彼が息をついたのが分かる。その後、チュッチュッと何かを舐め取る音が聞こえた。
彼には美琴の蜜で濡れた指をしゃぶる癖があるのだ。「恥ずかしいからやめてください」と幾ら訴えても、「美味しいから無理だ」と言って艶然と笑う。
いつものように愛撫が終わり、美琴の目隠しが外される。
(もしかしてこれで終わっちゃうの……?)
また不安に駆られていたが、目の前で隆也がゆっくりシャツを脱ぎ始める姿を目にし、思わず見入ってしまう。
ボタンが外されるたびに、鍛え上げられた分厚い胸板が晒されてゆく。最後にシャツを脱いでしまうと、息を呑むほど美しい体が現れた。
美琴の顔を見て微笑んでから、隆也はベルトに手を掛けスラックスも脱いでしまう。
ブランド物らしい黒いボクサーパンツの布地を、雄々しいモノが盛り上げているのを見て美琴は赤面しつつも安堵する。
(良かった。ちゃんと私で興奮してくれてた)
今まで最後まで抱かれなかったので、力不足なのではとずっと不安だったのだ。
隆也はそのまま躊躇いもなく下着を脱ぎ去り、美琴の前にすべてを晒す。とっさに美琴は顔を逸らしてしまったが、隆也にやんわりと前を向くように顎を掴まれ、彼の裸身を見せられる。
「美琴は俺を欲しいと言ったな? 『抱いてほしい』と」
「……言いました」
今さら求めた言葉を指摘され、顔が熱くなる。
「なら、俺がその気になるように努力してごらん。美琴を抱きたくて堪らなくなるように、俺が求めている事をするんだ」
――求められている。
瞬間的に美琴は強い悦びを覚えた。
今まで与えられるばかりで何もさせてもらえなかった自分が、やっと隆也に尽くす事ができるのだ。
ふ……と頭に自分に傅いた男たちの顔がよぎった。彼らもまた、美琴が〝ご褒美〟をあげる時、とても幸せそうな顔をしていた。
彼らは美琴のつま先や脚にしゃぶりついていたけれど、美琴が隆也に与えてもらうモノは違う。これから自分がご奉仕できるのは、彼の昂ぶった男根だ。
「じゃ……じゃあ、ご奉仕、させて頂きます」
美琴はベッドの上に膝立ちになった隆也に近付き、四つ這いになって彼の屹立に手を伸ばした。けれど妙な注文がくる。
「手を使わないで、口だけで咥えてみなさい」
「…………はい」
――恥ずかしい。
しかし隆也に命令されるのが心地いい美琴は、素直に頷き口を開いた。あーんと大きく口唇を開き、顔を真っ赤にして隆也の先端を頬張ろうとする。
「ぁっ」
だが隆也は微かに腰を動かし、美琴の口から屹立を逃がしてしまう。頑張って咥えようとしても、何度か同じ事が繰り返される。
かというのに頬にぐぅっと熱く硬いモノが押し当てられ、いやらしい意地悪をされている事に羞恥を覚えた。ゴクッと唾を嚥下した美琴の秘部は、甘く疼いて興奮を知らせている。
自ら進んで口淫をするような女ではなかったのに、美琴はいま確かに隆也のそれを「咥えたくて堪らない」と思っていた。
「もぉ……。ちゃんと、……させて、ください」
上目遣いに隆也を見上げ、困り顔で乞う。すると隆也がまた腰の角度を変え、先端をグッと美琴の唇に押しつけてきた。
「ン……、ん、……ぁ」
熱いモノがグイグイと唇を押し、美琴の下腹部が切なく疼く。必死に口を開き、ようやく先端を咥え込む事ができた。
「ん……っ」
口に含んだものをチュウッと吸い込むと、自分の唾液に混じって隆也の先走りを舌に感じる。不思議と何の抵抗もなく、むしろ喜びすら感じて美琴はそれを嚥下した。
命じられた事を上手にできて、嬉しくて堪らない。その証拠と言わんばかりに、下腹部から蜜がタラタラと零れるのが分かる。
美琴は隆也の腰に両手を当て、懸命に顔を前後させる。口の中に入った熱い塊は、美琴の舌に舐められ、吸引されてムクムクと大きくなっていった。
口蓋と頬の肉と舌。口内全体で感じる隆也の肉棒は、熱く漲って信じられないぐらい硬い。太さもあり顎が怠くなりそうで、どうしても涎が零れてしまう。
「ん……っ、ン、ちゅ、…………む、ぅ」
拙いながらも舌を動かすと、また隆也の強張りが大きさを増す。
(感じてくれてる……。嬉しい)
懸命に奉仕しようと思った美琴は、耳に入れて覚えた知識を総動員させ、男性が最も感じるとされる雁首を重点的に責めた。
唇で包み、クポクポと音を立てて吸い込む。手は自然と根元を軽く握り、上下した。そう言えば陰嚢も感じるのだっけ、と思い出し、そちらも優しく揉んでみる。舌で鈴口の辺りをレロレロと舐め回し、ふと彼の反応が気になった。
(これで合ってるのかな?)
不安になった美琴は、先端に吸い付いたまま上目遣いに隆也の顔を窺ってみた。
「…………!」
その顔を見た時の気持ちを、どう言い表したらいいだろう。
いつも堂々としてペースを崩したところを見た事がない隆也が、顔を赤らめ切なげな表情をして美琴を見つめているのだ。目に隠しきれない情欲を宿し、耐えきれないというように舌なめずりしている。美琴の頭も両手でゆっくりと撫で回され、隆也の興奮がその表情と手に表れている気がした。
彼の手つきで褒められていると分かった美琴は、心の最奥にある本能で悦んだ。もし美琴が犬であったなら、尻尾をちぎれんばかりに振っていただろう。
(合ってた。褒めてもらえてる)
嬉しくなった美琴は、さらに奉仕に熱を入れた。
けれどいかんせん初めてなので、美琴のそれはとても拙い。舌や手の動きも、ぎこちなくたまに力加減を間違える。たどたどしい奉仕に隆也は時々息を詰めながらも、ずっと美琴の頭を撫で褒めてくれていた。
「美琴、気持ちいいよ。上手だな」
それまで黙っていた隆也が口を開き、また頭を撫でると共に言葉でも褒めてくれる。
「なるべく歯を当てないように口を大きく開いて、唇はすぼめてごらん。できるか?」
「ん……、ンッ」
歯が当たったら痛いのかと理解し、美琴は懸命に口の奥を開く。それでも唇は懸命にすぼめて――強く吸いすぎたのか、途中で空気が入りチュバッといやらしい音を立ててしまった。
「!」
恥ずかしくて赤面しても、隆也は笑わない。
「大丈夫だ。むしろいやらしい音を立てたほうが興奮する。目は俺の顔を見て、もっといやらしくしゃぶってみなさい」
「ン……、む、ァ……っ、ん、ちゅ、――ん、ぶ、……む、ぅっ」
もう「ままよ」と思い、美琴は思いつく限り淫らに舌を動かし、ちゅうっ、ちゅばっとわざと音を立てて隆也の一物に吸い付いた。上目遣いに隆也を見て、これで合っているのか困った顔になりつつも、舌と口を懸命に動かす。
彼の大きなモノを奥まで頬張っていると、息苦しさも覚える。けれどそれが逆に心地よくもあった。
一心不乱に隆也に奉仕をしていると、不意に美琴の剥き出しのお尻が撫でられた。
「無意識か、さっきから腰が扇情的に動いてるけど、奉仕しながら感じてるのか?」
「…………ん、んン!」
慌てて口を離し否定しようとしたが、「そのまま」と言われて大人しく隆也の亀頭を舐める。
「どうなっているか確かめてあげよう。俺のモノを咥えて濡らすほどいやらしい体をしているなら……」
(軽蔑されちゃう……!)
ヒクッと肩に力を入れ全身を強張らせていると、濡れそぼった花弁に隆也の指が触れた。
「ああ、たっぷり濡れてる。大洪水だ。美琴はいやらしくていい子だな」
あたかもいやらしい事がいい事であるかのように褒められ、美琴の心の奥にずぅん……と深い喜悦が走る。隆也なら何もかも肯定してくれるのでは――? と思うと、また深い信頼が芽生えた。
「もういいよ。口が疲れただろう。ご苦労様」
そう言って隆也は自ら腰を引き、美琴の口からちゅぽんと先端が出てしまう。目の前で反り返っている屹立は、最初の時よりもずっと太く大きくなった気がした。
「あの……私、まだ……」
「ありがとう。でも、もういいよ。美琴のお陰で我慢できなくなった」
優しく頭を撫でられ額にキスをされると、得も言われぬ多幸感に包まれた。
隆也は美琴を優しく押し倒し、いつの間に用意したのか避妊具を手早くつける。自身の手で太竿を何度かしごき硬度を確かめたあと、美琴の内腿を撫で先端を花弁に擦りつけてきた。
「あ……、ぁ……ん、……隆也、さん……」
ここまで来ておいて、美琴は初めてのセックスに対する不安も抱いていた。隆也なら酷い事をしないという信頼はある。だが「初めては痛い」という情報も得ている。
その不安がやはり通じたのか、隆也がまた頭を撫でてくれた。
「美琴、初めてだろう」
「え……っ、ど、どうして……」
「何回も愛撫していれば分かる。最初は本当に緊張していて、すぐになんて抱けなかった。今は膣内もほぐれているし、きっと大丈夫だと思う。それでも初めてなら多少痛むと思うが、……大丈夫か?」
「……はい」
隆也がそう言ってくれるのなら、何だって受け入れられる気がする。
さんざん心も体も蕩かされた美琴は、うっとりとして頷いた。