
捨てられた花嫁ですが、幼馴染の冷徹秘書から最愛を捧げられました
著者:奏多
イラスト:南国ばなな
発売日:2026年 8月21日
定価:720円+税
十歳の頃、衛藤絢愛はカイと出会い、互いに密かに惹かれ合っていったーー。
やがて二人はキスを交わす仲になったのだが、ある出来事をきっかけに疎遠に……。
時が経ち、大人になった絢愛は家族の事情で、愛のない契約結婚をすることになってしまう。
相手は御室家の嫡男で、しかも彼の弟兼秘書がかつての初恋相手カイこと、海棠だった!?
再会を果たした二人だったが、海棠の絢愛への態度は冷たいもので――。
その上、契約結婚でも冷遇や屈辱を受け、孤独な生活を強いられていた絢愛。
家族のために耐え続けていたのだが、あるパーティーの最中、公衆の面前で離婚を突きつけられてしまい――!!
絶体絶命の状況に陥った絢愛を助けてくれたのは海棠だった!
「きみが俺との結婚を望んでくれるなら、このままきみを連れ去る。きみはどうだ?」
しかも、絢愛の結婚は受理されておらず、海棠は絢愛を想い、陰ながら助けてくれていたようで――!?
【人物紹介】
衛藤絢愛(えとう あやめ)
25歳。御室家長男と愛のない契約結婚を交わしている。
明朗快活で勝ち気な性格ながら、義理人情に厚い一面も。
幼馴染の海棠と義弟として再会するのだが――?
御室海棠(みむろ かいどう)
御室家の次男で兄の秘書を務めている、27歳。
冷静沈着で理知的な性格だが、絢愛に対しては一途な執着心を見せることも。
絢愛が離婚を突きつけられた際、彼女のことを救ってくれて――!?
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*取り扱いサイトは、各書店に掲載され次第、更新されます。
【試し読み】
海棠の住まいは、モデルルームのような部屋だった。
殺風景にも思えるほど調度の数は少なく、インテリアはモノクロが基調でシンプルだが、ひとつひとつにセンスがあって安っぽくない。
これで杏生の水準以下なら、杏生はどれだけの家に住んでいるのだろうか。
少なくとも今まで絢愛が住んでいたあの離れとは、雲泥の差だろう。
「や……そこは……」
絢愛の甘い声が漏れているのは浴室だった。
「きみが言ったんだろう、先に身体を洗いたいって。だから洗っているだけだ、ほら」
ふたりは全裸で床に膝立ちをして、絢愛の背後にいる海棠がボディーシャンプーを泡立てた手で、絢愛の両胸を交互によく揉みしだいている。
「それ、洗ってなんか……んん!」
「隅々まで洗っているだけだ。それなのにいやらしい声を出しているのはきみだろう? きみは風呂場でいつもこんな声を上げて身体を洗っているのか?」
「違……っ」
「いやらしい子に育ってしまったな」
耳元に囁かれる意地悪な声が、絢愛の羞恥心を煽ってくる。
「他の誰かが、きみをいやらしくしたのか?」
「そんな人……ああ、んっ……いない、から」
胸の蕾をきゅっと摘まれ、絢愛ははしたない声を交えながら辿々しく答える。
「本当に?」
「ん……! ほん……とうよ」
「じゃあ……ここを触ったのは、俺が最後?」
「うん……」
すると海棠は舌先で耳殻をなぞった後、耳朶に吸い付いた。
「覚えてる? あの嵐の時のこと」
「ええ……」
「俺も覚えている。きみの胸……あの時よりも大きくなって、泡がついているのに俺の手に吸いついてくる。たまらない」
「ああ、耳……駄目……!」
「耳も洗浄中。俺の舌で」
舌が耳穴に差し込まれ、絢愛は嬌声を上げながらぶるっと身震いをした。
(ああ、どうしてこうなったんだっけ……)
海棠は鍵を開けて部屋に入るなり、廊下の壁に絢愛を押しつけながら唇を奪った。
脳が蕩けそうに甘く、理性を吹き飛ばすほど激しくキスに喘いでいると、海棠が寝室に連れていこうとした。
――早くきみが欲しい。
同じ気持ちだったが、自分が汗臭いことが気になった。
大好きな人に抱かれる時は、一番綺麗な自分でいたい……そんな女心に揺れて、まず身体を洗いたいと懇願したところ、快い返事を貰って浴室に案内してくれたはずだったのに、なぜか海棠もついてきた。
――可愛いきみの身体を洗ってやる。それがいやなら寝室直行。どっち?
自分で手早く洗って終えればいいと安易に考えた絢愛だったが、結果……こうして念入りに彼に洗われている。
「絢愛、鏡を見てみろ。きみがどんな顔で洗われているのか」
鏡には自分の両胸が、泡立った大きな手に包まれて、擦るように揉まれている。
優しい洗浄だと思えばそうなのだが、胸の頂を掠める指の動きが淫らだ。
泡でよく見えないはずの自分の胸が、海棠の手の動きによって淫猥に形を変えている気がしてしまい、身体が昂る。
なにより衝撃的なのは、自分がうっとりとした顔で身を捩って感じていることだ。
耳を愛撫され胸を弄られて、嬉しくてたまらない……そんな女の顔。
(ああ、それに……)
鏡越しに見る海棠の身体が、なんと逞しい男のものなのか。
垣間見える胸板は昔のような線の細さはない。
腕も指先も、すべては魅惑的な男のものだ。
そんな目線を感じたのか、鏡の中の海棠が絢愛の顔を見つめた。
そして両腕でしっかりと絢愛を抱き締めると、絢愛の顔を持ち上げて唇を奪った。
ふたりを隔てる泡がふたりの熱に溶け、全身で海棠の素肌を感じる。
息ができないくらいの至福感。
そして誰にも邪魔されない空間で、ゆっくりと舌を絡ませ合っている、愉悦感。
ゆったりとした時間の中で、恋心と欲情が膨らんでいく。
やがて海棠の手が滑り落ち、絢愛の下腹部を撫でた後、黒い茂みの奥に進んだ。
「んんっ」
海棠は唇を離さず、ゆっくりと指先で秘裂を割り、前後に動かした。
すでに疼いて湿っていたそこは、海棠に触れられたことで、蜜口から熱い蜜をこぼす。
海棠の指に絡んだ蜜が潤滑剤となり、くちゅくちゅと卑猥な音をたてた。
(あ、そこ駄目。気持ちよすぎて……駄目!)
ゆったりとした時間が流れているのに、絢愛の気持ちはなぜか急く。
誰かに見られているかのような謎の切迫感に、思わず海棠の腕を掴むが、彼は舌の根元まで絡ませるより濃厚なキスをしながら、花園の蹂躙をやめなかった。
快感のさざ波が絢愛を翻弄する。体重を支える太股が戦慄く。
次第に強まる快楽に、慣れていない絢愛は切羽詰まった心地にさせられるのに、熱い下腹部の奥はきゅんきゅんと疼いて悦んでいる。そして欲していた。空虚な体内を埋めてほしいと。
絢愛が無意識に腰を揺らすと、花園の表面に円を描くようにして擦っていた指先が、蜜口の中にゆっくりと埋め込まれた。
「ああっ」
海棠が唇を離すと同時に、絢愛の口から切なげな声が上がる。
恐れと喜びに身体が硬直する。
「大丈夫だ、絢愛。ゆっくり息をして、俺の指を感じて」
あの嵐の日、怖がる絢愛に気づかずに海棠はことを進めようとした。
それがさらに絢愛の恐怖を煽り、結果彼女の身体は海棠を拒んだ。
海棠はその反省もあり、絢愛の身体の変化を敏感に感じ取りながら、彼女のペースで身体を解そうとしていた。
「よし、良い子だ。きみの中……蜜でとろけてきゅうきゅうしてる」
「……っ」
「ほら、鏡を見てごらん。俺の指を咥えたきみは、胸の時よりも気持ちよさそうだ」
そして海棠はすりと絢愛の頬に、自分の頬を擦り寄せる。
「愛するきみが、俺の手で……こんなにも女の顔で感じてくれるなんて。男冥利だ」
言い終わると深く埋め込まれた指が、ゆっくりと抽送を始めた。
「あ、ああ……っ」
得も言われぬ感覚に、引き攣った声が自然と上がる。
「痛いか?」
「痛くはない。ないけど……ああ、やだ。やめてという意味ではなく……」
絢愛の口から出るのは、歓喜の喘ぎ声だった。
「ああ、カイ……くん。わたし、わたし……」
それは初めて感じるものだった。
「鏡のきみは、もっととねだってる。気持ちいいの?」
「ん……ぞくぞくして気持ちいいの。カイくん……ああっ」
抽送は次第に速くなり、細い内壁を指先でひっかく。
そのたびに背を反らして快感を訴え始める絢愛は、やがて身体を硬直させる。
「ああ、駄目。なにか……クる。ああ、駄目、来ちゃう、大きいの来ちゃう!」
腰から迫り上がるものが、一気に身体に走り抜けた。
弾け飛んだ感覚に、絢愛は一際長い嬌声を上げると、身体を弛緩させた。
崩れ落ちそうになる絢愛を抱き留め、彼女の身体を反転させた海棠は、初めての果てを経験して甘い余韻に浸る絢愛の顔を覗き込むと、やるせない声を漏らす。
「たまらないな……。ここまで……きみが色っぽいとは」
海棠は自分に抱きつかせるような形で、絢愛を膝の上に跨がせた。
そして雄雄しく勃ちあがっていた剛直を、下から彼女の秘処に滑らせる。
果ての余韻にさざめく秘処の表面に、突如熱くて質量のあるものを宛がわれて、絢愛は身体を竦ませる。
「絢愛……。俺のも、きみの蜜で洗って」
欲情に掠れた海棠の声に、絢愛は熱っぽい吐息を漏らした。
見つめ合うとどちらからともなく唇を重ねながら、絢愛は落とした腰を揺らした。
隔たりのない粘膜同士が擦れる音が響く。
互いに敏感な場所を感じ取った身体は、相手の感触に昂っていく。
「あぁ、熱い……絢愛の蜜。ああ……腰が止まらない」
「カイくんが……すごい。びくびくして……ごりごりして……ああ!」
ただ互いを感じ取っていただけだった触れ合いは、やがて欲情の衝動に突き動かされるまま、それ以上を求めて動きを変える。
本能が叫ぶまま……繋がりたい。
場所など、どうでもいいから。
「アヤ……」
懇願のように揺れるアイスブルーの瞳に、絢愛は頷いた。
「ここで……ひとつになりたい、カイくん……」
快感を貪りたいのではなく、心ごと溶け合いたいのだ。
離れていた距離をゼロにしたいだけ。
唇を重ね合いながら海棠は、自らの熱杭を絢愛の蜜口に埋めた。
質量があるものが絢愛の中を蹂躙し、ぎちぎちと狭道を押し開く。
痛くないといえば嘘だ。
しかし痛み以上に、海棠が欲しい気持ちが勝る。
「アヤ、痛いか? 少し……休むか?」
海棠は一気に貫きたいのを我慢しているのだろう。
浅い呼吸をしながら、絢愛よりも苦しげな顔をしている。
「休まないで。抜かないで……このまま、カイくんが欲しいの」
「絢愛……」
「いいよ、一気に。早く……わたしたち、ひとつになろう?」
すると海棠はたまらないとでも言うように、眉間に皺を寄せて目を細めると、絢愛の身体を強く抱き締めながら下から突き上げた。
怒張したものが未開の地を切り裂き、絢愛は破瓜の痛みに震えた。
そんな彼女の背と頭を海棠は優しく撫でる。
「アヤ……繋がったよ、俺たち……。感じる?」
痛みに緊張した身体は、海棠の言葉によって弛緩していく。
身体の中に、確かに息づく海棠を感じたからだ。
恐怖も痛みもない。
ただあるのは……愛おしさだけだ。
「感じる……。ああ、嬉しい」
破顔すると、海棠は目を潤ませて切なげな顔を向けてくる。
「ようやく……心も身体も繋がった。これできみは……俺の女だ。俺の初めてで最後の」
(初めて……)
自分たちは純潔を守り、初恋を成就させたのだ。
性に奔放な今の時代、あまりに古風すぎると笑う者もいるだろう。
しかしふたりには、これが真実の愛に思えてやまなかった。
自分が愛を表明し、そして相手からも同じく表明される。
それはまるで、結婚の誓いのよう。
「誰からも望まれなかった俺は、恩ある祖父のためなら、自分の感情を捨てても構わないと思っていた。だけど……きみに出逢った。きみと過ごした時間は、俺も知らなかった素が出せる唯一の安らぎで解放だった。俺を慕うきみが可愛くて……いつしかそれが恋い焦がれる愛に変わった」
「……っ」
「俺に……ここまで人を愛せることを教えてくれてありがとう」
海棠から一粒、涙がこぼれた。
「きみに嫌われたと思った後も、俺はずっときみを愛していた。俺が……両親のことで困るきみを助けたかった。俺が、きみの夫として式を挙げたかった」
「海棠……」
「たとえあいつがきみに触れていなくても、あいつがきみの夫だという現実に、発狂しそうなくらい妬いていた。何度俺は、妄想の中できみを組み敷き、俺の方を見ろと叫び続けていただろう」
絢愛の目からも涙がこぼれ落ちる。
「昔も今もこの先も、俺の心をきみに捧げる」
「わたしも……あなたにすべてを捧げる」
絢愛は真っ直ぐとした目を海棠に向け、そして微笑んだ。
「俺……嫉妬深いぞ」
「上等よ。ずっと……その愛でわたしを縛っていて。わたしは……もうあなたから離れない。離れたいとも思わない。そして……わたしもあなたを離さない」
「絢愛……」
しばらく見つめ合ってキスを交わしていると、絢愛の中の海棠が反応した。
留まっていることに痺れを切らしたと言っているかのよう。
それを一番に思っているのは海棠のはずなのに、彼は自らの欲を優先させなかった。
「……その、いいよ。動いて……」
はしたないと思うけれど、きっと絢愛のことを思いやってのことだと思ったから、許可を出せるのは自分しかないと思った。
「しかし……まだ痛いだろう?」
「大丈夫みた……ん……っ!」
「どうした?」
「その……あなたがビクンビクンとすると、わたしの身体もつられるの。痛みじゃなくて……その奥から、気持ちいいものが……」
海棠から返事はなく、代わりに絢愛の中の海棠が返事した。
「ぁあん!」
今度は大きく、絢愛から淫らな声が出てしまった。
「どうして……わたしばかりはしたなくするの!」
絢愛は真っ赤な顔でぽかぽかと海棠の肩を叩く。
「ははは。そうか……きみは、感じてくれているのか、きみの中にいる俺を」
「そういうこと、言わないで! なんだかわたしが……」
「きみは……たまらないほど可愛い。ただそれだけだ」
一瞬真顔になった海棠は、妖艶さをまといながら繋がったままの腰を一度浮かして剛直を引き抜くと、ゆっくりと内壁を擦るようにして突き上げた。
絢愛と海棠は同時に悩ましい声を上げて、深くでまた繋がった悦びに身を震わせる。
「大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
痛みがないことを知った海棠は、抽送を繰り返した。
熱くて硬いものが、凶悪の生き物のように息づきながら絢愛の中に出入りする。
海棠が充満する嬉しさと、いなくなる寂しさが交互に襲い、彼女の中で眠っていた官能を目覚めさせていく。
「あぁんっ、はぁっ」
破瓜の痛みは甘く痺れるような快感の波となり、絢愛は海棠に揺さぶられながら、心地よい波に揺蕩う。
ぼんやりと見下ろす海棠の顔は、男の艶に満ちて蠱惑的な表情を見せていた。
昔は受け入れがたかった、いつもと違う男を魅せる彼が、今では受け入れられる。
どの海棠も彼であり、恐れることはなかったのだ。
ここにいるのは、自分が愛する男に違いないのだから。
薄く唇を開いて喘ぎ声を響かせる海棠も。
汗ばんだ髪先を揺らし、苦しげな表情で感じている海棠も。
愛おしい……自分の夫だ。
離さない。離したくない唯一無二の男。
「わたしの初めてが……あなたでよかった」
あなたを愛せてよかった。
たくさんの愛を乗せて、絢愛は強まる快感の波に乱れていく。
「あぁっ、ああ」
力強く愛してくれる彼が愛おしい。
やがて腰から迫り上がる大きな波が大きな渦を巻き、否応なく絢愛を呑み込んだ。
「カイくん、海……ああ、おかしくなる。わたしが……壊れる!」
内側から壊されて、残るものは何なのか。
「いいよ、壊れろ。壊れて……俺だけしか愛せない女になれ」


