俺をお婿にどうですか? ~年上エリート部下は秘密の社長令嬢を溺愛してやまない~

書籍情報

俺をお婿にどうですか? ~年上エリート部下は秘密の社長令嬢を溺愛してやまない~

著者:桔梗楓
イラスト:園見亜季
発売日:2025年 9月26日
定価:630円+税

 

父親が経営している会社に就職し企画部の部長を任されている友加里は、激務で最近寝不足気味。
そんなある夜、年上部下の刻哉から不眠症改善の手助けを申し出られ、受けてみることに。
しかし、連れて行かれたのはラブホテルで――!?
生粋の箱入り娘である友加里は、ベッドに押し倒されてようやく刻哉の意図に気づいたものの、何故か抵抗する気持ちになれなくて……。
「純粋なまま、ここまで来たのなら……俺しか、穢したくはない」
次の日、昨日のことは忘れようとすればするほど意識してしまっている友加里は、ついに刻哉への気持ちも自覚してしまう。
しかし、友加里には刻哉だけは恋愛対象として見るわけにはいかない事情があって……!?



【人物紹介】

小美玉友加里(おみたま ゆかり)
小美玉ホールディングスの社長令嬢で、現在は父の経営する会社の企画部の部長として働いている28歳。
整ったきれいな容姿なのだが、友人がいないためか本人に自覚はない。
自他ともに認める努力家で、真面目な性格。
真面目ゆえに刻哉に対して罪悪感を抱えておりーー!?

区鶴刻哉(くのつる ときや)
友加里の部下。30歳。端正な顔立ちで、常に髪もスーツもきっちり整っている。
かつては父が区鶴商事という会社の社長だったが、とある企業に吸収されてしまい一家離散している。
友加里の祖父に誘われたことで、小美玉ホールディングスに入社したが……?

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*取り扱いサイトは、各書店に掲載され次第、更新されます。

【試し読み】
 

「今夜は、溺れるように寝かせてやる」
「んん……? ンっ!」
 シャツを食んだ状態で疑問を投げかけようとするも、そんな悠長な時間は終わったとばかりに新たな感覚が身体中をかけめぐる。
 ブラのホックが外れてまろび出ていた乳房を、刻哉の大きな手が掴んだ。
 まるで星が舞うみたいに、友加里の目の前にチカチカと火花が散る。
 本能的に逃げようとして腰が引ける。だが刻哉のたくましい腕はそれを許してくれない。
 背中に回った腕はがっちりと友加里の体を固定していて、もう片方の手が巧みに友加里の乳房をもてあそぶ。
「はっ、だめ、ああっ」
 思わず声を上げてしまって、シャツの裾が口から零れ落ちる。だが、友加里の制止は刻哉を止められず、彼は乳房を下から掬い上げるように柔く掴み、絞るみたいに先端に向かって手を滑らせる。
 そして、きゅ、と乳首を摘ままれて、友加里は今までにない高い嬌声を上げた。
「ああっ!」
 何を。何をしているんだろう、これは。
 友加里だってセックスがどういうものかは知っている。でもこれは、その範疇ではない。
 愛撫という行為何なのか知らない友加里は、ただただ、甘やかな刺激に戸惑うのみ。
「これ、なに? んっ、きもち、よくて、変になる……っ」
 はあはあと息を切らせながら、友加里は涙目で訊ねた。
 黙って愛撫に興じていた刻哉はその表情を見て目を丸くする。
 そして「はあ」と呆れにも似たため息をついた。
「本当に、何も知らないんですね……。二十八歳の反応とは思えない」
「歳は関係ないわよね!?」
「いや、友加里くらいの年になれば、どんな純粋培養でも多少は知識を持ってるものだが……。いや、わざとそういう知識から遠ざけられていたなら、納得はできるか」
 刻哉が少し考えるそぶりで目を伏せる。だが、すぐに顔を上げた。
「知らないなら、今、知ればいい。これが愛撫です」
「愛撫……」
「愛しく撫でる。……漢字の通りですね」
 する、と刻哉が乳房を優しい手つきで撫でる。びくっと友加里の肩が震える。
「あ……」
 ふにふにと乳房を捏ね、人差し指でツンと乳首を押す。
「は、っ、ン……っ」
 彼が手を動かす度、体が勝手に反応する。甘くて、くすぐったくて、ドキドキと胸が高鳴る行為。
(これが、愛撫……気持ちいい……)
 知らなかった。こんな感覚が自分の中にあると、初めて知った。
「もっとしてほしいですか?」
「ん……」
「そうですか」
 蕩けそうな頭で生返事をすると、刻哉は体を起こした。そこで友加里はハッと我に返る。
「ち、違うの。今のはナシで!」
「そういう注文を聞くつもりはありません」
「やっ、そもそもあなた、さっきからずっと私の話、ぜんぜん聞いてくれない……っ」
 非難するも刻哉には暖簾に腕押し。馬の耳に念仏。全然意味を成していない。
 つまり、この行為を止めるつもりがハナから無いということだ。
 刻哉は両手で友加里の乳房を掴んだ。
「は、あ……っ、もう……話、聞いてよ……」
 涙目で訴えるも、刻哉は答えない。ただ淫らに感じて心身ともに蕩けてしまえと言わんばかりに愛撫を続ける。
 最初は大きく、手の平を使って捏ねるように。
 刻哉の思いのままに、友加里の柔らかな乳房は形を変える。まるで彼は童心に帰って粘土遊びに熱中しているかのよう。
 だが、その手がきゅうっと絞るように窄まって、ぎゅっと乳首を摘まんだ時、これが愛撫であり、淫らでいやらしい行為なのだと否応なく教えてくる。
「ああっ!」
 両方の乳首を摘まれて、友加里の体は痺れるように戦慄いた。
「やあ、そこ摘まないで……」
「痛いですか?」
「痛くないわ。でも、なんだかおかしな気分になるの。気持ち、よくて……んん」
 友加里は知らず体をくねらせた。官能の波に浚われるのが怖いゆえの、最後の抵抗だったのかもしれない。
 刻哉はそんな可愛らしいとも言える抵抗を見て、ふ、と小さく笑った。
「気持ちいいなら良いじゃないですか」
 そう言って、摘まんだ指を擦るように動かした。
「はっ! ああっ、やあぁん!」
 びりびりと電気が走るような快感。乳首なんて、今まで気にしたこともない場所だった。自慰もしたことがないから、そこが性感帯だなんて知るよしもない。
「敏感な体だな。友加里がこんなにもいやらしい体をしていたとは」
「い、いやらしくなんか、あン!」
 口答えしようとしたら、ぴんと指で乳首をはじかれた。高い嬌声とともに体が跳ねる。
「いいから、大人しく感じていろ」
 乳房を掴んで揉みしだきながら、人差し指を動かして乳首を擦る。
 気持ちがよすぎて、何も考えられなくなる。
「や、ン……っ、区鶴さ……っ」
「こういう時は名前で呼ぶものですよ」
「そっ、なんで」
「何でもだ。……ほら?」
 カリカリと引っ掻くように人差し指で乳首を弄りながら、耳元で甘く囁いてくる。
 耳の中に熱い息が当たって、友加里はぞくぞくと体を震わせた。
「名前」
「なま……え」
 ぼうっとした頭で考える。
(名前……名前……確か……)
 友加里は彼の名前を思い出すと同時に――。
『――区鶴刻哉です。よろしくお願いします、小美玉部長』
 彼と初めて出会った日の記憶が甦った。
 入社早々、役職つきで配属された、鳴り物入りの新入社員だった自分に、彼はそう挨拶した。
(彼が……区鶴。区鶴商事の社長子息さんなのね)
 友加里が想像していたよりもずっと、刻哉は大人びた風格で現れた。
 自分を羨んでいるようにも、あるいは妬んでいるようにも見えない。友加里に対する彼からの感情は……そう、あえて表現するなら『無関心』だった。
 友加里が何者であるかを、この会社に所属している人なら誰でも知っているだろう情報を、まるでまったく知らないかのような態度。
 それは、普通の人であれば『寂しい』と思うかもしれない。好きの反対は嫌いではなく無関心だと誰かが言っていた。だから、そう思うのは当然の話だ。
 でも友加里はその無関心さを嬉しいと思った。
 妬まれるわけでもなく、嫌われるわけでもなく、ただ同じ会社に勤める同僚でいてくれる。それが友加里の心を安らげた。
 仕事上だけのつきあい。その言い方も、人によっては『寂しい』と思うだろう。
 しかし友加里には心地よかった。
 今までだってずっと一人だったのだ。恋人はもちろん、気の合う友人もいない。
 自分に近づいてくる人といえば、媚びを売って金品をたかろうとする者か、嫌味や皮肉を言う者ばかりだったから。
 刻哉は、淡々とした態度を取りながらも、思いのほか友加里の世話を焼いてくれた。
 友加里が間違ったことをしたら言葉こそ敬語だったがズバズバと核心を突いて正し、逆に友加里が困っていたら、迷いもせず即座に助けてくれた。
 いつの間にか、友加里にとって刻哉は頼れる先輩になっていた。自分のほうが上司なのだが、間違いなく自分がここまでやってこられたのは刻哉のおかげだったのだ。
 だから――友加里が彼に抱く感謝の気持ちが、異性に憧れる感情に変わるのは当然の話で。
 友加里はそれを自覚しながら、その感情に踏み込んではならないと自分を律し、素直な気持ちから背を向けていた。……五年間も。
「刻哉」
 友加里の口から、名前が零れる。
 すると、刻哉がすぐさま動いた。名を呼んだばかりの友加里の唇に口づけたのだ。
「ン……」
 友加里は拒まなかった。キスされるのは雰囲気でわかったのに、避けなかった。
 本当は避けなければいけないのは重々わかっていたのだが、ここまで愛撫されていたら、今更だと思ったのかもしれない。
「刻哉……」
「ああ」
 友加里の言葉に、刻哉は頷く。何度も唇にキスを落として、きゅっと乳首を摘まむ。びくりと友加里の肩が震えると、それをなだめるみたいに彼の唇は肌をするすると伝って、その肩に口づける。
「はあ……っ」
 どこをキスされても気持ちがいい。彼の唇の感触は少しくすぐったいけれど、気持ちがいい。
 肩に口づけた刻哉の唇は、次はどこに移動するんだろう。
 のぼせそうな頭で友加里は考える。刻哉はまるで迷うみたいに唇で友加里の体をまさぐった。彼の形の良い鼻の頭が肌に当たって、唇とともに滑っていく。
 いたずらで気ままな唇は、やがて友加里の柔らかな乳房に触れ、そして乳首にちゅ、と吸い付いた。
「~~っ!?」
 あまりに強い刺激に目の前がチカチカする。友加里の体が今までにないほど震え、体をくねらせて彼の唇から逃れようとした。
 だが、刻哉の力強い手はいつの間にか友加里の腕をしっかり押さえつけている。
 ちゅ、ちゅ、と、殊更リップ音を響かせて、刻哉は友加里の乳首に吸い付いた。
「んっ、あぁっ! だめ、あっ、変な感じになる……っ」
 いやいやと首を横に振るが、刻哉は気にも留めない。小鳥のように何度も啄み、唇をすぼめて吸い付き、舌で舐め回す。
 刻哉の口の中で、飴玉のように転がされる乳首。その感覚はゾクゾクすると同時に、あらがえないほど気持ちがよくて、気が緩めば途端に蕩けてしまいそう。
 生温かい息が敏感になった乳首にかかる。それだけで友加里はびくびくと体を震わせた。
「きもち、い……から、だめえ……」
 涙声で訴えると、ようやく刻哉が動いた。乳首を舐めながら、目線だけを上に向ける。
「こちらは気持ちよくさせているのだから、嫌がる必要はないでしょう」
「ダメよ。だって……んんっ、変になってしまいそうなんだもの!」
 快感に体を反応させながら、友加里は必死に言う。だが、刻哉は鼻で軽く笑って愛撫を続けた。
「変になる? なってみればいい。そういう友加里も見てみたい」
「嫌よ! だって……あンっ!」
 一際じゅっと強く乳首を吸われ、友加里は言葉の途中で体をくねらせた。
「気持ちいいんでしょう?」
 唾液で濡れそぼった乳首を摘み、こよりを作るように擦りながら、彼が訊ねる。
「ん……それは、そう……だけど」
 快感が強すぎて、ぐったりしてしまった友加里は蕩けるような声で答える。
「俺も、もっと友加里を気持ちよくしたい。だから、邪魔なものを全部取りますよ」
「取る……?」
 次は何を言ってるんだろう……と思っていたら、刻哉は友加里が脱力しているのをいいことに、ぷちぷちと友加里の白シャツのボタンを外して脱がせ、ブラも取り払ってしまう。
「あっ、ダメ、脱がせないで」
「やりづらいから嫌だ」
 はっきり断られた。なんとも理不尽なやりとりだと友加里は心の隅で思う。
 刻哉は友加里のスカートのホックも外して、ストッキングごとするすると脱がしてしまった。
「酷い……本当に人の話を聞いてくれない……。自分は服着てるくせに……」
 好き勝手されてさすがに友加里は不満げに刻哉を睨んだ。すると彼は勝ち気な笑みで挑発するように言う。
「じゃあ友加里が脱がしてくれますか?」
「ぬ、脱がさないわよ!」
「ああ言えばこう言う……まったく我が儘だな」
 友加里は思いっきり不満顔をした。
(何て言い草よ! 何ていうか現状、被害者は私よね? なんでこの人、こんなに偉そうなの!? 信じられない!)
 思えばこの二十八年、色々と苦節はあったが、こんなにも物事が思った通りにいかなかった日はなかった気がする。
 あまりに友加里がむくれているからだろうか。刻哉は何だか困ったような顔をした。
「仕方ない……何に怒っているのかはよくわからないですが」
 そう言いながら、刻哉は自分のシャツを脱ぎ放ち、下に着ていた薄地のTシャツを乱雑な仕草で脱ぎ放つ。
「これでいいですか?」
「う~ん……」
 良いか悪いかでいえば、良いのだろうか。確かに平等な感じは出たかもしれない。
 だが、友加里が答えあぐねている間に、刻哉は友加里を抱きしめてしまった。
「ああ、温かい」
「……うん」
 これはどういう状況なのだろう、と友加里は心の隅で考える。
 まったくもって不本意な愛撫をされているというのに、安心しきった刻哉の声を聞くと、何だかこちらの心も安らいでしまう。
「友加里」
 名を呼ばれて顔を上げたら、唇にキスをされた。
 ……三回目。何となく数を数えてしまう。しかし口腔に彼のぬめった舌が入り込んできた途端、友加里はビクンと体を揺らした。
「んんっ!?」
 目を白黒させながら、友加里はあわあわと手を戦慄かせる。
(舌が、し、舌が入ってる。口の中に! ど、どうして!?)
 性の知識が教科書止まりの友加里は、何が何だかさっぱりわからない。刻哉はそんな友加里を落ち着かせるように抱きしめ、肩を優しく撫でる。
「ここも愛撫できるところですよ。口をちゃんと開けて」
 唇を少し離して、そんなことを言ってくる。ぜんぜん理解できないが愛撫にも種類があるのかと納得した友加里は少し口を開いた。
 刻哉はもう一度、ゆっくりと唇を合わせた。
 再び舌が入り込んできて、友加里は緊張にぐっと拳を握りしめてしまう。
 彼の舌は巧みに動いて、奥に縮こまっていた友加里の舌を絡め取った。そして舌の先でくすぐるように歯列を舐めたり、舌を擦り合わせたりする。
「んっ、ふ、……ンっ」
 鼻で呼吸するのが精一杯で、友加里はぎゅっと目を瞑って彼の愛撫を感じる。
(気持ち、いい……けど……)
 不思議と気持ちが昂ぶってくる。体が熱くて、火照ってしまう。
 くらくらと目眩を感じて、体に力が入らない。
 濃厚すぎる愛撫にあてられてしまったのか、友加里の体はぐったりし始めた。
 刻哉は友加里と濃厚な口づけをしながら少し体を起こし、指先で乳首を弄ぶ。
 舌と乳首。複数の性感帯を弄られ、びくびくと友加里の体が震える。
「んんっ、あぁ……っ」
 どうしたらいいかわからない。でも、気持ちいい。
 何も考えられない。倫理観、常識、本来考えなければいけない事が、ぼろぼろと頭から剥がれていく。
(何も考えず、ただ刻哉さんに任せていたら……もっと気持ちよくなるのかな)
 うっすらと考えたそれは、ひどく魅力的に思えた。
 気持ちいいし、話は聞いてくれないけれど刻哉は悪い人ではないし、別に犯罪行為でもない。確かに友加里はこの行為を許可したつもりはなかったが、ここまでされたら同意したようなものだろう。
「はあ……っ、刻哉……ン……」
 名を呼べば答えるようにキスをされ、舌でまぐわい、乳房を揉みしだかれる。
 身体中愛撫されて、まるで刻哉の体に包まれているみたい。
 それは何だか幸せのような気がした。
 思えば友加里は、誰かに抱きしめられた記憶がほとんど無い。物心ついた頃にはすでに母は急逝しており、父は仕事が忙しくて、抱擁どころか会うことも少なかった。
 小学生の頃は家政婦が世話をしてくれたが、当然抱きしめてはくれない。中学から寮生活が始まり、大学は研究したい学部の関係から地方を選び、ずっとマンションで一人暮らしだった。
 刻哉に愛撫されて気付く。自分はこんなにも、人の肌の温かさを知らなかったのだと。
 そう自覚したら、途端に寂しくなった。
 きゅっと心の奥が絞られるような痛みを感じる。
「ん……っ、私……私は……っ」
 どうしたらいいんだろう、と友加里は考える。気持ちがいい。ずっと感じていたい。このまま刻哉の腕に抱かれたい。
(今は……それで、いいのかな……)
 これまでの人生で、思ってもいなかった気持ちが芽生える。それは『甘えていいのかな』という考えだった。
 刻哉なら、今だけなら、甘えてもいい。上司とか部下とか一切考えないで、彼の家柄も自分の家柄も除去して、ただの男と女として今という時の快感に全てを任せられたら――。
 ぼやける頭でそんなことを考えていたら、刻哉の手がふいに動いた。
 胸からするすると下に降りて、腹に。そして……更にその下に。
 刻哉の指が友加里のショーツをずらした。そして……何か固いものが当たって――。
 その瞬間、友加里の頭は一瞬でクリアになって、目を見開いた。
「だ、だめえ!」
 慌てて大声で制止する。身を起こすと、今まさに刻哉が、自分の性器を持って友加里の中に挿入しようとするところだった。
 まさに我に返った、という表現が正しい。そんな友加里の形相を見た刻哉はあろうことか「チッ」と舌打ちをする。
「まだ堕ちきっていなかったか」
「どどどどういう意味よ! あと舌打ちしないで!」
「今の舌打ちは、俺の失態に対するものであって、友加里に対するものではありません」
「どっちでも嫌よ! し、失態ってどういうこと!?」
「もっと頭ん中バカになるくらい愛撫して、よくわからん状態にして、ウヤムヤのうちにヤればよかったのに、つい焦ってしまいました。これが失態でなくて何なんですかね」
「酷っ! そんな酷いこと考えてたなんて信じられない! と、とにかく、ダメ。それはダメだからね!」
 友加里は必死に訴えた。それだけは何としても阻止しなければならない。
「ここまで許しておいて? それは生殺しじゃないですか」
「うっ……そうかもしれないけど、でも……ダメよ」
 ぎゅ、と自分の手を握りしめて、友加里は真剣に言う。
 性の知識に疎くても『その行為』がセックスなのは理解している。
 そして、セックスは簡単にやっていいものではないのだ。特に今みたいに、場と雰囲気に流されているような状況ではいけない。
 友加里の真剣な気持ちが伝わったのか、刻哉の動きが止まった。
 そして、かしかしと面倒くさそうに頭を掻く。
「わかりましたよ。そんなに嫌なら諦めます。……今回は――」
「今回は?」
 不穏な一言をスルーできずに、友加里は問いかける。だが刻哉は何も答えなかった。
「代わりと言ってはなんですが、それなら別の方法でイかせますね」
「へ?」

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