
元令嬢メイドは、執愛系王太子から不埒な契約で一途に迫られる
著者:紺乃藍
イラスト:yuiNa
発売日:2025年 7月25日
定価:630円+税
マーランド元侯爵家の長女・メリッサは、2年前に国王暗殺計画の首謀者として捕らえられてしまった父の冤罪を晴らすため、現在、王宮に使用人として潜入していた。
夜な夜な図書館で調査をしていたある日、ついに王宮の人間に見つかってしまう――!?
しかも声をかけてきたのは、父が捕まったことにより婚約を解消した王太子のルシアンで……?
逃げようとしたメリッサを優しく抱きしめ、ここにいる理由を尋ねるルシアンだったが、彼女は彼を巻き込みたくないあまり口を閉ざしてしまう。
その様子を見たルシアンが、メリッサに〝罰〟を与えると言い出した――!!
「ああ、そうだ。君はここを撫でられるのが好きだったな」
ルシアンから与えられる淫らで甘い〝罰〟にメリッサの身体は反応して――!?
【人物紹介】
メリッサ=マーランド
元は侯爵家だったマーランド家の令嬢。
王太子であるルシアンの元婚約者。
父の疑いを晴らすため、王宮に潜入していたのだが――?
ルシアン=イゼリアス
イゼリアス王国の王太子。
基本的には穏やかで優しい王子だが、メリッサへの執着心が強い。
彼女のこととなると暴走してしまう一面もあるようで……?
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【試し読み】
「だんまりか」
頑なに口を閉ざす様子からメリッサの考えを悟ったらしい。これ以上問い詰めても自分の思うようにはならないと気づいたらしく、腕に込めた力をそっと緩めてくれる。
だからこれで解放されると安心しかけたのに。
「わかった。君がそのつもりなら、俺にも考えがある」
「!? で、殿下……っ! 何を……っ!?」
ルシアンのぬくもりがスッと離れたことを寂しく思う間もなく、ふわりと身体が浮く。足の裏から床の感覚が遠ざかって焦るメリッサだったが、すぐにもっと焦らなくてはいけない状況に陥った。
浮遊感と同時に視界がひっくり返った直後、背中が固い板へ打ちつけられる。実際にはそれほど強い衝撃ではなかったが、板の上に――数人で使用できるほど大きなテーブルの上に身体を押し倒されたと気づくと、身体よりも心臓に強い衝撃を味わった。
「今から君に、罰を与える」
「!?」
ルシアンの手が動き出したことで、彼が『何を』しようとしているのか気づいてしまう。だからすぐに強い力と声で抗議する。
「管理者不在中に王宮図書館を利用したことでしたら、謝罪いたします! もちろんこうして王都にいることも……!」
「そんなことはどうだっていい」
裾が捲れて脚が露出する可能性にも構わず、ばたばたと手足を動かして抵抗する。だがふとルシアンの顔を見上げたことで、彼の瞳にこれまで一度も見たことがないほどの冷たさが宿っていることに気がつく。目が合った瞬間、ぞわりと恐怖を覚えるほどに。
「俺の意思も聞かずに婚約解消を受け入れた罰。俺の傍を離れた罰。……今も俺に隠し事をしている罰、だ」
ルシアンが羅列した『理由』の数々に目を見開く。
確かにルシアンが口にしたメリッサの行動は、彼を傷つける原因となったのだろう。だが状況を考えればどれも仕方がないこと。メリッサ自身にはどうにもできないことばかりで、それを理由に罰を与えられるのは不条理としか言いようがない。
しかしメリッサは、何よりも『罰の内容』が不条理だと思うのだ。
「殿下……!」
ルシアンの大きな手が腰と太腿を撫で始める。その手つきと指遣いがやけに艶めかしくて――メリッサが必死に封印した蜜情の記憶を強制的に呼び戻そうとする動きに思えて、思わず大きな声を出す。
その一言を聞いたルシアンがまた不服そうに眉根を寄せて……ふ、と表情を緩めた。
「大きな声を出せば、人が来るかもしれないぞ」
ルシアンが示唆する可能性に、今度は身体が強張る。彼を制止するために大きな声を出せば、メリッサだけではなくルシアンまで危険な状況に陥るかもしれない、とほのめかされたからだ。
「俺と抱き合っている姿を誰かに見られたいと言うのなら、話は別だが」
「そんな……っ」
メリッサがよく知る優しい笑顔と、なぜか楽しそうな口調。そしてメリッサの焦燥感を煽るような台詞にひたすら困惑するが、抗議の言葉を発する直前でルシアンに唇を塞がれてしまった。
「ん……ぅ」
触れ合ったルシアンの唇の温度と感触を、自身の唇で感じ取る。食むようにゆっくりと動く柔らかな感覚に誘われ、身体にじわりと熱が帯びる。
「だめ、ルシ……んむ……っふ」
腕に力を込めてルシアンの身体を押し返そうとするのに、上からのしかかられているせいか上手く力が入らない。胸を押しても、彼の服を掴んで引っ張っても、強引なキスは止むどころかさらに深くなっていく。
「んっ……んん……ん」
歯列に空いたわずかな隙間から舌を捻じ込まれて、口内を弄られる。ねっとりと動く舌の感触に背中がぞくぞくと震えるが、反応を示すのは肌の表面だけで、指先からはどんどん力が抜けていく。
熱い塊に舌の輪郭や尖端を辿られ、口の中に混ざり合った唾液が満ちていく。舌同士が絡まってくちゅっと濡れた音がすると、今度はその蜜を啜られる。ただの口づけに留まらない恥ずかしい行為ばかり繰り返されて、メリッサはただ混乱するしかない。
「ぁ……だ、だめです……!」
メリッサの表情を確認しようとしたのだろう。ふいにルシアンの唇が離れたので、その隙に制止の声をかける。
「いけません、ルシアン殿下……!」
制止の台詞と共に、互いの身体の間から引き抜いた手を伸ばしてルシアンの唇を覆い隠す。さらに抗議のつもりでルシアンを睨んでみるが、至近距離で見つめ合ったことで、彼が傷ついたような表情をしていることに気づく。
だがルシアンが不満を覚えたのは、メリッサの拒否の台詞そのものではなかったらしい。
「殿下、か……。公の場では、いつもそう呼ばれていたな」
憮然とした口調で告げられ、何の話かと身構える。
「けど二人きりのときは違った。……そうだろう、メリッサ?」
「……っ……ルシアン、さま」
悲しげな表情と寂しそうな声に誘惑されたように、以前と同じ呼び方が唇から零れ落ちる。それはすべての民に愛される『王太子殿下』を敬うための呼称ではなく、一人の男性『ルシアン』を慕う呼び方。あくまで個人的に、他に誰もいない――二人きりのときだけに使う呼び方だ。
ようやく昔の呼び方に戻ったことに安堵したらしい。ルシアンがそっと表情を緩めて、再び唇を重ねてくる。
「ん、んぅ……」
今度は先ほどのような強引さはなく、丁寧に愛おしむように唇を啄まれる。
昔と同じ甘やかな触れ合いが嬉しい。だが絆されてはいけない。使用人の制服の上から包み込むように胸に触れられ、そのままそこへ力を込められることを許容してはいけない。
「だめです……そこは……!」
胸を揉まれる感覚で我に返り、再び拒否の声をあげる。口づけだけでも十分驚いているのに、ルシアンはさらにその先の行為にまで及ぼうとしているようだ。
「ああ、そうだ。君はここを撫でられるのが好きだったな」
確認するようなルシアンの台詞にびくっと身体が強張る。
――知られている。メリッサの感じるところも、触られて気持ちがいいところも、彼にはすべてお見通しだ。
それもそのはず。メリッサとルシアンは二年前に――メリッサが十八歳の誕生日を迎えてすぐの頃に、すでに身体を繋げている。
メリッサはずっと『結婚式を挙げて正式な夫婦となり初夜を迎えるまでは、一線を越えるべきではない』と主張し続けていた。頭が固い自覚はあったが、たとえ夫となる人が相手であっても、婚姻の誓いを立てるまでは清らかな身でいなければならない、と考えていたのだ。
だがメリッサが成人を迎えた頃から、独占欲と執着心が人一倍強いルシアンが、メリッサに近づく同じ年頃の貴族令息たちを牽制するようになった。触れるどころか挨拶程度の会話でも相手を鋭く睨むので、剣呑な態度を改めて威嚇を抑えるようルシアンに求めると、代わりに自身の情熱を受け入れてほしいと切望されたのだ。
メリッサは悩みに悩んだが、結局二人だけの秘密にしようと誓い合ってルシアンを受け入れた。しかし二人の想いが一致していたためか、それとも単純に身体の相性が良かったのか、最初の交わりのときからひたすら気持ち良かった。その後もいけないことをしている背徳感と緊張感を覚えつつ、会うたびに身体を重ねてきた。
だからルシアンは知っているのだ。メリッサの感じる場所のすべてを。どこに触れられることが好きなのかも、全部。
「ひぁ、あっ……あ……」
胸を揉みしだく手の動きが次第に大胆になっていく。ドレスを着用するときと違い使用人の制服は下着に固いコルセットを仕込まないので、ルシアンの手の力も、指先が布を滑る動きも、彼の手の温度さえも敏感に感じ取る。
「ゃぁ……あ……ん、ん……」
忘れていた熱を思い出したように、ルシアンの指遣いと挑発の台詞に反応して全身が喜んでいるように、胸を中心に身体が小刻みに震え出す。
こんな姿は見られたくないのに……この恥ずかしい姿をじっと見つめないでほしいのに、メリッサの秘めた感情を暴くよう、ルシアンの手がさらに大胆な動きに変わっていく。
「んゃ、ぁっ……ん!」
存在を主張するように固く張り詰め始めたせいか、服の上から乳蕾を探り当てられる。ルシアンの細長く骨張った指先が先端をきゅう、と摘まんだ瞬間、喉から高い声が零れた。
「気持ちいいか?」
メリッサの反応に気を良くしたのか、今度は両手で胸を掴まれ尖端を捏ね回される。
(だめ……そこ、触られたら……!)
久しぶりの強い刺激から逃れようと身を捩るが、ルシアンの手の動きはどんどん大胆になっていく。右手で先端を摘まみながら左手で激しく胸を揉まれたり、右手で乳房を柔らかく撫でながら左手で乳首をスリスリと擦られたり。
「ふぅ……ふ――っ、ぅ……ん」
人の往来が少ない時間や場所とはいえ、ここは図書館……公共の場だ。こんなところで押し倒されて胸を揉まれて感じるなど、淑女にあるまじきはしたなさである。いくら没落した元貴族令嬢であり、現在は平民になった身とはいえ、メリッサに残された理性がみだらな行為を許さない。
それにここで流されたら後悔することになる。ルシアンの戯れを許したら、あとでもっと辛い気持ちを味わうことになるとわかっているのに。
「言う気になったか? メリッサ」
メリッサの葛藤に気づいていないのか、ルシアンは手の動きを一切止めてくれない。それどころか快楽を増幅させて正常な思考を奪うことで自分のほしい情報を引き出そうとしている節すらあり、合間にさり気なく質問を挟まれる。
「ん、んん……!」
ルシアンの甘やかな尋問に負けそうになりながら、それでもどうにか首を振る。メリッサがここにいる理由を打ち明けたところでルシアンは幸せにならない。むしろメリッサの答えがルシアンを苦しめてしまう可能性だってあるのだ。
「強情だな」
しかしルシアンはそんなメリッサの態度が不満だったらしい。ムッとしたように一言だけ呟くと、胸を揉む手を一旦引っ込めてテーブルの上に身を起こす。
「それなら、これは?」
ただし身体の上から完全に退けてくれるわけではない。メリッサの腰の上に跨る体勢は変えず、制服の裾をがばっと捲ると、ドロワーズの結び目を解かれる。
「え……やっ……! な、何を……!?」
突然の行動に驚いて身体を起こそうとするが、やはりルシアンは許してくれない。浮きかけたメリッサの背中をテーブルの上に押し戻しながら、靴と一緒にドロワーズと下着まで一気にするんと脱がされてしまう。
「ま……まって……!」
左脚をテーブルに押さえつけ、右の太腿だけを持ち上げて股を左右へ開かれる。恥部を見られて焦ったメリッサは慌てて太腿を閉じようとしたが、自分の指を自分で舐めて濡らしたルシアンが秘めた中央に触れる方が、少しだけ早かった。
「あっ……やっ……!」
中央のぬかるみを下から上へなぞられ、さらにその上にある蜜芽にも触れられる。敏感な場所を撫でられた刺激の強さで身体がびくんと飛び跳ねたが、メリッサが悶える姿を見てもルシアンの指の動きは止まらない。
「ふぁ、あっ……んっ――」
花弁の外側をゆるりと撫でられ、膨らんだ秘芽を爪の先で軽く弾かれる。メリッサの感じる部分はすべて把握しているが、そこに大きな快感は与えないように……弱い刺激だけを与えていたぶるように、執拗に同じ動きばかりを繰り返される。
「ふあぁ……ぅ……ん」
しっとりと濡れた秘部を撫でられているのに、花弁の内側には絶対に触れず、さらに陰核にも決定的な刺激は与えられない。ルシアンが抱えて固定しているのは右脚だけなのだから、空いた左脚を使って必死に抵抗すれば逃げられるかもしれないのに、そうすることもできない。とはいえ彼が飽きるまでこのみだらな戯れに耐え続けられる気もしない。
「我慢強くて義理堅いところは、君の美点だな」
混乱と快楽の渦中でぐるぐると考え込んでいると、ルシアンがぽつりと呟いた。乱れて整わない呼吸のまま視線を上げ、再び彼と見つめ合う。
「けどここで逃してそのまま雲隠れでもされたら、俺のほうがたまらない」
「あっ……あ、あぁ……っ」
「言っておくが、君が白状するまで止めるつもりはない。誰かに見つかる前に洗いざらい吐いたほうが、楽になれると思うぞ」
再び動き出した指が同じ刺激を与え始める。またこのゆるい快感に耐えなければならない、と覚悟したメリッサだったが、秘部に感じたのは先ほどとは異なる刺激だった。
「ふぁあっ……!?」
これまでゆるゆると撫でられていた場所とは違う――それよりもっと深い場所にルシアンの指の形と温度を感じ取る。
(うそ……指、入って……)
蜜口に彼の中指が挿入されたことに気づくまで、ほんの少し時間がかかった。だが忘れていただけで、知らないわけではない。ルシアンの指遣いを突然思い出したように、蜜壁がひくひくと収縮する。まるで待ち望んでいたかのように、奥がきゅうぅと疼き始める。
ルシアンもメリッサの反応を察知したに違いない。静かに少しずつではあったが、内壁を擦るように指が抜き挿しされる。
「ん……んぅ――ン、ん……」
先ほどまでとは異なる感覚が、下腹部の中央から首の後ろへぞくぞくっと駆け抜ける。ただ表面を撫でられるだけでなく、恥ずかしい場所を拡げて慣らされることで、過去に与えられた快楽を思い出すよう命令されている気分になる。
「やぁ、あっ……あっ……ん」
ルシアンの長い中指が蜜壺の中を自由に動き回るようになると、指を二本に増やされる。もう二年も触れ合っていなかったはずなのに、メリッサの秘部は彼の指をすんなりと受け入れ、さらにもっと大きな存在まで欲し始めている。
最初は距離を取るべきだと思っていたのに。彼に触れられてはいけないと思っていたはずなのに。
「身体は、変わっていないな」
メリッサの反応を見下ろしていたルシアンが、ふと指の動きを止めて呟く。その一言が互いが互いを知り尽くしている証明のようにも、二人が離れ離れになっていた時間の長さを示すようにも感じられるが、素直に頷くのもまた恥ずかしい。
「もう、成長は……止まりましたから……」
「そういう意味じゃない」
だからルシアンの指摘を誤魔化そうとしたメリッサだったが、彼にはそっと苦笑されてしまう。きっと照れて恥ずかしがるメリッサの心情も理解しているのだろう。ふいっとそっぽを向く姿さえ懐かしんで愛おしむように、柔らかな笑顔を向けられる。
「俺の指に吸い付くココと、俺が触れると敏感に反応する感度の良さが変わっていない……という意味だ」
「っ……!」
耳の傍に顔を近づけてわざと掠れた声で語られたので、また身体がびくりと強張る。メリッサの官能を呼び起こしてさらなる快感を与えようとするルシアンに、そういえばこういう意地悪をする人だった、と心でも身体でも思い出してしまう。
恥ずかしい一言に反応して蜜孔がきゅうきゅうと収縮すると、ルシアンの指がまた前後に動き始めた。
「ひぁ、ぁん……ああっ」
今度は二本の指をばらばらに動かし、蜜口の上部を交互に押される。メリッサの弱い場所を的確に狙ってくるみだらな愛撫に負けて、喉の奥からか細い声が溢れてくる。
「声も変わっていない。この甘えるような啼き方も、俺だけのものだ」
メリッサの感じる姿を見て嬉しそうに微笑むルシアンに、ふるふると首を振る。
恥ずかしい言葉ばかりかけないで。甘い記憶を呼び戻そうとしないで。――そう訴えたくて必死に首を振るのに、ルシアンには伝わらなかったようだ。あるいはちゃんと伝わっているのに、気づかないフリをしたのかもしれない。
「メリッサ……」
「あ……まって……」
指を抜いたルシアンに艶を含んだ声に名前を呼ばれたことで、メリッサの身体の準備が整ってしまったことを知る。二年も触れ合っていないのだからもっと時間がかかると思っていた。否、どんなに時間をかけても受け入れることはできないと思っていた。
だがメリッサの身体はルシアンの熱を簡単に思い出した。あっという間に彼の指先に慣らされて、『こんなことをしてはいけない』という気持ちを砕かれて、その気にさせられている。本心では彼を受け入れたがっていることを暴かれてしまう。
見つめ合うだけで蜜口がひくりと収縮する。下腹部の奥が切なく疼いて、心音も加速する。触れ合った肌が急速に熱く火照っていく。
「久々だからな……そう長くは持たないかもしれない」
ぽつりと呟いて笑うルシアンの表情にまたどきりと心臓が跳ねる。しかし指を抜かれて切なくヒクつく蜜口に雄棒の先端を押し当てられると、ときめいている余裕すらなくなる。
ちゅく、と濡れた音が聞こえた直後、太くて硬い塊が下腹部を貫いた。
「ああぁっ……んぅっ……!」
「っ……」
硬い鉄の塊を秘部に捻じ込まれたように錯覚して、悲鳴に近い声をあげる。十分に慣らされていたとはいえ彼を受け入れるのは二年ぶりだ。熱い陰茎の圧迫感に恐怖を覚えて、思わず身体に力が入る。
メリッサの身体はもうルシアンの熱を忘れている。身体だけじゃない。仲睦まじい婚約者だった頃の日々も、二人で重ねた思い出も、ルシアンに対する恋心も、メリッサはすべて忘れたはずだ。
だからこれ以上は不可能だ。気持ち良くなんてなれないし、ルシアンを気持ち良くすることもできない。――そう思っていたのに。
「やぁ……あんっ……」
一気に半分ほどまで挿入したところでメリッサが強く力んだので、ルシアンも一度動きを止めてくれた。そこから力を抜けず、お互いに気持ち良くなれないと判断したのなら、彼も諦めて抜いてくれるはず。ところが呼吸を整えたルシアンはメリッサの中から自身を引き抜くどころか、少しずつ奥へと腰を突き入れてくる。
(嘘……どうして……)
身体は当然のように拒否反応を示すと思っていた。なのにどういうわけか、その先も少しずつ受け入れ始める。ルシアンの挿入を導くように……熱くて硬い存在を迎え入れるように、蜜孔が陰茎を呑み込んでいく。
尖端が最奥に辿り着くと、ルシアンが大きく息をついて顔を覗き込んできた。もしメリッサが苦しんでいたり嫌がっていたりしたら、ここで中断してくれるつもりだったのかもしれない。だがメリッサの様子を見たルシアンは、ふ、と表情を綻ばせるだけ。
「メリッサ……」
「あぁ……ふぁ、あ……」
そのままゆっくりと腰を引かれると、背中がざわめいて蜜壺が収縮する。太い陰茎が内壁をぞりぞりと擦る感覚は、久々なのに気持ちいい。
「ふぁ、あぁっん……!」
「っ……」
腰を引ききると再び陰茎を埋められる。今度は少し勢いをつけて最奥を突かれ、その激しさに腰が浮いてしまう。
「あっ……はぁ……あっ」
「メリッサ……どうだ?」
「あぁ……あんっ……るしあ、ん……さま……ぁ」
メリッサの表情を確認しながら、腰を前後に揺らされる。動きはメリッサを気遣うようにゆったりとしているが、時折勢いをつけて急に奥を突かれるので、そのたびに身体がビクンッと激しく飛び跳ねる。
この攻め方もメリッサがよく知るものと同じ。ルシアンの性格がよく出ていると思う。基本は優しく穏やかなのに、たまにメリッサを揶揄うように意地悪をされる。メリッサが驚いたり怒ったり照れたりする反応すら、味わって堪能するように。
(せっかく、忘れたのに……)
剛直に内壁を擦られて奥を突かれるたびに思い出す。
彼の呼吸や息遣い、温度やキスの長さ、抱きしめるときの力強さや見つめ合うとすぐに嬉しそうにはにかむ笑い方。そしてメリッサの様子を確認するときの声と表情、愛でるような撫で方、緩急をつけた腰遣い、彼の形と太さと固さと温度まで。
(身体が、思い出してる……!)


