
意地悪エリート同期に触れられたらイッちゃいます!? ~淫らな身体なのに愛でられて我慢の限界です~
著者:本郷アキ
イラスト:藤浪まり
発売日:2025年 4月18日
定価:630円+税
料理下手な不器用彼女・ココちゃんと、料理上手な溺愛彼氏・ヒサくんがイチャイチャしながら料理を作る人気配信番組『ココが作ってみた!』はクッキングパークの大人気企画。
ココちゃんを演じている企画部の仲嶺香子は、ヒサくんを演じている同僚の榊尚司に密かに恋心を抱いている。
ある日、香子のことをやっかんでいた後輩社員から、今までのお詫びと称してボディークリームをプレゼントされたのだが――?
その日から尚司に触れられると『強制絶頂』してしまうという体になってしまって!?
この状況を悟られないよう、尚司を避けるようになった香子だったが、尚司は香子を追いかけてきて……。
「離したくない。お前が好きだ……香子が、好きなんだ。どうして俺を避ける? 俺、お前になにか嫌われるようなことをしたか?」
香子の異変をきっかけに、2人は両想いだということが判明!
――しかし、尚司に触れられると絶頂してしまうという状態は治らなくて……。
【人物紹介】
仲嶺香子(なかみね こうこ)
料理系コンテンツを手掛ける大手企業『クッキングパーク』の企画部で働く28歳。
明るく快活な性格をしており、可愛らしい女性。
動画企画内では料理下手なココちゃんを演じているが、実際のところ不器用なため演技ではない部分も。
榊尚司(さかき ひさし)
香子の同期で同じく企画部に務める28歳。
容姿端麗で仕事もできるため、非常にモテる。
動画内では料理上手なヒサくんを演じており、甘々なヒサくんとは違い現実では香子にはちょっと意地悪なところも……?
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【試し読み】
妙にすっきりと目が覚めた。身体の倦怠感もなく、寝不足による頭の重さもない。それもそのはずで、窓から差し込む太陽の日射しはすでに明るい。
今何時だ、と慌てて時計を見て、いつもの場所に置き時計がないことに気づく。というか、ここは自分の部屋ではない。
隣には、すやすやと眠っているよく知る男の顔。倒れた香子を彼が介抱してくれたのか。今日が休みであることに胸を撫で下ろして、身体の違和感に気づいた。
「え……」
どうしてか肌に触れる下着が心許ない。身体を起こして毛布を捲って見ると、香子はやたらと大きいTシャツを身につけているだけで、下着すら穿いていなかった。
ベッドの周りを見ても、自分の服はない。そこまで考えて、香子は真っ赤に頬を染める。
(榊が脱がしたってこと? パンツとかタイツとか気づかれたんじゃ……っ!?)
彼となにかがあったわけではないだろう。さすがにセックス中にぐっすり眠っていられるとは思えないし、今の香子は触れられるだけで達してしまうのだ。彼に抱かれたらどうなるのかなんて想像もしたくなかった。
(あれ……そういえば、榊、昨日なにか言ってた気がするんだけど……なんだっけ?)
考えても思い出せず、香子は現実逃避気味に尚司の部屋を見回した。
寝室は八畳ほどの洋室だ。ダブルベッドが窓際に置かれ、窓の反対側には大きめのクローゼット、その脇にデスクがある。
どう見ても安アパートという造りではないから分譲マンションなのかもしれない。
クッキングパークは大手だし銀行の融資も通りやすいと聞く。二十代でも、家賃をずっと払い続けるよりはと、分譲マンションを購入する人も珍しくはない。
そんなことを考えていると、隣で眠る尚司が身動いだ。
「ん……」
長いまつげが揺れて、ゆっくりとまぶたが開いた。香子がすでに起きているとわかったのか、彼はうっすらと笑みを浮かべて手を伸ばしてきた。
「……っ」
触られたらまずいという本能のままに、香子はそれを瞬時に躱した。
すると、彼の機嫌が一気に低下し、穏やかな目元がきつく細められる。怒られようが笑われようがこれ以上の痴態を見せるわけにはいかない。もう遅いかもしれないが。
「おい」
「ごめん! 謝るからとりあえず私に触らないで!」
香子は両腕を伸ばし、首をぶんぶんと横に振った。その必死さが伝わったのか、なにか事情があると察したのか、彼は上げた手を下ろし、嘆息する。
「あの、私の服は……」
「あ~あれは、着たまま寝るとベッドが困ることになりそうだったから洗った。乾燥機にかけたから、そろそろ乾くかもな」
彼は口ごもりながら言った。その反応だけで、自分のタイツやら下着の状態に気づかれていたとわかり、死にたいくらいの恥ずかしさで涙が滲む。
彼は香子が粗相をしたとでも思ったかもしれない。二十八歳にもなって漏らす女だと知り、揶揄う気も失せているのだろう。
「で、なんで俺を避けていた? ちゃんと理由を聞かせろよ。お前、俺が好きだっただろうが。それなのに三日前から急によそよそしくなった」
「はっ?」
一瞬、尚司が言っていることの意味がわからず、目を瞬かせてしまう。すると彼は、ふてくされているかのように香子を見据えた。
「なんだよ」
「なんで、知ってるの」
自分の気持ちを告白しているはずなのに、恋愛話をしているとは思えない妙な雰囲気だ。そういえば昨夜、彼に好きだと言われたような。それをうっすら思い出し、胸の鼓動が徐々に早くなっていく。
「なんでってお前……あれで気づかれてないと思ってんの? 俺がココちゃんって揶揄うたびに真っ赤になってたくせに。お前が俺を好きなのなんて、広報部の常識だろうが」
「なん、なん、なんでっ」
思わず、身体ごと前のめりになり、慌てて距離を取る。それが気に食わなかったのか、尚司がずいっと顔を近づけてきた。
「昨日言っただろう、香子が好きだって。触らないでって悲鳴を上げられて、お前に避けられて、すっげぇしんどかったんだぞ? 揶揄い過ぎて嫌われたのかと思ったんだ。だから昨日、謝ろうと思って帰るお前を追いかけた」
尚司は香子を揶揄うとき、いつも香子を「ココちゃん」と呼ぶ。だが、昨日もそして今も、彼は香子を名前で呼んだ。揶揄っているわけではないと示すために。
「またいつもの、冗談じゃなくて?」
「わかってるだろ。俺が真剣に話してるって。ココちゃんのお前も好きだけどな。俺を好きだって言ってるのが顔に出てて可愛いから。でも、素直に好きだって言えない恥ずかしがり屋の香子が、俺は好きなんだよ」
尚司の顔が近づいてきて、瞼に口づけられた。思わず身体を硬くするが、異変はやってこない。深く息を吐き身体の力を抜くと、彼の手が肩に回り、引き寄せられる。すると。
「……ん、あぁっ……触っちゃ、だめぇっ」
彼の腕の中で全身が小さく震えた。思わず足をぎゅっと閉じるが、とろりと溢れる愛液が股を濡らしてしまう。
「お前……それ、どういうことだ?」
彼はようやく香子の異変に気づいたのだろう。肩に回した手をゆっくりと下ろし、マジマジと香子を見つめた。
「はぁ、はぁ……っ、だから、触らないでって、言ったのに」
香子は肩で息をしながら、ベッドに身を沈ませる。掠れた声で「お願いだから触らないで」と言えば、彼は神妙な顔をして頷いた。
「よくわからんが、俺を避けなければならない原因があったんだな?」
そう聞かれて、香子は息を整えながらゆっくりと頷いた。黙っておけるはずがないし、自分一人で抱え込むにはもう限界だった。
彼に触れられて達してしまうなら、彼に協力を仰ぐほかない。
「原因は……わからないの。三日くらい前から、榊に触られると、あの……」
香子が頬を染めて視線を落とすと、彼が言葉を引き継いだ。
「もしかして、俺に触られると、達っちゃう……とか?」
まさかそんなことあるわけがないよな、冗談だよな、尚司はそう言いたげな顔をした。だが、香子が目を潤ませて頷くと、信じられないと言わんばかりに目を見開く。
「……本当に?」
「うん……さっきのは、平気だったけど……肩とかはだめみたい」
「さっきって、キス?」
「うん」
「もう一回、してみていい?」
尚司が身体を寄せてくる。けれど、香子には触れないように慎重に顔だけを近づけてくれているのがわかり、がちがちに強張った肩からほんの少し力が抜けた。
「ほかのところは、絶対、触らないでね」
「わかった」
尚司は目を細めて、確かめるようにもう一度瞼に口づけた。そして、ゆっくりと頬へ、反対側の頬へと口を動かしていく。
「身体は?」
「へ、いき」
尚司は一度身体を離し、よかったと安心したように言いながら、なにかを考えるように顎に手を当てた。
絶頂の衝撃ですっかり忘れていたけれど、さっきのが尚司とする初めてのキスなのだ。できるなら、もう少し感慨深い思いでしたかった。
これで終わりなのかと、離れていく尚司の唇をつい名残惜しげに見てしまう。すると彼と目が合った。尚司も物足りなそうな顔をしているように見えるのは気のせいだろうか。
「なぁ……もうちょっと、していいか?」
尚司と同じ気持ちでいられたことが嬉しくて、香子はこんなときなのに薄く笑った。
香子が小さく頷くと、尚司はベッドの上であぐらを組み、顔だけを突きだした。
「お前も顔だけこっちに向けて」
「うん」
香子も彼の前に座り、顔を近づける。
これはもしや自分から尚司に口づけるということではなかろうか。そう考えると途端に羞恥心が押し寄せてきて、それ以上動けなくなってしまう。
できれば尚司からキスしてほしい。ねだるようにチラチラと彼の顔を見てしまう。すると尚司が自分の髪をぐしゃぐしゃにかき乱した。
「あぁ~くそ、抱き締めたくなるから、やめろその顔!」
「そんなこと言われてもっ」
「達かせたら悪い。もう限界」
後頭部に手が差し込まれて、尚司の方へと引き寄せられる。不思議と頭に触れられても絶頂は起こらない。目を瞑ると唇が重なり、隙間をこじ開けるように舌が口腔に滑り込む。
「ん……っ、ふぁ」
「頭と、口の中は、平気、なんだな」
尚司はぴちゃぴちゃと音を立てて舌を絡ませながら、試すように香子の頬裏や口蓋を舐め始める。身体の芯が火照り、下腹部がきゅっと疼くものの、絶頂の衝撃はやってこず、ただただ気持ちいい。
「キス、気持ち、い」
「なぁ、香子」
「ん……?」
昨日から何度も達しているからだろうか。キスの合間に名前を呼ばれるだけで、腰からぞくぞくとした疼きが迫り上がり、恥部が蜜で濡れていく。
身動ぐだけで愛液が溢れるが、今度は絶頂に至らないもどかしさに襲われた。
「俺が好きだろ?」
「うん」
「うん、じゃなくて、ちゃんと好きだって言えよ。俺は、香子の気持ちを聞いてない」
互いの舌から銀糸が伝い、顔を離すとぷちりと途切れる。それが寂しくて、ねだるように身体を近づけながら香子はうっとりと目を細めた。
「尚司が、好き」
「うん、俺も」
尚司は嬉しそうに微笑みながら、もう一度唇を寄せてくる。そのとき、後頭部を支えていた彼の手が首筋に触れて、全身が強張った。
「……っ」
香子は背筋を仰け反らせながら達してしまい、縋るように彼の腕を掴みベッドに倒れ込む。咄嗟に助けようとしてくれたのだろう。だがそれが裏目に出て、尚司に押し倒されているかのような体勢になってしまった。
「あっ……待って、触っちゃ」
香子は全身を小刻みに震わせた。腰がびくびくと浮き上がり、つま先がピンと張る。腰をくねらせると、溢れた愛液がかき混ぜられたのかくちゅっと淫らな音を立てた。
「やぁっ、あっ、触ると、濡れちゃうからぁっ」
真上にいる彼がごくりと唾を飲み込んだのがわかる。そんな尚司の様子を気にする余裕もなく、香子はシーツに身を沈ませて荒い呼吸を整えた。
「お前……手は平気なのか?」
「え……」
彼の視線を追うようにして見ると、香子は今、尚司の腕を掴んでいる状態だ。そういえば先ほど後頭部に触れられるのも大丈夫だった。キスも平気。けれど首はだめ。
いったいどこがよくて、どこがだめなのだろう。
そして、それにはどういった違いがあるのか。
尚司も自分と同じ疑問を覚えたようで、香子の腕を解き、指と指を絡ませるように手が繋がれる。そして頭を捻った。
「手は平気……キスも。なぁ、ちょっと確かめてみてもいい?」
「な、なにを?」
「どこに触ったら達くか」
茶化している様子のない尚司の顔を見ると、自分のために言ってくれているのがわかり、断りたいのに断れない。
「で、でも……」
触れられるだけで達するのは苦しいのだ。香子が尻込みしているのがわかったのか、尚司は「お前がいやだと言ったら、絶対にやめる」と言い含めた。さらに真剣な目で見つめられると、よけいに返事に困る。
香子としても、なにかしらの規則があるなら知りたいと思う。けれど、今の香子はTシャツ一枚着ているだけの状態だ。しかもここは彼が普段寝るためのベッド。口には出せないが、何度も達したら自分がどういう状態になるのかは身に沁みている。
香子がなにを懸念しているのかに気づいた尚司は、ベッドから降りると厚手のバスタオルを何枚も手にして戻ってきた。
「そういうの恥ずかしい……っ!」
「だって、気にしてんのは、こういうことだろ?」
「そ、そうだけど」
香子が真っ赤になって首を振るが、尚司はバスタオルをテキパキと敷き始めて、さぁどうぞと言わんばかりに手を差しだす。
「香子……俺、恋人に触れないの、辛い」
切実な目で言われて、ぐっと言葉に詰まる。だから確かめたい、触れるところがあるなら触りたいと彼は言っているのだろう。香子だって気持ちは同じだ。
「……どうすればいいの」
「ここに横になって」
香子が観念したのがわかったのか、尚司はひとまずベッドから降りた。香子が横になりやすいようにベッドを開けて、自分は触れないように気をつけている。
「これでいい?」
言われた通りに横になると、彼は掛け布団を綺麗に折りたたみ片付けてしまった。すると、ショーツ一枚すら身につけていない足の間が露わになる。
「確かめるんだから布団は邪魔だろ。それに手も邪魔。ここも触りたいから、足、開いて見せろよ」
「やだやだやだやだ!」
「さっさと足を開け」
「榊の言い方がエロいからいや! 無理!」
「恋人になったんだから名字呼びはやめろ」
香子は自らの膝をぎゅっと抱き締めるように抱えて、いやいやと首を振った。
「ヒサくん! 尚司! 無理! やだって言ったらやめるんじゃなかったの!?」
「まだなにもしてない。やる前から諦めるな」
そう言いながらも、彼は決して強引には触れてこない。もちろん尚司に触れられるのがいやなわけではない。ただ自分だけが裸に近い格好で達かされるのが我慢ならないだけで。
「なら、尚司も脱いでよ!」
「あ?」
「私ばっかり見られるの、いやなの!」
「脱いで……ねぇ。お前さ、男にそういうこと言うの、迂闊過ぎない?」
尚司は呆れたように息を吐くと、Tシャツに手をかけた。彼が着ているのは、半袖Tシャツ一枚とスウェットだ。脱ぐのにそう時間はかからない。あっという間に全裸になると、当然、香子の目は彼の中心部分に釘付けになる。
「なんで勃ってるのよ~っ」
「好きな女とキスしてりゃ勃つだろ。ほっときゃそのうち収まったのに、お前のせいで余計に興奮した。ほら、さっさと足を開けって」
言いだしたのは自分だ。尚司が脱いだのだから仕方がない。香子は意を決してバスタオルの上で大の字になった。好きなようにしろとばかりに目をぎゅっと瞑り、覚悟を決める。
「情緒の欠片もねぇ」
噴きだすような声が聞こえてくる。そして、彼の指先が足の甲に触れた。ぴくりと反応するも、達するには至らなかった。
「ここは、平気みたいだな」
「……ん、でもっ、くすぐったい」
思わず腰を捩ると、続けて足首に触れられた。すると、背筋が大仰に跳ねて、足の間から蜜が噴きだす。
「んあぁっ!」
立てた膝が左右に揺れて、四肢が強張った。徐々に慣れつつある絶頂に大きく息を吐きだしながら、恨みがましい視線を彼に向けた。
「はっ、ちょっと、待って……今、無理ぃ」
「足首に触っただけで潮吹くのか。こういう状態なんだったら、会社で『触らないで』とも言いたくなるよな……悪かった」
「ねぇ、まだ……触るの?」
涙目で訴えるが、尚司は続ける気満々な様子で首を縦に振った。
「当たり前だろう。落ち着いたら次は膝な」
宥めるように手のひらをぎゅっと握られる。今、もっとすごいことをしているのに、手を繋げることがことさら嬉しくて、香子の口元が緩んだ。
「どうした?」
「あ、ごめ……なんでもない」
手を繋げただけでニヤニヤ笑っているのだと知られたくなくて咄嗟に誤魔化すが、彼は得意気に口の端を上げると、繋いだ手を持ち上げて、香子の手の甲に口づけた。
「手を繋げるなら、デートのときに困らないな」
どうしてか、とっくにバレていたらしい。
紅潮する顔を見られたくなくて目を背けると、ふいに尚司の指先が足の間に伸びて、濡れそぼった蜜壷を掠めた。
「……っ」
身体がびくりと震えるが、敏感な部分に触れられた衝撃に驚いただけだ。絶頂の余韻の中にいるからか、秘裂を撫でられるだけで新たな蜜がとろりと溢れてくる。
「へぇ、ここは平気なんだ? 足を開いておけよ」
尚司は足に触れないように注意深く蜜口に手を伸ばした。
「ひゃ、ぁっ」
すぐに達するわけではないが、触られて平気なわけでもない。思わず足を閉じようとして太腿が彼の腕にあたり、自業自得な結果に陥る。
ぴゅ、ぴゅっと愛液が飛び散り、彼の手をぐっしょりと濡らした。
「~~~~っ!」
「だから足を開いておけって言ったのに」
「なっ、ん……だって、そんなとこ、触るからっ」
はぁはぁと肩で息をしながら尚司を睨むが、彼はまったく意に介した様子もない。
尚司は一度身体を起こし、首を傾げた。
「あとは上半身だが……口の中や膣の粘膜は反応しないってことなのか? 足の甲や手のひらはどうして平気なんだ?」
彼はぶつぶつ言いながら、香子の着ているTシャツを捲り上げてきた。肌には触れないように慎重に捲っている。
「次、いくぞ」
「もう……もう、いいんじゃない?」
「なにを言ってる。いいわけないだろ。胸に触れるかどうかは重要じゃないか。俺はお前の胸に触りたい」
堂々と言われて呆気に取られているうちに、尚司の手が伸びてきた。緊張からか胸の中心はすでにピンと勃ち上がっており、指先でつんと突かれるだけで電気が走ったかのような衝撃を覚える。背中が波打ち、全身からぶわっと汗が噴きでてきた。
「ひぁぁっ!」
足の間からぴしゃりと蜜が弾け飛ぶ。愛液がたらりと伝い、敷いたバスタオルをぐっしょりと濡らした。
足を左右に大きく開いていたため、彼の強い視線に晒される中、達してしまう。尚司は熱の孕んだ目を香子に向けながら、荒々しい息を吐きだした。
「……っ、乳首は無理か。首と肩、足もだめだったな」
残念そうに言うところを見る限り、本当に触りたかったようだ。しかし、だいたい全身のどこで反応するかを確認し終えた。結果、ほとんど反応するということがわかっただけである。これでは尚司と身体を重ねるのは無理だろう。
「ごめんね……これじゃあ」
香子が言いたいことを理解したのだろう。尚司の手が頭の上に置かれる。そして反対側の手は香子の手に。
「セックスだけが愛を確かめ合う方法じゃない」
宥めるようにきゅっと指が絡ませられると、彼の優しさに泣きたくなる。
やはり尚司のことが好きだ。叶うと思っていなかったから、両想いだと知って、どれだけ幸せだったか。
けれど、好きだからこそ、彼に我慢を強いることへの申し訳なさに苛まれる。
「でも……」
「触る部分が限られていたって楽しみ方はいろいろあるだろう?」