冷徹御曹司だった旦那様が別れた途端、スパダリになって溺愛してきます!? ~永遠の証は滾るほどの愛撫で~

書籍情報

冷徹御曹司だった旦那様が別れた途端、スパダリになって溺愛してきます!? ~永遠の証は滾るほどの愛撫で~


著者:高羽柚衣
イラスト:黒田うらら
発売日:2023年 6月16日
定価:630円+税

過去の結婚にトラウマを持つ雪名は独り身の現状に満足していた。
ある日、新しい専務として元夫の伊織が職場に現れて……!?
だが、再会した伊織には結婚当時の冷徹な雰囲気は一切なく、困惑する雪名。
伊織の歓迎会で、当時は伝えられなかった互いの本心と弱音を伝え合った二人は一つの約束を交わすことに。
それは、伊織の自信喪失の原因になったかつての結婚生活をいい思い出に変えること――。
約束を実行するため、焦らすような優しいキスを何度も何度も雪名に与える伊織……。
「すごく可愛い、綺麗だ」
甘く滾る夜が明けた翌日、なぜか伊織は雪名の家に転がり込んできて……!?
一ヶ月間だけという条件で伊織との同居生活が始まり、冷徹だった元夫とは思えないくらいの尽くしっぷりに雪名も次第に心を絆されていくのだが――?

【人物紹介】

高梨雪名(たかなし ゆきな)
企業ウェブデザイナーとして働く29歳。
色々と耐え忍んでしまう性格。
伊織に対しては少々小悪魔な一面も見せるようで――?

御堂伊織(みどう いおり)
御堂家の御曹司36歳。雪名の元夫。
生真面目かつ思い込んだら一途で融通がきかない性格。
雪名に対しては手放しに優しい。

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*取り扱いサイトは、各書店に掲載され次第、更新されます。

 

【試し読み】

「ちょっと御堂さん、酔いすぎですよ」
「それは君の方だろう。まともに歩けていないじゃないか」
 実際、どちらがどちらを介抱しているのか分からないほど酔いが回った二人は、日付を超えてから雪名のマンションに転がり込んだ。
「休んでてください。今、水を持って来ますから」
「いや、僕が持ってくるよ」
「私の部屋ですよ? どこに何があるかも知らないくせに」
 そう、私の部屋だよね?
 ふらつく足でキッチンに向かいながら、一瞬冷静な思考が頭をよぎる。てか、私、何やってんの?
 二度と顔を見たくなかったはずの元夫と、よく分からないのりで、こんな時間まで飲んでしまった。
 堂山ヒルズを出て、二軒目のバーに行ったのはなんでだっけ?
 で、なんで今、私の部屋?
「ちょっと、狭いのが珍しいからって、じろじろ見ないで下さいよ」
「そうじゃないよ。熱帯魚がいるから驚いたんだ」
「貧乏人には魚すら飼えないとでも? 御堂さんの駄目なところリストにひとつ追加。デリカシーが、なーい」
 グラスを差し出した途端にふらついて、立ち上がった御堂の胸で抱き支えられる。
「とんでもないな」
「御堂さんこそ。私より酔ってたじゃないですか」
「そうでもないよ。ここで引き返すくらいの理性は残ってる」
「だからそういうところが、逆に駄目なんですよ」
 淡く香る白檀が心地よかった。これは、おしゃれに一切無関心だった二十六歳の御堂の誕生日に、雪名が初めてアルバイトして買ってあげた香水の香りだ。
 それ以来、馬鹿のひとつ覚えみたいに同じ香水ばかり使う御堂が、当時はすごく不器用に――そして少しだけ可愛く思えた。
「……思い出した」
「ん?」
 こんな時間まで馬鹿みたいに盛り上がった理由。御堂さんの駄目なところを、私、教えてあげたんだった。絶対に反論しないという約束で。
 サンドバック状態で、ひたすら雪名の口撃に耐える御堂を見ているのは楽しかった。
 彼は時折、物言いたげに口を開いたが、自分を納得させるように拳を握り、引きつった笑顔で反論をのみ込んでいた。
 酔いにまかせて、色々話した。一度口に出してしまえば、辛かったできごともそれなりに笑い話になる。彼の悩み事を聞く体で、実は自分の心に溜まっていたものを吐き出していたのかもしれない。
 でも、ひとつだけどうしても言えなかったことがあって――
「あ、そうだ。指輪のこと、すみませんでした」
 それでも心とは別のことを、雪名は自分への言い訳のように言っていた。
「結婚指輪。もらったものは全部返そうと思ったんですけど、あれだけはうっかり……っていうか、勢いで捨てちゃったんです。返さなきゃ離婚しないって言われた時は、どんだけケチな人なんだと思いましたけど」
「僕も意地になっていた。あの時は悪かったよ」
 離婚に際して、御堂がひとつだけ出した条件が、結婚指輪を返すことだった。
 おそらくだが、雪名が指輪をなくしたことを知った上での無理難題だったに違いない。
 そのくらい、当時の御堂は必死に雪名をつなぎ止めようとしてくれていたのだ。
 なのに雪名は、彼の連絡一切を、弁護士を盾に遮断した。一日も早く離婚したくて捨てた指輪を探したけど、結局、見つけることはできなかった。
 半年経って、御堂から離婚届が送られてきた。
 慰謝料の提示があったが、断った。結婚後、たった半年で逃げ出したのは雪名の方で、理由は「性格の不一致」としか言っていない。
 御堂に慰謝料を払う理由はなく、むしろなんのために慰謝料を払うつもりだったのかと、半年も経って無駄に傷ついた記憶がある。――
「バーでした約束、覚えてる?」
 抱き支えられたままで囁かれ、思考を遮られた雪名は、なんだったっけと思いながら頷いた。
 確か、部屋に行きたいと言われたはずだ。もちろん速攻で断った。でも、御堂さんの駄目なところを五十くらい上げたから、少しだけ気の毒になって、店を出る時にいいですよと言ってしまったのだ。
 でも、何を約束したんだっけ。
 その時にはかなり酔いが回っていたから思い出せない。確か、失敗続きの彼の婚活をなんとかしなきゃという話になって、――ああ、そうだ、思い出した。
 彼の自信喪失の原因になった結婚生活を、いい思い出に変えること。
 それに協力すると約束したのだ。
「っ、言っときますけど、復縁は絶対無理ですよ。私、二度と結婚する気はないんで」
「その話、百回くらい聞いたよ」
「……そんなに言いました?」
 記憶がないって恐ろしい。とはいえ、そういう話でないと分かってほっとする。――でも、じゃあ、具体的には何をしたらいいの……?
 その時、御堂の唇が首筋に触れた。驚いた雪名は、ビクン、と身体を震わせる。
「……っ」
 もう一度、今度はうなじに唇が触れる。
 ――あれ……?
 いい思い出に変えるってこういうこと? ああ、つまり女を抱くための、回りくどい口説き文句だったってこと?
 まぁ、いいか。私だってそうなってもいいと思ったから、彼を部屋にあげたのだ。
 酔ってるし、こうしているのが気持ちいいし、今のキスも――嫌じゃなかった。
 そんなことを考えながら、御堂の肩に頬を預けたままでいると、それを許しとみたのか、彼の唇が優しく首や顎に落とされる。
「……ン」
 薄い肌を、温かな唇でソフトに触れられるのは心地よかった。焦らすように何度もキスされ、その度にざわざわとした痛痒感が胸の辺りに広がっていく。
 これは女性の官能をかき立て、その気にさせるキスだ。
 御堂さん、いつの間にこんなずるいキスができる人になったんだろう。結婚していた頃は、こんなに余裕のあるキスをする人じゃなかったのに。――
 離婚後は、誰とも上手くいかなかったと言っていたけど、嘘確定。少なくとも、こっちの経験は相当に積んでいるようだ。
 力の抜けた身体を支えられ、誘われるままにソファに座らされる。御堂は雪名の首の下に腕を差し入れると、上半身を傾けるようにして、そっと唇を重ねてきた。
「ん……」
 何年かぶりに味わう夫の唇は、温かくて柔らかった。すべすべして、官能的で、触れ合った粘膜からは最後に飲んだ赤ワインのスパイシーな香りがした。
 まんべんなく口づけられた後は、下唇を舌先で舐められ、軽く噛まれた。上唇にも同じような真似をされ、閉じた唇の隙間に舌がそっとすべり込んでくる。
 温かくて弾力のある舌は、雪名の歯列を辿り、唇の裏側を官能的に舐めまわした。腰が疼くような痛痒感が高まってきて、雪名は初めて甘えるような息を吐いた。
「ぁ……ん」
 それが合図のように、濡れた舌がゆっくりと口の中に入ってくる。
 酔って体温が上がっているせいか、彼の舌は雪名の口の中で甘く溶けていくようだった。
 上顎を優しく舐められ、舌腹をくすぐられ、口内に潤みが溢れてくる。
 舌を唇で挟まれて吸われ、ぬるり、ぬるりと舌先同士を踊らせる。
 淫らで執拗なキスは、雪名の身体から力が抜けるまで続いた。なおも顎に指を添えて口を開かせた御堂は、さらに深い場所に舌を侵入させようとする。
「ん……、ふ」
 長過ぎる口内愛撫に、雪名の意識は半ばとろけかけていた。
 彼の腕に身を任せたまま、くちゅっ、くちゅっと、互いの舌が絡み合う音と、酩酊していく気持ち良さに酔いしれる。そして、芳醇なワインを味わうように彼の舌を味わった。
 ――キスって、こんなに気持ちよかったっけ。……
 もうやり方も忘れてしまっていた。御堂さんって、こんなに上手なキスをする人だったっけ。
「雪名、可愛いよ」
「ぁ……」
 不意に低い声で囁かれ、胸の奥がズキリと疼いた。
「すごく可愛い、綺麗だ」
 魔法にかかったように身体が熱くなり、下腹部の辺りがきゅっとせつなく収縮する。
 雪名の舌を自分の舌で絡め取りながら、御堂はニットに包まれた胸に手を滑らせてきた。大きな手で膨らみを包み込まれ、形を確かめるように押し揉まれる。
 一瞬、危険を覚えて身じろいだものの、舌を甘く吸われる心地よさに、雪名は身体を弛緩させる。温かな手で巧みにこねられる胸は、じわりと熱を帯び始め、先端にあるものが甘ったるく疼き出す。
 気がつけばニットの下でブラカップがずれ上がり、薄いニットを、二つの蕾が心持ち膨らませている。
 御堂はその蕾を指腹でスリスリと擦り、二本の指で摘まみ上げると、少しだけ指腹に力を込めた。
「……ぁ、は」
 目の縁を薄赤く染めて雪名は喘ぎ、折り曲げた指を噛んだ。
 どうしよう。こんな感覚、もうとっくに忘れていたと思っていたのに、すごくいやらしい気持ちになっている。
 ニットのざらついた感触が、敏感になった乳首にこすれ、それが、チリチリとした甘い電流のようだった。御堂の指がその尖りを転がすようにしてなぶり、触れるか触れないかの力加減で撫で、時に力を込めて押しつぶす。
 雪名は重くなった瞼を落とし、指を噛んだまま、甘ったるい息をこぼして身もだえた。元夫の指愛撫で硬く勃ち上がった乳首は、白のニットを押し上げて、いやらしい薄桃色が透けて見えるほどになっている。
「酔うと、いつもこうなるの?」
 耳元で、少し掠れた声がした。
 何を言われているのか分からないままに顔を上げると、腿を撫でていた御堂の手がするりと上がり、秘所をぴっちりと覆うショーツの底にたどりついた。
 反射的に腿を閉じたが、それは元夫の男らしく筋張った手を、柔肉で押し包むだけになる。
 御堂はその狭間で指を折り曲げ、繊細なシルクの盛り上がりを優しく撫でた。淡い、えもいわれぬ快感のさざ波に、雪名は弾かれたように尻肉に力を込める。
 撫で上げられ、撫で下ろされる度に、ピクン、ピクンと身体が震え、ショーツに包まれた花びらが潤みに満ちていくのが分かる。
 御堂が指に力を込めると、シルクから滲み出た蜜が、腿の付け根をぬるつかせた。
「雪名のエッチなところ、もうぬるぬるになってるよ」
「や……やだ」
「下着が濡れてるの、自分でも分かるだろ?」
 興奮で掠れた男の声が、何故だか余計に雪名を淫らな気持ちにさせる。
 御堂さんも間違いなく酔っている。――差し出した互いの舌を、ミルクを舐める猫みたいに触れ合わせながら、雪名は夢うつつにそう思った。
 結婚していた頃は、そんなセリフを言えるような人じゃなかった。真面目で、堅物で、酔ったところなど一度も見たことがなかった。
 そういえば私も……見せたことなかったっけ。
 唇が離れ、彼の膝に背中向きに抱き上げられた。情事の時にそんな体勢を取らされたのは初めてで、酔っていなかったら間違いなく拒否していたに違いなかった。
 背中から胸に手が回され、同時にもう片方の手が前側からショーツの中に入ってくる。
 御堂は、膨らみきった乳首をいやらしく弄りたてながら、ショーツに滑り込ませた指で、淡い下生えを愛おしむようにかきわけた。
 恥ずかしさで腰を軽く浮かせて身じろいだ途端、それが秘所にゆっくりと沈み込む。
「んぅ、……っ、ン」
 痺れるような心地よさに、雪名はたまらずおとがいを上げる。
 彼の指が触れている場所は、たっぷりとした蜜で濡れていた。触られただけで下半身が甘く収縮し、奥まったところから潤みがとめどなく溢れてくる。
 濡れそぼった花びらの重なりを、硬くて太い指が泳ぐように優しく上下する。ニット越しに乳首を摘ままれて、コリコリとひねられる。
「はぁ、ぁ……」
 声はキスで奪われ、同時に、彼の指が頑なに閉じていた蜜穴をくじいた。第一関節くらいまで指が沈み、浅瀬を探るようにヌプヌプと動かされる。とろりとしたものが塗れ、内腿を濡らしていく。
「ぁっ、……や、だぁ」
「雪名の可愛い穴に、俺の指が入ってるよ」
 御堂は興奮したように囁き、耳を甘噛みしながら、ゆったりと指を埋め込んだ。一度奥まで埋めてから焦らすように引き抜き、また浅いところをかき混ぜる。再び奥に押し入れて、ヌチュッ、ヌチュッといやらしく抜き差しする。
「とろとろだ。熱くて、すごく気持ちいい」
「ん……、ぁ……あン」
 ――あ……、すごく、いい……。
 半ば閉じた目を潤ませながら、雪名は唇を薄く開いた。
 濡れた卑猥な音が響き、長く忘れていた快感の波がみるみる下腹部を満たしていく。時々、思い出したように我に返って自分を支配する熱に抗おうとしたが、途中から、抗いたいのか欲しいのか分からなくなった。
 額の生え際に汗が浮き、甘ったるい快感が腰のあたりに立ち込める。彼と唇を合わせた時から無意識に待っていた悦びの時が近いことを、身体が訴え始めている。
 瞼が開けていられないくらい重くなり、ひくっひくっと腰が震える。
 御堂の指が女の割れ目の上部に触れて、肉鞘に包まれた真珠の粒をリズミカルに転がし始めた。
「ンっ、くう」
 痛痒感にも似た快感が一気にとろけ出て、雪名は細い腰を跳ね上げる。
 その身体を背中から抱いて固定したまま、御堂は肉芽をコリコリと弄り続ける。同時に乳首を擦られて、頭の中が真っ白になった。
 痛烈な快感の中、ビクビクッと腰が震え、内腿にせつない力がこもる。
「あ……ぁ、伊織さん、あっ、だめっ、あはぁ、イく、イっちゃう」
 頭の中で弾けた光が瞼の裏に焼き付いた。同時に、雪名はぐったりとくずおれている。
 殆ど意識がないままに、ソファに仰向けに抱き倒され、唇に優しいキスが落ちてきた。
「今、俺のことを伊織って呼んだね」
 呼んだっけ? 頭の中が真っ白だったから、覚えていない。
 御堂さんこそ、いつの間にか「俺」になってるし、嘘も色々ばれちゃってるし、ただのナンパ男だってことも確定したし……。
 ちゅっ、ちゅっと、音を立てて唇をついばまれる。このまま、ここで抱かれるのかなと、どこかうつろな気持ちで思った時、キスが止み、代わりに顔を見下ろされる気配がした。
「……ベッドに行く?」
 多分、今からすることは間違っている。ぼんやりと彼の首に両腕を回しながら、雪名はそう思っていた。
 いくらお酒が入っていたとはいえ、これから上司になる相手と――絶対に厄介なことになるに決まっている。
 多分、水島の時以上に。
 ――上司に誤解されたら後々面倒なことになるって分かってるのに、本当に私って、学習能力ゼロなんだな。
 それでも、一度火のついた情動は止められそうもなかった。

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