愛を知らない若妻は政略結婚の夫と極甘快楽に溺れ堕ちる

書籍情報

愛を知らない若妻は政略結婚の夫と極甘快楽に溺れ堕ちる

著者:天ヶ森雀
イラスト:夜咲こん
発売日:2025年 5月23日
定価:630円+税

 

井澤未理は、ある日突然、義理の両親から許嫁の存在を知らされ、名家である後藤家の嗣章と対面する。
後藤グループの傘下企業で役員を務めるほどに優秀な嗣章の無愛想な姿に怯える未理。
彼女は周囲の意向に逆らえず結婚することになるが……。
これまで特殊な環境で生きてきた未理は嗣章との交流の中で自身が無知であることを恥じるように。
それでも、健気に家庭教師の助けを得ながら勉強に励み、嗣章とも少しずつ距離を縮めていく。
そんな平穏な生活が三年ほど過ぎた頃、嗣章が後藤の本家から子どもを求められていることを知った未理は――!?
「ちゃんと感じている声が聴きたい。未理が感じてるかを知りたいんだ」
彼の力になりたい一心で「子作り」を望んだ未理を嗣章は受け入れるのだが……!!



【人物紹介】

後藤未理(ごとう みり)
旧姓は井澤。
内気かつ極度の人見知りで自己肯定感も低い。
ある日、許嫁として現れた後藤嗣章との縁談が進められるのだが――?

後藤嗣章(ごとう つぐあき)
名家である後藤家の一員。未理の九歳年上の夫。
後藤グループの傘下企業で役員を務めている。
合理的な思考の持ち主である。

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【試し読み】
 

 未理を自分のベッドに座らせ、嗣章も隣に座って彼女の髪に触れる。結婚したころは背中を覆うほど長かった未理の黒髪は、琴子の勧めもあって今は肩甲骨に届く程度の長さになっている。嗣章の手の中で、未理の髪の毛はさらさらと綺麗な音を立てた。そのまま頬に手を当てて彼女を見つめる。
「キスするから目を閉じて」
 嗣章の指示に、未理は頬を染めながら素直に目を閉じた。嗣章は一瞬怯む。彼女は今まで決して触れてはいけない禁忌だった。琴子の助けを借りながら少しずつ自己肯定感を上げ、未理自身の本質を引き出しながら接する日々の中で、彼女の素直さや無邪気さ、従順さはどうしようもなく嗣章の庇護欲をそそるものだった。だからこそ、嗣章は自分を律し、彼女に男として触れないよう努力し続けた。
 そうでなくとも夫婦であることで敷居がないに等しいのだ。迂闊に触れてしまえば未理を壊しかねないほど欲望が暴れ出しそうな気がした。グルーミングという言葉が脳裏を掠める。もし嗣章が未理に惹かれ、彼女を意のままにしたとしたら、それは恋愛関係ではなく一種のグルーミングになるのではないだろうか。未理は少なくとも嗣章を嫌ってはいない。むしろ新しい庇護者として全幅の信頼を寄せるようになっていた。ならば嗣章が彼女をいいようにコントロールすることは容易いだろう。
 その恐怖が、嗣章が未理を聖域として遠ざける最大の要因になっていた。
 せめて彼女がもう少し精神的に成熟し、男女の恋愛感情を理解するようになるまで。
 けれど周囲の状況がそれを許さない。二人の結婚はあくまで後藤本家の正統な血筋を残すためのものだからだ。
 そして未理自身、それを理解できるようになってしまった。
 未理の頬にそっとキスする。彼女の体が一瞬ピクリと跳ねるのが分かる。
「……嫌じゃない?」
 耳元で囁くと、未理は小さく頷いた。
 それを確認し、嗣章は彼女の唇にそっと口付けた。柔らかくしっとりとした感触に、嗣章の中の欲望が鎌首をもたげるのが分かる。しばらく触れるだけのキスを繰り返すと、今度は「少しだけ口を開けて」と静かに命じた。やはり未理は素直に唇を開く。できた隙間から嗣章は舌を差し入れた。再び未理の体がびくりと跳ねる。そんな彼女を宥めるように小さな頭を両手で包み込み、小さな舌を捕まえて触れ合わせた。歯を磨いたばかりなのか、ミントの爽やかな味がする。互いの顔を九十度に交差させ、そのまま舌を絡め合った。
「んん……っ」
 微かなうめき声と暴れる舌の感触が更に嗣章の欲望を煽る。ようやく唇を離す頃には、未理の息は上がっていた。
「苦しかった?」と嗣章が問うと「息が、少し」と答える。
「もう一度しても?」と訊くと、未理は頬を上気させながら首を縦に振る。嗣章は彼女の柔らかな耳を愛撫しながら、今度は焦らすように軽いキスをする。表面を触れ合わせ、舌で彼女の桜桃色の唇をなぞると、未理は自ら舌を差し出してきた。気持ち良かったのだろう。そう断じて嗣章は彼女の小さな舌を吸った。ぴちゃぴちゃと互いの唾液が絡み合う、いやらしい水音が寝室に響く。
 嗣章はキスをしながら未理の体をベッドに押し倒した。
「触るよ」
 そう言って未理の胸に手を置いた。カーディガン越しにもわかる柔らかな膨らみに、嗣章は逸る気持ちを必死に抑える。
「嫌じゃない?」
 未理は体を固くしたが、やはり顔に血を上らせながら頷いた。嗣章は今度は優しいキスをする。未理は抗わない。大人しくされるがままになっている。
 実際、一緒に暮らし始めてから二年間、未理が嗣章に歯向かったことは一度もない。もちろん意に反するような無理強いをした覚えもないが、何を言っても当たり前のように嗣章の言うなりだった。優しくすると戸惑う様子を見せるが、甘えたり我儘を言うようなことも一切なかった。
 あのピクニックに行った日、嗣章が見せた失態に未理の心がほどけてから、敢えて失敗してみせることもあった。そんな演技に気付いているのかいないのか、未理の嗣章に対する信頼度はほぼ変わっていない。
 その信頼を壊すかもしれない。
 そんな恐怖が掠めたが、無視して続ける。服の上からゆっくり胸を撫でていると、強張っていた未理の体が少しずつ和らいでいく。嗣章はあらわになった未理の首筋に唇を這わせながら、彼女のカーディガンとパジャマの前ボタンを外した。そしてパジャマのズボンから下着の裾を引き出し、下から自分の手を潜り込ませる。しっとりと吸い付くような肌に興奮を抑えながら、未理の胸を直接包み込んだ。
「ぁ……」
 あえかな声がする。
「触られて嫌な感じがしたら遠慮なく言うんだ。例え夫婦でも同意なしの行為は許されない」
 嗣章の言葉に未理はしばらく黙り込んだが、やがて虫が鳴くような小さな声で「嫌じゃないです」と囁いた。
「本当に?」
 重ねて問うと、未理はやはり暫し黙り込んで考えた末、「嗣章さんの手、温かくて気持ちいいです」と答えて首筋を真っ赤に染めた。
 恥ずかしいのか、顔を覆っている両腕をのけさせて濡れた瞳を覗き込むと、確かに無理をしている様子はない。
「わかった。いい子だ」
 そう囁いて頬にキスすると、彼女の肌は更に火照っていた。「いい子」は未理を喜ばせる一番のフレーズだ。そう気付いてから歪さが生じるような気がしてなるべく使わないようにしていたが、この際仕方がない。それで未理の気持が上がるならめいいっぱい利用することにする。
「未理、いい子だ。大きく呼吸して、体の力を抜くんだ」
「はい」
 素直に答え、深呼吸しているのが可愛い。仰向けになって上向いた胸が、大きく上下している。嗣章は呼吸で開けている唇を、自分のそれで再び塞いだ。少し慣れてきたのか、未理の唇や舌も嗣章の動きに応えている。
 キスを繰り返しながら、ゆっくり未理の胸を揉みしだいた。マシュマロのような弾力の胸が嗣章の指を沈み込ませ、ついついキスに熱がこもる。
「ぷは、くるし……」
 未理の呟きに、嗣章はハッとして顔を離し、動きを止めた。
「悪い。つい――」
 少し困った顔になってしまったのか、未理はおかしそうに笑みを浮かべる。
「大丈夫です。ちょっと息が上手くできなかっただけで……」
「……俺も深呼吸が必要そうだな」
 嗣章の言葉に未理はキョトンとする。
「そうなんですか?」
「少し緊張している。未理が嫌がらないか、痛い思いをさせてしまわないか」
 その言葉を聞いて、未理は思い切りふにゃっとした笑顔になった。
「キス、嫌じゃないです。初めはびっくりしたけどだんだん気持ち良くなってきた気がするし……あの、体を触られるのも……気持ちいいです」
 次第に恥ずかしくなったらしく、未理の声は尻すぼみに小さくなる。けれど必死に嗣章に応えようとしているのが分かって安堵の息が漏れた。
「もっと続けたい?」
「はい」
 少し掠れた声で未理は答える。嗣章は会心の笑みを浮かべて「そうしよう」と囁いた。

    ◇◇◇

 嗣章に触れられ、初めこそ緊張していたものの、未理の未知への恐怖はやがて薄れていった。キスは気持ちいい。唇を触れ合わせるだけかと思っていたらそれ以上に吸われ、舌を舐められたので驚いたが、やがて脳の奥が甘く痺れたようになり何も考えられなくなる。こんなに気持ちいいならもっと早くしてもらうんだったと思い、そう考えてしまった自分に赤面した。
 服を脱がされた時も緊張したが、嗣章の触り方は壊れ物を扱うかのように慎重で優しく、絶対的な安心感を未理に抱かせる。キスをしながら胸を揉まれた時はあまりの気持ち良さに震えそうになってしまったくらいだ。
 しかも足の間がもぞもぞしている。トイレに行きたいような、それとは少し違うような。
 時折未理を覗き込む嗣章の瞳に、どこか不安が混ざる気がして、ああ、彼も緊張しているんだなと思うと少し安心した。不安なのは未理だけではないのだ。
 そして口が裂けても言えないが、少し不安そうな嗣章はちょっとかわいい。思わず頭を抱き締めて髪の毛を撫でたくなる。
 けれど嗣章の頭が下にずれて、未理の胸に唇が触れてくると、そんなことを考える余裕はなくなった。
 ちゅ。
 彼の唇が未理の胸のてっぺんに触れた。それだけで体の中を稲妻のような衝撃が走り、未理の体は震えてしまう。
「ぁ」
 思わず漏れた声に、嗣章は未理の顔を見上げたが、彼の目には炎のような熱があって、未理はそれ以上何も言えなくなった。
 再び先端に口付けられる。今度は声を出すのを我慢できた。それを是と取ったのか、今度は大きく唇の中に含まれジュっと吸われる。その途端、初めての衝撃が未理の体を襲い、腰が軽く浮いてしまう。
「あ、あ……っ」
 止まらなくなったのか、更にしゃぶられ、舌先を巻き付けられた。もう一方の胸も激しく揉みしだかれている。
「あぁん……っ!」
 自分の声じゃないような、鼻にかかったような声が出た。それも恥ずかしい。恥ずかしすぎて両手で口を覆うと、嗣章は未理の胸から唇を離して「声は我慢しなくていい」と掠れた声で囁いた。
「でも……」
「ちゃんと感じている声が聴きたい。未理が感じてるかを知りたいんだ」
 感じてる? これがそうなんだろうか。確かに嗣章の行為は未理の体をおかしくさせている。けれどこの反応が正しいのか未理には分からない。
「未理」
 低い声で名前を呼ばれて、それだけで下腹の辺りがズクンと疼いた。
「嫌だとかやめてほしいと思ったら我慢せずにそう言っていい。でも――嫌じゃないなら……」
 嗣章が切なげに揺れる。初めて見る彼の余裕のない表情に、未理の鼓動は益々早くなる。
「いや、じゃないです。でもはずかしい……」
 そう答えるのが精一杯だった。しかし未理の答えを聞いて、嗣章の目がこれ以上なく優しくなる。
「未理、可愛い」
 その言葉で一気に脳が蕩けてしまった。可愛いなんて言われたことがない。いや、琴子はよく言ってくれるが、嗣章の口から聞いたのは初めてな気がする。
 嗣章は未理が思っていた以上に優しい夫だったが、いつもどこか線を引かれている気がしていた。必要以上踏み込まず踏み込ませないような。その線の奥を、今嗣章が見せてくれているのだと思うと、嬉しくて泣きそうになる。
「いや、じゃないから、続けてください……」
 辛うじてそう答えた未理の、頭を撫でて頬に軽く口付けると、嗣章はまた胸を愛撫し始めた。今度は反対の胸を口で愛撫し、もう一方の胸は指先で先端を摘まんだり押しつぶされたりする。そうするともうどうやっても声は我慢できず、未理は嗣章が望むまま啼き続けた。
「あ、ぁんっ、ふぁ……っ」
 鼻にかかった声が自分のものじゃないみたいだ。意識は作り立てのカスタードのようにとろとろに蕩けてしまっている。恥ずかしいと思う余裕さえなくなってしまっていた。
「ぁ、ダメ、そこ……、あんっ!」
 執拗に胸を弄られて一瞬、意識が真っ白になってしまった。息だけが荒く、胸が絶え間なく上下してしまう。ふと見ると、真っ赤に染まった先端が嗣章の唾液でてらてらと光っていた。
 ――こどもを作るってこんなことをするんだ。
 ぼんやりとそう考える。もっと儀式的なものだと思っていた。もしくはシステマティックなものだと。性器を結合させるということは知識として習っていたが、こんなに身も心もおかしくなってしまうとは思ってもいなかった。
 ――いや、知っていた。あの夏――。
「未理?」
 ぼうっとしていることに気付いた嗣章が未理の名を呼ぶ。
 未理は無意識に彼に手を伸ばし、頬や頭を包み込む。そして自分の方へ軽く引っ張った。未理の願いを正確に読み取ったらしい嗣章がキスしてくれる。
 甘い、甘いキス。唇を合わせ、互いの舌を擦り合い、舐め合う。恥ずかしさも緊張も解け、未理は本能だけで嗣章を求め始めた。
「ん……んん、ん……」
 子供を作る行為がこんなに気持ちいいなんて思ってもみなかった。嗣章の手はいとおし気に未理の顔じゅうを撫でると、今度は首筋や体を撫で始める。それも気持ちいい。温かくて体中にふわふわした感触が満ち溢れるようだった。
 そんな未理の変化に気付いたのか、嗣章はもう言葉を発することもせず、未理の体を拓き始めた。細い脚の間に自らの体を置き、太腿に手をかけて大きく開かせる。胸に軽いキスを落としながら、彼の唇は平らな腹と臍を通り、足の付け根へと降りて行った。
 ――え?
 まさかと思う間もなく、彼の舌が柔毛の下に隠れた肉裂の間に差し込まれる。
「あぁああん……っ!」
 思わず太腿に力が入り、彼の頭を強く挟みそうになったが、彼の大きな手で阻止された。びちゃびちゃといやらしい音を立てながら、尖った舌が柔らかな襞の間を行き来する。それだけで未理はおかしくなり、喘ぎ声が止まらなくなった。
「はぁ、や、あ、ダメ、それ……っ!」

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