辣腕上司はトラウマ持ちの純真部下を過保護に甘やかして離さない
著者:紺乃藍
イラスト:さばるどろ
発売日:2023年 8月11日
定価:620円+税
密かに憧れている上司、亮のもとで働く佑菜には雷に対する強いトラウマがあった。
ある日会議中に居眠りをしてしまったことをきっかけに、亮から睡眠不足の理由を尋ねられる。
佑菜が事情を説明すると、何故か亮の家に泊まることになって――!?
その夜も雷に怯える佑菜だったが、淫靡で優しい亮からの愛撫にいつの間にか恐怖心は消え去り、ゆっくりと眠ることができた。
頭はすっきりしているが、昨夜のことを思い出すと動揺が収まらない佑菜。そんなとき、亮の家に忘れ物をしたことに気がついてしまい――?
「今夜もちゃんと、眠らせてやる」
亮と過ごす一夜に再び甘やかされるも、佑菜はこれ以上迷惑をかけたくないと感じていて……!?
【人物紹介】
成田佑菜(なりた ゆうな)
菓子メーカー会社の商品企画部で働く24歳。
仕事に真面目で気遣い上手。
雷に対して強いトラウマを持っている。
日比野亮(ひびの りょう)
商品企画部の課長を務める32歳。
佑菜の上司で、面倒見がよく部下にも慕われている。
睡眠不足に陥っている佑菜の事情を知った亮は――?
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【試し読み】
第一企画課に在籍する佑菜以外の女性職員は既婚者か恋人がいる人たちばかりなので、誰も亮の恋人の座を狙ってはいない。だが他部署の女性社員の中に亮の恋人になりたいと望む人が多いことや、亮がバレンタインデーにもらうチョコレートの数が尋常じゃないことは佑菜も知っている。
いつか彼は、その中から運命の相手を選ぶのだろうか。それとも社外の人と結婚することになった、とあっさり報告してくるのだろうか。
そんなことを考えているうちに、うとうとと眠くなってきた。元々寝不足気味だったことに加え、亮の匂いや完全に密着しているわけではないほどよい距離感、わずかに感じる体温や吐息のリズムが心地よい。
「そう……です、よ。課長なら……いつでも……」
「……成田?」
気がつけば佑菜は眠りの世界の入り口をふわふわと彷徨っていた。その夢うつつに身を委ねるように、うつらうつらと目を閉じる。
その直後――ドン、と大きな音に続き、バリバリバリッと不快な音が部屋中に轟いた。
「きゃああっ……!」
せっかく夢の世界へ向かっていたのに、突如として聞こえた地鳴りのような爆音に驚き、一気に覚醒してしまう。
慌てて布団の中に潜り込んで身を丸めると、カタカタと震え出す身体を自分の腕で抱く。するとそれを見ていた亮が、布団ごと佑菜の身体をぎゅっと包み込んでくれた。
「成田、平気か? びっくりしただろ?」
「へ、へいき……です」
佑菜の身体を抱いた亮が、上からぽんぽんと優しく撫でてくれる。そうやって自分の存在がすぐ傍にいること、ここが暗くて閉鎖的な空間じゃないこと、今の佑菜が一人じゃないことを教えてくれる。自分の存在に縋っていいと示してくれる。
「よしよし、怖かったな」
少し落ち着いた佑菜が布団から顔を出すと、亮が身体を抱きしめてくれた。そのまま左の二の腕に佑菜の頭を乗せて、右手で優しく頬を撫でてくれる。一人じゃない、怖くない、安心していい、と優しく伝えてくれる指先にほっと息を吐くと、亮の温度に身を委ねる。
「ごめん、なさい……情けなくて」
「何言ってるんだ。苦手なものを怖いと感じるのは普通の反応だろ、そんな風に思わなくていい」
穏やかな手に頭や頬を撫でられていると、ほっと安心して心が落ち着きを取り戻していく。けれど一度大きな音を聞いて完全に目が覚めてしまった佑菜は、きっとまたしばらく眠ることができない。恐怖の存在を意識して目が冴えてしまうと、再び眠りの機会を掴むまでひどく時間がかかってしまう状態になるのは、いつものことだった。
「まだ多少は降ってるが、だいぶ遠ざかったみたいだな」
気持ちを落ち着けようと深呼吸を繰り返しているうちに、かなりの時間が経過していたらしい。先ほどの爆音を最後に少しずつ雨も弱まってきているようだ。外の様子と天気予報アプリの情報から悪天候の緩和を予想した亮が、ふむ、と小さく鼻を鳴らす。
そんな亮の様子を見てふと思う。佑菜がこの時期になると上手く眠れず睡眠不足になってしまうのはいつものこと。しかしだからといって、万人が同じ状態になるわけではない。
「……課長、寝てください」
佑菜は眠れないことに慣れているが、もちろん亮は違う。
先ほど亮がスマートフォンを確認した際にちらりと見えたが、日付はすでに変わっている。これ以上佑菜に付き合っていては、今度は彼のほうが寝不足になってしまうだろう。
「私は、大丈夫ですから」
「大丈夫じゃないだろ」
迷惑をかけたくなくてそう言い切ったが、亮は佑菜の強がりを見抜いたらしい。
叱るような口調に佑菜もつい黙り込んでしまうものの、それから何分、何十分と黙り込んでも状況は変わらない。目が冴えた佑菜は、やはりしばらく眠れそうにない。身体は休息を欲しているのに、心と頭がそれを妨げる。
せめて亮にはちゃんと眠ってほしいと思うが、彼を納得させられる上手い言い訳も見つからない。
「少し別のことを考えたほうがいいな」
「……え?」
八方塞がりになった佑菜が布団の中でじっと固まっていると、彼がふとなにかを呟いた。上手く聞き取れなかった佑菜は首を傾げたが、亮は佑菜の頭を左腕に乗せたまま、その肘を支えにしてベッドの上に半身を起こした。
「か、課長……?」
「疲れたら、寝れそうか?」
短い問いかけの意味がわからずぱちぱちと瞬きしてしまう。その表情を見て、ふ、と笑顔を零した亮は、
「何日もまともに寝れないよりはマシだろ」
と宣言すると、空いた右手で突然佑菜の左胸を包み込んだ。
もちろん亮から借りたダークグレーのシャツ越しで、直接触れられたわけではない。だが大きな手に胸の膨らみを揉むように撫でられると、驚きのあまり直前まで感じていた恐怖心も引っ込む。
「課長……あ、あの……!」
急な展開に思考が追いつかない。もし佑菜がその手から逃れたいと思うのなら、身体を捩ったり亮の手と身体の間に腕をねじ込ませたりすれば回避することもできるだろう。だがその発想すら思いつかないほど、頭の中を大量の疑問符で埋め尽くされる。
ベッドランプの電球色に照らされた亮が、にこりと笑顔を見せる。その仕草は優しい上司の見慣れた笑顔のはずなのに、いつもと違うラフな格好だからか、それとも現実感のないシチュエーションだからか、視線が合うといつも以上にドキドキして考えがまとまらなくなる。
「ん……っ」
カチコチに硬直していると、その様子を見た亮が親指だけを動かして胸の突起を撫で始めた。
お風呂を借りたときにブラは外しているので、上半身に身に着けているのは亮に借りたTシャツが一枚だけ。布越しに感じる指の動きに思わず吐息が零れると、佑菜の反応を見た亮の左腕もピクリと動いた。しかし肩を抱く腕の位置は大きく変わらず、乳首を撫でる指の動きだけが徐々に大胆になっていく。
「ん……ぁ……っふ」
胸の突起の周りをくるくると撫でられ、たまにピンと弾かれ、時折くぅっと押される。そうしているうちに亮の指先に尖った先端が引っかかるようになってきたので、だんだんと乳首が膨らんできていると自分でも認識する。それを誤魔化そうとぎゅっと目を閉じてふるふる首を振ると、亮がくすくすと笑い出した。
「成田は着痩せするタイプか。大きいだろうとは思ってたが、予想以上だ」
「なっ……せ、せくはら、です……っ」
「あはは。そうだよな、悪い悪い」
佑菜が羞恥に耐えながら文句を言うと、亮が笑いながら謝罪の言葉を述べてきた。しかし本心から悪気を感じているようには思えない。だがごく軽い口調が佑菜の気を逸らすための冗談なのかもしれないと思うと、怒っていいのかどうかわからなくなる。
もちろんこれが苦手な相手だったら、間違いなくハラスメント事案で訴えるところだ。しかし相手は嫌いな人どころが、ずっと憧れていた上司。八つも年齢が離れていて、普通ならとても相手にされないだろうと思ってきた人だ。
だから恥ずかしい場所を触られるのが耐えられないほど、嫌で嫌で仕方がないというわけではない。むしろ普段は仕事上のやりとりしかない関係なので、こうして触れ合う機会に恵まれたことを密かに嬉しいと思っている。
「ひぁ、あっ……ぁ!」
「どうだ? 気持ちいいか?」
とはいえこの状況を上手く理解できない佑菜は何も言えず、亮に与えられる刺激をただ受け入れることしかできない。
「あっ……ん!」
爪の先に胸の頂をカリッと引っかかれ、身体がびくっと飛び跳ねる。そうかと思えば今度は布越しにくりゅくりゅと捏ね回され、敏感な乳首がびりびりと痺れ始める。佑菜の反応をより明確に引き出すような愛撫の連続に、次第に全身がじんわりと汗ばんでくる。
「ん、ん……んぅ、……ん、ぁ……っん」
「擦られるのが好きなんだな」
亮の問いかけと止まらない手の動きに、そんなことはないと首を横に振る。しかし何度も左胸を弄られ、柔肌の形を変えるほどに激しく乳房を揉まれると、だんだん思考が麻痺して感覚が鈍ってくる。さらに首の後ろにあった腕を引き抜かれて両方の手で大胆に両胸を揉みしだかれると、まともな判断力も失われていく。
下着を選ぶのに少し苦労するほど大きな胸が、亮の大きな手の動きと感覚を正確に感じとる。柔らかさを確かめるように強く激しく胸を捏ねる動きに合わせて、佑菜の身体もゆったりと追従し始める。
「あっ……かちょ、ぉ……だめ……ん、んっ」
「成田? 腰、動いてるぞ?」
「ちが……ぁ、……あっ」
胸を揉まれて乳首を弄られる刺激に火照った身体が動くと、それを楽しそうに指摘された。慌てて動きを止める佑菜だが、亮の嬉しそうな視線と表情に、言い訳の台詞も発せなくなる。
「素直で可愛いな。じゃあこっちも、触ってやる」
「え、まっ……!」
こっち、と口にした亮が胸から手を離したので、慌てて逃げようとした。だが彼の細長い指が臍と下腹部の上を滑り、恥丘の隙間に到達するほうが少しだけ早い。
「ひぅ……っ、ぅ……ん」
シャツの裾を捲った亮の指が、ショーツの上から陰核を撫でる。急遽コンビニエンスストアで購入した割に色やデザインは可愛らしかったが、それを亮の指が撫でることになるなんて想定していない。焦った佑菜は亮の右手首を掴んだが、ささやかな妨害などものともせず彼の指先は股の間をくにくにと押し上げる。
「やぁっ、ん……かちょ……ぅ……んっ」
亮の指先が布越しに窪みの上を撫でるたびに、甘えた声が溢れそうになる。それを必死で押さえようと喉に力を入れて現実から目を背ける。
ひたすら恥ずかしくてたまらない。だが佑菜を見下ろす亮の声はやけに楽しそうだ。
「成田、ここ濡れてるぞ?」
「え、う、嘘……」
亮の宣言に驚いてパッと顔をあげると、にやりと微笑んだ亮がショーツの上から花芽を強めに擦り始めた。
「あぁ、や、ぁ……んっ!」
突然与えられた鋭い刺激に驚き、身を捩らせて彼の指先から逃れようとする。だが空いた左手に腰を掴まれ、さらに佑菜の上に跨って退路を塞がれると、ただ淫らな刺激を受けることしか出来なくなる。
「だ、だめ……かちょ……っ」
恥ずかしいからと訴えても亮は手を止めてくれない。どうにかして佑菜に眠ってほしいのだろう。彼は佑菜が適度に疲れることに活路を見出しているらしく、一定の疲労を得るまで――快楽の極みを感じるまでは、この恥ずかしい愛撫を続けるつもりのようだ。
亮が簡単に引き下がってくれない気配をひしひしと感じる。だが拒否しようにも気持ち良さのせいでまともな言葉を発せない。
「かちょ……っゃ、あ……っん」
左手で自分の口を押さえつつ右手で顔を覆って、感じている様子を見られないようにすることで精一杯だ。力強い亮に与えられる刺激から逃れる方法など思いつかない。
「ああ……直接触れば、もっと気持ち良くなれそうだな」
「え、だ……だめ……!」
ただでさえ亮の愛撫に感じているのに、直接触られたりなんかしたらあっという間に達してしまう。そんな恥ずかしい姿は見られたくないと全力で首を横に振るのに、亮は一切お構いなしだ。
脚の付け根にするっと指先が忍び込んできて、ショーツのクロッチを横に捲られる。晒された場所に直接指先が触れると、布団の中からぴちゃ、と濡れた音が聞こえた気がして顔から火が出そうになった。
「すごいな。ここ、かなり濡れてる」
「……っ~~!」
猛烈な羞恥心に耐える佑菜に、わざわざ状況を説明してくる。思わずやめてくださいと叫びそうになったが、それよりも濡れた陰核をツンと押す亮の指先が素早い。
「ひぁ、ああっ……!」
直に与えられる激しすぎる刺激に、全身に力が入る。腰を前に突き出すように仰け反ってしまうのは、無意識の反応なので自分でも止められない。そのまま萌芽をゆるゆると扱かれると喉の奥から意味を成さない高い声ばかりが零れ出てくるが、もちろんそれも止められない。
「あっ……あ、ぁ……ん」
亮の指の腹が膨らんだ陰核の尖端を擦ると、内股がピクピクと小刻みに震える。その刺激を繰り返されるとお腹の奥がきゅんと甘く疼き始める。触られているのは身体の表面部分なのに、もっと奥のもっと深い場所が過剰に反応している気がする。
「ああっ……っゃあ、あん……あぁッ」
蜜芽を擦る速度が速まると、激しさと快楽のあまり我を忘れたように喘いでしまう。もし部屋の壁が薄かったら、隣室の住人に恥ずかしい声を聞かれてしまいそうなほどの甘え声だ。しかし外の悪天候がそれを帳消しにしてくれると考えているのか、唇の端を舐めて妖艶に微笑む亮は、愛撫の指を止めるどころかさらに速度をあげてくる。くちゅくちゅ、ぬちゅぬちゅ、と濡れた音が佑菜の聴覚を刺激する。
「やぁ、あん……かちょ、っ……だめ、だめ……!」
佑菜の懇願が届いたのか、ふと秘部から亮の手が離れた。
だから激しい愛撫が終わったのだと安心して力を抜きかけた佑菜だが、何気なく視線を上げると花芽から手を離した亮が濡れた自分の指をじっと見つめている。彼の指がてらてらと卑猥に光っているのは、佑菜の溢れた蜜液のせいだろう。恥ずかしさのあまり思わずそこから目を背ける。
佑菜はてっきり、亮はサイドボードの上に置かれたティッシュボックスからペーパーを引き抜いてそれで手を拭うのかと思っていた。だが亮は、あろうことか濡れた自分の指の腹を突然ぺろりと舐め始めた。
「!? な、なんで舐めるんですか……!」
「ん? 心配しなくていいぞ? 十分濡れてるから、あと少し濡らせば指なら入るはずだ」
「ち、ちが……! そうじゃなくて……っ」
佑菜の表情を確認して不敵に笑う亮だが、佑菜は濡れ具合の心配をしているわけではない。秘部や愛液に触れた手に亮が口をつけることそのものを止めてほしいのだ。
しかし佑菜の切望虚しく、亮は己の指に舌を這わせ根本から先まで丁寧に濡らしていく。電球色の光の中で見上げる色香を纏った姿に釘付けになる佑菜だが、亮はとことん容赦がない。指を舐めて十分に濡らすと、それを再び股の間に滑らせてくる。しかもいつの間に剥ぎ取られたのか、気がつけば佑菜のショーツも脱がされてなくなっている。
「ひぁ……ぁ、んっ……」
亮の言うように十分濡れている蜜壺に、彼の細長い指先がちゅぷっと埋められた。
特別経験豊富なわけでもない佑菜は、久しぶりの感覚につい身を強張らせる。しかし少しずつ慎重に進んでくる亮の指は男性らしくやや骨太で、内壁を擦り上げられるだけでさらに強く力んでしまう。
「成田は可愛いな」
「っ……え?」
亮がふと呟いた一言に、一瞬遅れて思考が停止する。
褒め上手な亮が部下の仕事を賞賛する言葉は何度か聞いたことがあるが、女性の外見や仕草を褒める言葉は一度も聞いたことがない。仕事としてではなく、亮が個人的に興味を示す相手ならば、その珍しい褒め言葉を聞くことができるのだろうか――そんなことを漠然と考えていた佑菜は、その台詞を今この瞬間自分に向けられるとは全く予想しておらず、つい動きが止まってしまう。
「ほら……ここ、撫でると可愛い声が出る」
「! あっ……まって……ぁ、ん」
驚いて固まっていると、顔を近づけてきた亮が耳元で同じ言葉を囁きながら、濡れた内壁を強めに擦りあげた。
亮の声の低さと甘美な響きの言いなりになるようで恥ずかしいはずなのに、激しく指を抜き差しされると鼻にかかったような甘い吐息ばかりが溢れてくる。自分ではもう止められない。声も、身体の反応も、気持ちいいと思う感情も。
「かちょ、お……もうだめ……!」
「イけそうか?」
「あ、ああ……っぁん……!」
亮の親指に膨らんだ陰核の頂点をくちゅくちゅと撫でられると、思考が霞んで何も考えられなくなっていく。さらに蜜壺の深い場所を中指で強めに擦られると意味のある言葉すらまともに発せなくなる。彼の言う『可愛い』の意味を考える余裕なんてまったく残されていない。