
離婚するはずが、過保護な国際弁護士の5年越し溺愛モードが覚醒しました
著者:涼川凛
イラスト:カトーナオ
発売日:2026年 2月27日
定価:720円+税
薬剤師として働く加奈が国際弁護士である鶴園修也と結婚したのは、五年前の大学三年のとき。
父が他界し、天涯孤独になった加奈に修也が書類上の結婚を提案してきたのだ。
加奈への援助と、修也の個人的な悩みの解決、お互いに利があるとして交わされた白い結婚だったが……。
アメリカと日本で離れて暮らしている間も、修也の誠実さに加奈は少しずつ惹かれていった。
だからこそ、加奈は修也を白い結婚で縛りたくないと離婚を申し出ることに……!
そして、彼女はもう一つ修也にとあるお願いをするのだが――?
「でも、解消するのは白い結婚であって、結婚ではないよ」
修也は離婚を受け入れず、五年越しの初夜では彼の溺愛モードが覚醒されてしまったようで――!?
【人物紹介】
鶴園加奈(つるぞの かな)
調剤薬局に勤める薬剤師で修也の妻。26歳。
大学三年のときに父を亡くし、修也の世話になるため書類上の結婚をした。
修也の性格や有能さに尊敬と好意を抱いている。
一方、これからのお互いのことを思い、離婚を申し出るのだが――!?
鶴園修也(つるぞの しゅうや)
国際弁護士の30歳。
気遣いや面倒見の良い性格をしており、優等生で一途な面も。
加奈に離婚されないために何やら決意を固めたようで……!!
●電子書籍 購入サイト
| Amazon | コミックシーモア | Renta! |
| honto | 楽天ブックス | 紀伊國屋書店 |
| DMM | ブックパス | Book Live |
| ReaderStore | ebook japan | BOOKWALKER |
*取り扱いサイトは、各書店に掲載され次第、更新されます。
【試し読み】
これ以上ないというほどに体の隅々まで丁寧に洗い、浴室から出ると修矢は外出から戻ってきていた。
スウェットの部屋着を着た加奈を見て微笑む。
「俺もシャワーを浴びてくる。ゼリーを買ってきたから食べて」
出かけたついでにコンビニに寄ったのだろう。テーブルの上には、少し大きめのレジ袋が置かれている。
袋を開けばフルーツがたっぷりと入ったゼリーがあった。彼が浴室から出てくるまでの間、そわそわして待つよりは気がまぎれるだろう。そんな気遣いを感じて、加奈はゼリーを手に取った。
「……」
浴室から、かすかにシャワーの音が聞こえてきて、加奈の手がとまる。
シャワーを浴びている彼の姿を想像してしまったのだ。
──やだ、どうしよ。ドキドキしてるの、私だけなのかな。
再会して告白して離婚要求からの白い結婚解消まで、彼はそれほど動揺することも悩むこともなく、あっさりと決断しているようにみえた。
普通ならば考える時間が欲しいと、改めて話をする日を決めると思う。だからこそ、加奈は今晩さっそくベッドをともにするとは考えてなかったのだ。
──即断即決、できる男ってこういうものなの……。
浴室に入るのも迷いなく、ごく自然だった。
もともとこのマンションは修矢が暮らしていて、書類上の結婚をしたあとアメリカに発った彼と入れ替わるようにして加奈が住み始めたのだ。彼にとってはもとの家に戻っただけの感覚だろうけれど。
これから加奈を抱くというのに緊張も戸惑いも感じられないのは、ある程度の経験があるからなのか。
それともそう見せかけているだけなのか。
浴室の方から物音がしてきて、加奈の心臓がドクンと跳ねる。
──彼が出てくる!
食べかけのゼリーなどとっくに喉を通らなくなり、スプーンを持ったまま固まった。
ドアが開く音がして、もうすぐこちらに来ると感じると、身の置き所を探しておろおろと視線をさまよわせた。
まもなくリビングのドアが開かれてボディソープの香りが漂ってくると、顔さえ上げられなくなった。
どんな格好をしてくるのか。彼が持ってきた手荷物はリビングの隅に置かれたままだ。加奈が入浴している間に支度を整えたのだろうけれど、視界の隅に映る鞄類はマンションに到着したときのままで、手つかずの状態に思えてならない。
足音が近づいてきて、視界に男性的な足首が入る。骨ばった足首にくるぶしが目立つ。明らかな性差に、ふろ上がりの無防備な修矢がそばにいることを実感してしまう。
「ゼリー、苦手だった?」
修矢の問いに加奈はうつむいたまま首を横に振る。
「……その、ドキドキして……」
顔が真っ赤になっていると自覚していて、二十六歳なのに初心すぎる自分が恥ずかしくてたまらない。
「……貸して」
修矢の手が加奈の手の甲をするりと撫で、そっとスプーンを奪う。
おどろいて視線を上げれば、彼の姿がまともに映ってしまった。
上半身は裸のままでフェイスタオルを首から下げていて、下半身はバスタオルを巻きつけているだけだ。
髪はまだ少し濡れていて、濡れた前髪が額にかかっている。その前髪の下にある目は少し伏せられていて、その色っぽさに目が釘付けになった。
「はい、あーんして」
「あ、あの?」
ゼリーをすくったスプーンが口元に運ばれてきている。戸惑う加奈をしり目に修矢はふっと笑った。
「ほら、口開けて?」
やさしくなだめるような声に、はい、と返事をしようとしたすきに、スプーンが口の中に入った。甘いゼリーの味が口中に広がるが、とても味わってなどいられない。
ほぼ裸の彼の色気で、心臓が壊れてしまいそうに脈打っている。
何度かゼリーを口に運ばれて、ゼリーカップとスプーンを置いた彼の手が加奈の顎をそっと支える。
秀麗な修矢の目が加奈の瞳を捉える。今から抱くよ? と無言のままに問われている気がして、唇が少し震えてしまう。その唇に、修矢が人差し指を這わせた。
「俺から目を反らさないで」
強い力ではないのに動きを封じられて、熱のこもった眼差しから逃れることができない。加奈を見つめるその目からは、今まで女性を避けてきていたとは思えないほどの男性的な欲望が感じられる。
彼も〝男〟なのだ。
覚悟をきめて目を閉じ、近づいてくる彼の唇を抗うことなく受け入れた。
柔らかく重ねられた瞬間、彼の体温が伝わってきた。彼と初めて触れ合えたことに喜びが湧いてくる。
夢のようだけれど、夢じゃない。
──勇気を出してよかった……。
絶対にかなわないと思っていたのに。
すげなく拒否されると思っていたのに。
重ねるだけの口づけだけれど、初めての幸せに浸る。うっとりする加奈の唇を修矢はぺろっと舐めた。
「加奈の唇、ゼリーの味がして甘いね」
味わうかのように自分の唇を舐めている。ゆっくりと動く舌が艶めかしくて、加奈はすっと視線を逸らした。
「修矢さんが食べさせてくれたから」
五年間ずっとスマホのみでやり取りしていた彼が、こんなに近くにいて触れてくれている。修矢に恋心を抱いてからは、キスされることを願って何度も想像してきたけれど、実物の色気は加奈の想像力をはるかに超えていた。
「中もゼリー味かな」
修矢の指が加奈の唇を割って入ってくる。
「確かめさせて」
耳に吐息がかかるほどの距離でささやかれると、声音の甘さが鼓膜を悦ばせる。徐々に侵入してくる彼の指が舌に触れたら、腰がぞわりと震えた。
彼の指が舌のサイドを優しくこする。くすぐったいような初めての感覚に、目をつむってされるがままに身を任せた。
──舌を弄られるのがこんなに気持ちよく感じるなんて……。
二本の指が舌をはさんでしごき、唾液がグチュグチュと水音を立てる。彼に見つめられながら舌を蹂躙されて、羞恥と気持ちよさの狭間に迷い込む。
舌を愛撫していた指を引き出してぺろりと舐めた唇が「甘い」と動き、加奈の背に手を回して抱き寄せる。
目を閉じていると柔らかくあたたかい感触が加奈の唇を覆い、下唇をちゅるっと吸い上げた。
「んっ」
わずかな痛みを感じ、驚いて声を漏らすと彼の舌が口中に入りこんだ。加奈の舌をチロチロとくすぐる。
指の感触とは違う、柔らかく湿った刺激。
舌裏から頬裏までやさしく愛撫しながら、彼の指が髪をすくい上げてこぼす。
サイドの髪をかき上げる指がくすぐったくて、首をすくめようとするけれど、ぐっと抱き寄せられて深く挿し込まれた舌の動きに阻まれる。
「……ふっ……ん……」
上あごのくぼみをくすぐられて、下半身にズクンッと甘い疼きが生まれる。子宮のあたりが熱を帯びて、女の情欲がほとばしり出ているのを感じた。
──これが、ほんものの修矢さんのキス……。
「ん……ふっ」
加奈の鼻から甘い息が漏れて、恥ずかしさも初めての戸惑いも消え失せてしまう。たくましい腕をきゅっとつかみ、つたないながらも夢中で修矢の舌を求めた。
静かな部屋の中では、ふたりが漏らす吐息と絡み合う舌が出す粘着質な音しか耳に届かない。今この時ばかりは、世界にふたりしか存在しないかのような感覚に陥り、ただ修矢の舌の甘さに溺れている。
背に回されている彼の手が撫で上げるように動いて、中ほどで止まった瞬間、小さな擦過音がした。スウェットの上から下着のホックが外されて、圧迫されていた胸がふわりと解放される。心もとなくなった感触にぴくっと体が揺れる。
不意にもたらされた変化に戸惑いを隠せなく、にわかに体を固くした加奈をなだめるように、修矢の手が背中を撫でた。
ちゅるっと舌を吸って離れた修矢の濡れた唇が「向こうに連れて行くよ」と動き、立ち上がりざまに加奈の膝裏に腕を差し入れる。
「ひゃっ」
自分の体が軽々と持ち上げられていて、とっさに彼の首元にしがみついた。修矢ののどぼとけとシャープなあごのラインが目の前に迫った。
こんなに近くで見るのは初めてで、途端に胸のドキドキが加速していく。
同時にちょっとした焦りも生まれる。
修矢にお姫様抱っこでベッドまで運ばれることは憧れだった。実際に何度も想像していたほどだけれど、現実になってしまうと……まずい。
──いくら修矢さんが力持ちでも、重いはずだよ!
加奈の身長と体重は二十代女子の平均相当なのだ。慌てて「自分で歩く」と言い出そうとすれば、「このまま黙って運ばれて」と、先制して口をつぐませられた。
彼の足は迷うことなく向かっていて、寝室に通じるリビングの戸の前で止まる。
「加奈、戸を開けて」
優しく命じられ、加奈はおずおずと戸を開ける。
暗かった寝室内にリビングからの明かりが届き、壁際に置かれたベッドが浮かび上がった。知らずにこくりと息をのむ。
これから、ほんとうに修矢に抱かれるのだ。
ほんの数時間前までキスさえ未経験だったのに、事態は急激に進行している。未だに夢を見ているのではないかと思ってしまう。
そんな気持ちは、ベッドマットが背に当たったことで打ち消された。
修矢が肩にかけていたフェイスタオルを取り払い、覆いかぶさってきたからだ。
彼の手がマットを沈ませて、ギシッと小さな音を立てた。腕の檻に閉じ込められた加奈の目には修矢しか映らない。
リビングから挿し込んでいる明かりに浮かぶ彼の上半身は無駄な贅肉がなく、弁護士という文系的な仕事に似合わぬ、がっしりとした体つきだ。
これから素肌を見せることへの照れと不安と期待でうずまく心をごまかしたくて、加奈は修矢に話しかける。
「……修矢さんは日ごろから運動しているの?」
聞きたいことが伝わるようにそっと腕に触れる。
修矢は微笑み、自分に触れている加奈の手に手のひらを重ねた。
「社内の施設にジムがあるんだ。時間があるときや気分転換によく利用してる」
トレーナーが指導してくれるおかげで、適度な運動していた学生時代よりも体が引き締まるし、健康になっているという。
修矢は「そんなことより」とつぶやき、かさねていた手を握って口元に近づけ、指先に口づけを落とした。
手を握ったまま、意味ありげにすっと口角を上げた修矢の顔が耳元に近づく。
「逃げるなら、今だよ?」
低めのささやき声が鼓膜を悦ばせて腰のあたりがぞくぞくっと震える。
そのまま修矢の吐息を耳に受けながら加奈はフルフルと首を振った。
「今夜、修矢さんのほんとうの妻にしてください」
「……了解。俺も男だから、もう止めないから」
両手で加奈の髪を撫でて見つめてくる彼の目には男の情欲がほとばしっている。彼も男なのだ、とはっきりとわかる熱っぽさ。
それが自分だけに向けられている、と思えば喜びが胸に湧いてきた。
──修矢さんが、私に欲情してくれている。
彼にすべてを見せて、加奈も修矢のすべてを見る。というより、彼の男の部分を見たい、と強く思った。
額にかかっている髪を分けられて、ちゅっと唇が落とされる。肌をついばむように落とされる唇が頬へと移っていき、耳に息が吹き込まれた。
「ゃっ」
ぴくっと体を揺らすと、はむっと耳たぶを甘噛みされた。彼の吐息が耳穴をくすぐり、舌が耳たぶを転がす感触が首筋を震わせる。ぞくぞくする感覚をこらえきれずに彼の肩をぎゅっとつかんでよけようとすれば、頭に添えられている手に力がこもった。
「ダメだよ。抵抗しないで」
「んんっ」
鼓膜に届く低音さえも媚薬のようで、下半身がじんじんと熱くなる。耳を愛撫されているだけなのに、女の熱と欲望がとめどなくせりあがってくる。
──どうしよう、初めてなのに……。
耳だけでこんなふうになるなんて、この先はどうなってしまうのか。修矢に触れられていると、髪さえも性感帯になっているかのように気持ちがいい。じんじんと疼くばかりの下半身は、この先どんなふうに……。
ちゅぱっと耳元で音がして、耳たぶを弄んでいた唇が離れる。
「目が潤んでる。そんなに感じた?」
修矢はとろんとしている加奈の表情を見てふっと微笑み、やさしく髪を撫でる。
加奈はこくんと頷いた。
「修矢さんだから……感じるの……」
恥じらいながら伝えると、修矢がくっと息をのんで固まったように見えた。少し首をかしげて名前を呼び掛けると小さく息を吐く。
「煽るのがうまいね」
目を柔らかく細め、ついばむようなキスをくれる。そのキスが少しずつずれて首筋に向かっていく。
耳のそばで何度もリップ音がして、首の付け根あたりの肌をちゅるっと吸い上げられるとチリリと小さな痛みがはしった。
「……あっ」
ぴくっと首をすくめると、痛みをなだめるように舌でくすぐられる。
「きみを抱く、と決めてから、ずっと気になってたんだ」
彼の美声が耳に届き、加奈は気持ちよさに震えながら「……なにを?」と声を絞り出した。
「……ここ」
修矢の手が、そっと胸のふくらみに触れた。スウェットの上からやわやわと胸を揉まれながら、舌は首筋をツーッと這っていく。
「予想以上に柔らかい」
すでに外されている下着を器用に避けている修矢の手は、布越しにふくらみの稜線をたどり「俺の手に余る大きさだ」とささやく。
大きな手の中にあるふくらみは、やわらかさを堪能しているかのごとく円を描くようにゆっくりと動く。
胸を揉みしだいていた修矢の指が小さな先端を探り当て、指の腹ですりすりとこすった。不意にもたらされた甘美な刺激に加奈の体がぴくんと揺れる。
「んんんっ」
──どうしよ、すごく気持ちいい……もっと、もっと触ってほしい。
彼の腕をきゅっとつかみ、さらなる愛撫を求めて自然に背中が浮いてしまう。
彼の指の動きが速まると、とめどない快感に襲われて加奈の肩がぴくぴくと揺れる。下半身の熱が上がって情欲の雫がじゅわっと溢れ出した。
「あぁっ……あっ」
初めての快感に翻弄されて甘い声が漏れるばかりの加奈の唇に、そっとキスを落とした修矢がわずかに口角を上げる。
「加奈は感じやすいね……じかに触るよ?」
返答を待たずして彼の手がスウェットのすそからするりと侵入する。
加奈は彼の腕をつかんだまま、手の動きに意識を向けていた。
布越しだったのにあんなに感じてしまったのだ。じかに触れられたら、どんなに気持ちがいいのだろうか。
じわじわとわき腹を撫で上げられるとゾクゾクして、これからどんな快感が得られるのか、否応なく期待がたかまっていく。
潤んだ目でじっと彼を見つめていると、形の良い唇に、わずかな力が入ったように見えた。
もう少しで胸に到達すると思われた刹那、素早く裾に手をかけた修矢にスウェットを脱がされてしまい、留め具を外されて肌に乗っているだけの下着は、はぎ取られて床に落とされた。
ついでスウェットパンツも脱がされて、身に着けているのはショーツのみとなっていた。
修矢はわきの窓にかかっているカーテンをさっと開けた。半分ほど開いたカーテンの向こうから、雲に隠れていた月が顔を見せ始める。
瞬時に起こったできごとに対応できず身動きできない。月の明かりにさらけ出した加奈の素肌を修矢はじっくりと眺める。
白い肌にこんもりと盛り上がった豊かな双丘。たわわに良く育った実の頂点には、ひっそりと芽吹きを待つ花の蕾のような突起が薄く色づいている。
細いながらも女性らしい体の線。それをたどる彼の目には獲物を捕らえた肉食獣のような輝きがある。
今から彼に食べられるのだ、と改めて実感させる。
それは加奈が望んできたことで、すべてを見せる覚悟はできていたつもりだけれど、こんなふうに見つめられてしまえば羞恥に頬が染まる。
「ま、待って、恥ずかしい……」
腕を胸の前で交差させようとすれば、修矢の手に阻まれた。手首を掴まれて、頭上で縫い留められる。
「ごめん、隠さないでくれ。すごくきれいだ……」
手首を握っていた彼の手が離れて、こんもりふくらんだ双丘を包んだ。少し力を籠めるだけで、丸いマシュマロのような肌には、やわらかく指が食い込む。
ひとしきりやわやわと揉みしだいた彼の指が、色づいた蕾を際立たせるようにきゅぅっと絞り込んだ。


