
敏腕社長のお見合い妻になった元華族令嬢なので、契約外には愛されないはずでした
著者:まつやちかこ
イラスト:天路ゆうつづ
発売日:2025年 12月26日
定価:710円+税
元華族の由緒正しい有村家に生まれた美弥は、家族の中ではほとんどいないものとして扱われてきた。
そんな窒息しそうな日々の中、ある日、美弥にお見合いの話が持ち上がる。
父の会社への資金援助も含まれた縁談話を美弥は受け入れるほかなかった――。
見合い当日、現れた相手は二年前に美弥を助けてくれた男性だった!?
名嶋章弘とまさかの形で再会したものの、章弘は美弥に気づいていないように見えたのだが……。
そうして粛々と迎えた結婚式では、章弘の過去を知る謎の女性が乱入してきて――!?
なんとか無事に式を終えた二人は初夜を迎えることに。
「そう、素直に感じて。いい声出てる」
愛されないはずの契約結婚だが、章弘は優しくも淫らに美弥の身体に触れてきて……!
【人物紹介】
有村美弥(ありむら みや)
元華族である有村家の長女。27歳。
家族の中では存在感がないような扱いを受けている。
いざという時には、正義感や度胸を見せる一面も。
名嶋章弘(なじま あきひろ)
ITコンサルティング会社社長の32歳。
基本的には人当たりがよく温和な性格をしている。
美弥のお見合い相手であるが、実は二年前に美弥と出会っており……?
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【試し読み】
披露宴を終え、招待客への挨拶を済ませた後。
新居であるマンションの部屋に戻った頃には、すっかり夜が更けていた。
このマンションだけでなく、挙式と披露宴に関する費用の多くは、名嶋家から出ていると聞く。おそらくは半々であるべきはずの分担を、父や母が様々な口実で、体よく押し付けたのだろう。
3LDKのリビング、真新しいソファに腰を下ろしながら、美弥はいろいろな意味を込めて大きく息を吐いた。今日の疲れがどっと押し寄せてきたのだ。
化粧を落とす気にも着替える気にもなれず、ソファの座面に身を沈めていると、水を入れたグラスが差し出された。
視線を上げると、ジャケットを脱ぎ、ワイシャツとスラックス姿の章弘が、促すようにグラスを振って見せる。
はっとして美弥は、僅かな焦りとともに受け取った。
「……ありがとう、ございます」
章弘は軽く頷いたのみで、少しの間、部屋に沈黙が下りた。
挙式および披露宴において、両家の親族や会社関係者を含め、表向きは誰も問題を起こさなかった――「優里子」を除いては。
あの煌びやかな姿は、忘れようとしても忘れられない。彼女は美弥の胸の奥に、小さいけれど確実なしこりを残していった。
「……あの、伺ってもよろしいでしょうか」
「ん?」
章弘の反応が穏やかであることに背中を押された心地で、美弥は問いを発する。
「その、披露宴に来られた……あの人は、どういう方ですか」
尋ねた途端、章弘の顔から表情が消えた。微かな笑みも、ほんの少しの動揺さえも浮かべず、彼は自分が持つグラスの水を一息に飲んだ。
「君が気にする必要はない」
その言葉に、反射的に胸の奥が、チクリと痛む。
「そう、ですか」
努めて平静に応じながらも、心の中はざわめいている。
「気にする必要はない」相手なら、なぜ何も教えてくれないのか。
美弥の立場であれば気がかりを感じるのはわかりきっているだろうに、彼にとって「新妻」の気持ちは、そんなにも瑣末なことなのか。
――そう考えると、どうしても次の言葉が出てこなかった。
章弘は静かに窓に近寄り、遮光カーテンを引いた。
グラスをダイニングテーブルに置くと、美弥の隣に座ってくる。
「今日は疲れただろう」
平坦な口調だった。義務的に聞いているのか、あえてそうしているのか、判断がつかないような。
美弥は即座に、首を横に振った。
「い、いいえ」
揺れてしまった声音は、嘘っぽく聞こえただろうか。
本音では、疲れていた。けれど今日という日のこの夜に、正直に言ってはいけないと思った。
なんといっても、今夜は――
『しっかり励め』
脳裏に、結婚が決まった頃に言われた父の言葉が蘇る。
そのタイミングを狙ったかのように、章弘がこう切り出した。
「今夜は、俺たちの初めての夜だな」
思わず肩を震わせる。
彼の声は先程と同じく平坦で、けれどどこか、硬い感じがした。
「形だけでも、夫婦らしくしておきたいと思う」
――夫婦らしく……
あくまでも義務で言っている、そんなふうに、感情なく美弥の耳には響いた。
膝の上に置いた手を、ぎゅっと握りしめる。そうしていないと身体が震えだしそうだった。
「……はい」
声に怯えを乗せないよう、なんとか返事はしたが、顔は上げられなかった。
先に立ち上がった章弘に手を取られ、連れられた先は、予想にたがわず寝室。
ダブルベッドの端に座らされた美弥は、すぐ隣に腰を下ろした彼が髪に触れてくるのを、緊張とともに受け止める。
指先は思いがけず優しく、髪を撫でた後に耳を掠めた体温に、ぞくりと背筋が震えた。
「初めて?」
短く問われて、美弥は小さく頷く。
「そうか。なら、なるべく痛くしないようにする」
章弘のその言葉には、妙な現実感があった。
気遣いを見せるようでありながら、同時に「そうすべきだから」という理性が働いているような響き。
肩に手を添えられ、美弥は無言で目を閉じた。
これは、結婚式や披露宴の延長。
義務であり、ただの儀式――そういうふうに自分に言い聞かせた。
唇がそっと重なった。想像していたよりも柔らかく、少しかさついている。じわりと熱を乗せたその感触が、頬や耳元、首筋へと順に落とされていき、そのたび心臓が小さく跳ねる。
「緊張してる?」
美弥が息を詰めながら頷くと、章弘の手が背中をさすった。不思議なほど丁寧に。
「大丈夫。傷つけることはしないから」
大きな手のひらと言葉に、思いもしない温もりを感じて、涙が滲んでくる。
(……優しくしないでほしい、期待したくなってしまうから)
(これは愛のある行為じゃない。単なる義務、儀式にすぎないこと)
そう思っていたかった。そういうふうに扱われる方が、気が楽だった。
だが、長い指先がワンピースのボタンを一つずつ外し、はだけた布の間から肌を滑ってくる感触に、ぞくぞくする。
ブラジャーを外され、露わになった胸元に何度も口づけられ、身体が理性とは関係なく熱を帯びていく。
胸の膨らみに舌を這わせられ、敏感な先端を吸われた瞬間、弱い電流のような衝撃が身の内を走る。押し殺した声が喉の奥から漏れた。
「ん……っ」
鼻にかかったような声は、やけに甘く響いた。それがひどく恥ずかしい。
いつの間にか、美弥はベッドのマットレスに押し倒されていた。
先端を舌で舐られ、指で捏ねられるたび、美弥の身体は小さく震える。与えられる刺激を、確かに快感と捉えている自分が、たまらなく淫猥に思えた。
初めて感じる快楽への困惑と、制御のできない昂ぶりが混ざって、自分が何を感じているのか徐々にわからなくなっていく。
「……っ、ぅ、は……っ」
胸を吸われながら、章弘の手が脇腹を撫で、下へと滑っていくのを感じる。
閉じた脚の間にその手が伸び、差し込まれた指が、ショーツの一点をゆっくりとなぞった。
「濡れてる」
びくり、と羞恥と混乱で美弥は震えた。
知識としては知っている。母にさんざん、本でも話でも教え込まれた。しかしいざ自分の身体に起こってみると、それは身を焦がすように恥ずかしく、同時に、自分の奥深くから知らない感覚が沸き起こってくる現象だった。
布の隙間から入り込んだ指が、直接ソコに触れる。
それだけで、潤い具合がどれほどのものかわかってしまい、美弥はあらためて強い羞恥心を覚える。
胸を弄られただけでそんなふうになるなんて――自分の身体のいやらしさを知らされて、逃げ出したくなる。
けれど、僅かに身を起こすことさえ、章弘の大きな身体と重みに阻まれて叶わない。ただ、割れ目をなぞられるたびにぴくりと震え、吐息を漏らすことしかできなかった。
つぷり、と潤いの中に何かが入り込んでくる。襞をかき分け、秘めた入口に侵入するのは一本の指。
「……!」
初めて異物を受け入れたナカから伝わる、違和感は想像以上だった。まだ本番ではない、と頭ではわかっているが、これ以上の違和感があるのかと思うと本能的に怯えを感じる。
それを察したのか、章弘が美弥の髪を撫でてきた。壊れ物に触れるような手つきで。
家族にはこぞって「出来損ないの印」と言われてきた、茶色の髪。両親にすらこんなふうに触れられたことはなかった。
胸の詰まるような思いが湧いてきて、歯を食いしばることしかできない。
「痛い?」
「……いえ」
痛くはなかった。ただ、その存在をやたらと鋭敏に感じ取っていた。
そのせいでか、自分自身の脈動までが、普段感じたことのない強さで響いてくる。
「んんっ」
指が二本に増やされ、静寂の中に水音がこだまする。
膣壁を擦り上げられる感触が、違和感とは別の何かを呼び覚まそうとしているのを、美弥は直感で察した。
「締まってきてる。ちゃんと感じてるな」
どこか安心したような、章弘の呟きが落ちる。
直後、指が二本同時に、ナカで行き来を始めた。
くちゅ、ぬちゅ、という湿った音が響き、それが自分から出ている愛液の音だと嫌でも知らしめられて、恥ずかしさが極まる。だが同時に、何かを探るような控えめな動きを、もどかしくも感じた。
自分の身体に何が起きているのだろう。学ばされたことを思い出そうとした時、章弘の指がナカの一点を押し上げた。
「ぁあっ」
感じたことのない刺激に、考えるより先に声が飛び出す。
「ここかな」
鍵型に曲げられた指が、同じ場所を押し上げるたび、たまらなく甘い感覚が美弥を襲う。それは波のように何度となく押し寄せ、引いたかと思えばまた押し寄せて、理性を攫っていこうとする。
「あ、あっ、あぁ」
指がナカを、撹拌するような動きに変わった。満遍なく膣壁を擦り上げながら、一番敏感な場所を繰り返し刺激してくる。声が漏れ出るのを抑えられず、羞恥と快感で美弥は悶えた。
「気持ちいい?」
「っ、あ、あっ」
章弘に問われるが、身体を駆け巡る感覚が強すぎて、声が言葉にならない。
かろうじて首をコクコクと縦に動かすと、意図は伝わったようで、彼は満足げに頷いた。
「なら、もっと気持ち良くしてあげよう」
色気を滲ませて微笑みながら、そんなことを言われた。
何が起きるのか、と思う間もなく、章弘の指が秘裂の襞に隠れた箇所を摘んだ。
「ひゃあっ!」
体内に稲妻が走ったかのような、強い衝撃が美弥を襲った。これまでの人生で経験のない、だが間違いなく快感と捉えられる感覚に、思わず背中が反る。
「ココ、赤くなって尖ってる。すごく感じてるんだな」
──可愛い。
美弥は耳を疑う。今、章弘は微笑みながら「可愛い」と言った。そう聞こえた。
信じられなかった。結婚式のように飾り立てられた時ならまだしも、こんな、何も纏わないどころか淫らなことをされて悶えている姿が、可愛いだなんて。
戸惑いは、さらなる愛撫にかき消されていく。
ナカにある指が抽挿を再開し、同時に、章弘の親指が花芽と言われる先程の箇所をくりくりと捏ねる。
いちどきに与えられる異なる種類の快楽に、美弥は身体を跳ねさせ激しく喘いだ。
「あ、あ、や、あぁっ、あぁ」
「そう、素直に感じて。いい声出てる」
嬉しそうに言う間も、章弘の手淫は止まらない。ぐちゅぐちゅという淫靡な水音はさらに大きくなり、寝室をいやらしく満たしていく。
(何……何かが来そう、わからない、怖い)
前触れなく感じた未知の恐怖に、美弥は嫌々をするように激しく首を振る。
様子で察する所があったのか、章弘は空いている方の手で、美弥の頬を撫でた。
「大丈夫、そのまま流されていいから」
美弥のナカで、指の動きはいよいよ激しくなり、そして。
「――あ、あ……あぁ……」
全身を一瞬で「何か」が駆け抜け、衝撃の強さに美弥は背を反らし、四肢を突っ張った。
一拍の後、身体から力が抜け、全身が弛緩する。
……何だったのだろうか、今のは。
身体中が快楽で痺れ、頭の中が真っ白になる。そんな感覚は知らないし、教わらなかった。
「最初でイケたのか。よかった」
(イケた? いけたって、何が……よかったって?)
美弥が疑問符で頭を一杯にしているうちに、章弘は着ている物を全て脱ぎ捨てた。初めて見る男性の裸体と、その中心で主張する存在。驚きすぎると目を逸らせなくなるのか、美弥ははしたないほどにまじまじと、目の前にあるモノを見つめてしまった。
章弘は表情を変えずに、勃ち上がったソレに何かを装着する。あれがいわゆる、避妊具という物なのだろう。ぼんやりと考えていると、章弘が覆い被さってきた。
先程まで指を入れられていたソコに、別のモノが宛てがわれる。美弥は思わず身を固くした。
「怖くないか?」
「……少し」
正直に答えると、章弘はまた、美弥の頬をそっと撫でた。
「難しいだろうが、なるべく力は抜いてほしい」
そう言うと、宛がったモノの先を埋め込み、ゆっくりとナカへ挿入してくる。
「あ……っ、ぅ……う、あ」
初めて知る、身体の奥を押し広げられる痛みと、指とは比べ物にならない圧迫感。美弥は耐えきれずに呻きを漏らした。
この状況下で身体の力を抜くのは、とてつもなく難しい。それでもなんとかそうしようと努めていると、唇が重ねられた。角度を少しずつ変えながら繰り返し、時には吸うように、舐めるように触れられる。
それでいくらか気が逸れたのか、ほんの少し、身体に入っていた力が抜けたような気がした。直後、章弘の腰が一気に進められ、奥深い場所に先が当たる感覚が伝わってきた。
はぁっ、と息を吐く章弘は、どこか苦しげに見える。こういう時――もしくは処女が相手だと、男性も辛かったり痛かったりするのだろうか。そういう話は聞かされなかったけれど。
「きつ……」
呟くように漏らした彼の声は、よく聞こえなかった。浅く息をつきながら、苦しげだった表情が徐々に和らげていく。
「痛い、よな。すまない」
謝られるとは思わなくて、美弥は思わず首を振った。
本当はまだ、じんじんとした痛みが腰回りに響いている。けれどそれは、章弘のせいではない……未経験の女には付きものだと、教えられたことだ。
美弥の反応をどう受け取ったのか、章弘は口元に小さく笑みを浮かべた。
深く息を一度吐き、また美弥の髪を、そして頬を優しい手つきで撫でる。
「動いてもいいか?」
男性が動くことがこの行為では肝心らしい。ならば断るという選択肢は最初から存在しない。不安はあったが、美弥は頷いた。
ゆっくりするから、と言って章弘は、美弥のナカに入れた自身を、徐々に引き抜いた。入口近くまで戻した後、再び腰を前に出し、美弥の奥を突く。
「あ」
まだ残る痛みの向こうに、別の感覚を薄っすらと捉えた。反射的に飛び出た声は、今までに聞いたことのない、奇妙な響きを伴っていた。自分の声ではないみたいに聞こえた。
章弘が、ナカで膣壁を擦り上げながら最奥を突くたびに、初めて知る感覚がまた生まれていく。
「ん、んっ……あっ」
とちゅん、と子宮の入口を突かれた刹那、何かの感覚を先程よりもはっきりと感じた。頭の中でその答えが出るより先に、章弘の切っ先がリズミカルにナカを突き上げ続ける。そのたびに美弥の口から、声と息が零れた。
「あ、あっ、あ、あぁ」
身体の奥に感じる、火が燻るような疼き。不快ではないが快感には届かない、不明瞭な感覚。
それが何なのか知りたい、という焦燥感に唐突に駆られた。けれどどうしたら良いのかわからない。もどかしさのあまり、美弥は腰を捩った。その途端、章弘の手に押さえつけられる。
「あまり動かさないで――もう充分締まってるから」
締まってる、という彼の言葉の意味は全くピンと来なかったが、自分から動かさない方がいいらしいのは察した。腰を押さえられたまま、章弘の律動は続く。
「あ、ん、んんっ……はぁっ……」
少しずつ、不明瞭な感覚が「気持ち良さ」に変わっていっているように感じた。だがまだ、何かが足りない。駄目だと言われても腰を動かさずにはいられなかった。
「っ、……動かすなと言ったのに」
「あぁっ!」

